22話 ショック
二人でギルドの裏手に回ると一人の魔法使いが座っている。
杖を持ち、ローブを被ったいかにも魔法使い!という人物だった。
「お、お客さんだね。浄化一人分でいいかい?」
「いえ、二人分お願いします。おいくらですか?」
「奴隷にもするのかい?二人分で銀貨1枚だよ」
結構するな。魔法のレベル上げが大変だから貴重な人材なのかな。
「毎度あり。じゃあそこから動かないでね。・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・・ 浄化」
俺とアイラの体を光が包む。鑑定してみると光魔法だった。
彼の光魔法はLv2だから頑張れば俺もすぐに使えるようになるかもしれない。
というか浄化というイメージからすれば、これは幽霊に対しての攻撃魔法として使えるのではなかろうか?
アイラも同じことを考えたのかこちらを向いて頷いている。
「あの、今の魔法って幽霊に対して効きますか?」
「当然だろ?そのための魔法なんだから。においを消す効果のほうがおまけだよ?」
やっぱりそうだ。これさえ覚えれば楽勝だな。MPは俺もアイラも普通の魔法使いに比べて格段に豊富だし。
お兄さんに礼をいい、再度ギルドへ入る。
一番の用件は済んだので、2階にあがり10階からの攻略情報関連を見せてもらう。
やはり倒して進む場合は光魔法が主体となるとのことだ。
11階からの魔物はそんなに強くない代わりにめんどくさい特性が多い。
におい、見た目、数、恐怖を感じないなどは俺達も体験したところだ。その他にも敵を切った武器が腐敗したり、怪我をさせられてしまった所が腐り落ちたりするなどいやらしいものが多いようだ。
武器で切らなくてよかったな。新しい武器が欲しいとはいえ愛着はある。
腐らせるには惜しい。
「なかなか油断ならないエリアだったんだな。10階までの延長かと甘くて見てたわ」
「ご主人様・・・ここ、見てください」
アイラがショックを受けた顔をしている。なんだろう?
「ん?なになに・・・というわけで11階層以降の魔物たちはライトボール(光属性の明かりでもかまわない)を掲げておくと一切近よっ・・・て・・・・・・こない?」
は?
「この攻略法が解明されてから20階のボスまでは移動とにおいが大変なだけである・・・?」
「さらにショックなことをお伝えするんですが、隣の道具屋さんで光魔法が使えない人用のランタンが売ってるそうです」
我ながらあほっぽい顔をしている自信がある。今日一日の苦労が・・・完全に無駄だった。
しかもゾンビエリアなので稼ぎもない。経験値だけは増えたが。
この攻略法が解明されるまでほとんどのパーティは10階までしか進めなかったそうだ。
ごく一部の強いパーティか光魔法を使えるパーティのみが行ける階層だったらしい。
今では誰でも通過でき、うまみも特にないためスルー推奨だそうだ。
だからあんなにたくさんゾンビがいたのか。誰も倒さないから珍しいお客さんを皆でお出迎えだったのね。いらないよそんな歓迎!
また10階のボスは開幕必ずまっすぐ突っ込んでくるので、回避さえしてしまえば楽勝とのこと。ネタバレしたボスの悲哀だな。
とりあえず今日はもういろいろ疲れたので帰ろう。
しょんぼりした気分で2階から降りてきていると、冒険者ギルドが騒がしかった。
6人の人たちを中心に盛り上がっているようだ。
私も混ざりたいなーという雰囲気のお姉さん(カウンターの人)に聞いてみよう。
「あの、どうかしたんですか?」
「え?ああ、失礼しました。なんとSランク冒険者パーティ”双龍”の人たちがダンジョン攻略に来てくれたんですよ!」
「Sランク?それはすごい」
Sランクって響きいいよね。特別感がある。リセマラとかでもSランクって言われると無駄に欲しくなっちゃうよね!それ目当てにリセマラを繰り返し、それをやってるうちにゲームをやる気が失せるという本末転倒な・・・あ、なんでもないです。
人ごみの隙間から見たSランクパーティの面々は男4女2の全部で6人みたいだ。
戦士、盗賊、剣士、魔法使い、僧侶、弓使いって感じかな。
戦士は39歳の男で大きな盾を持っており、レベルは39だ。
盗賊は23歳の同じく男。最年少。レベルは38。
剣士は26歳、男のイケメンで大剣を持っている。レベルは41。
魔法使いは26歳、女でThe魔女って感じの見た目。レベルは40。
僧侶は結構な美人さんだ。24歳でレベルは37。
弓使いは最年長40歳でレベルは40。
全員の称号にドラゴンスレイヤーという文字がある。双龍というパーティ名からしてドラゴンを二匹倒したのだろう。珍しく全員が高レベルなのもうなずける。
ステータスは高いもので1400ぐらいだから俺達よりは大分低い。Sランクとはなんだったのだろうか。僧侶のレベルが低いのはあれかな、ヒーラーは不遇なのかな?
そして全員の装備に竜族特攻の文字がある。
『竜族特攻
竜の因子を混ぜ込んで作られた装備に付与される。
竜族の防御を貫く』
このステータスで正面からドラゴンに勝てるとは思えないので、この装備達を使って倒したのだろう。
大金を持っていたか、竜人族を殺したかだ。
そしてこいつらの称号にはドラゴンスレイヤー以外にもうひとつ、”殺人者”というものがある。”殺人者”ってのはこうだ。
『殺人者
防衛以外の目的で人族を殺した物に与えられる称号』
人族をの中には当然竜人族も含まれる。
つまり、そういうことなんだろう。Sランクという響きにわくわくしていた気持ちがスーッと冷める。
これがこの世界の強者の本当の姿か。
わかってる。俺のいた世界でも似たようなことを人類はしてきたと。だがアイラの同族を殺し、その死体を辱めて得た装備で名声を得る。こんなのが人間の頂点、いや、この世界の人間族か。
正義を気取るつもりはないし、正義なんてのは立場の違いだって分かってる。魔物からすれば俺のしてることだって同じことだ。だから俺のこの怒りはわがままだ。
でも、だからこそこういうのは嫌いだ。こいつらと同じ空間にいること自体が不快だ。
「アイラ、行くぞ」
俺達はダンジョン攻略への期待に盛り上がるギルドを後にした。
宿に戻った俺達は晩御飯を食べ部屋に戻る。
「ねえ、どうかした?ギルドを出るあたりから様子がおかしいけど・・・」
「なんでもない。だがこの町には長く居たくなくなった。さっさとダンジョンを攻略して早く出よう」
「それはいいけど・・・。さっきの冒険者達何か気に入らなかったの?」
「ふー・・・ちょっとな。浄化の練習するから実験台になってくれ」
アイラには言いたくないな。Sランクパーティということを考えれば分かっていることかもしれないけどわざわざ告げたいことじゃない。
「いいわ。それがないと攻略が進まないものね」
俺とアイラは明日の戦略を練りながら魔法の練習を続けるのだった。




