16話 竜の因子
「それで、人間が非道を行っているのはわかったけど、なんで人間だけが奴隷を使役しているんだ?それと竜の因子って?」
「えっと、まず奴隷の話から行くわね。この首輪『闇の魔法』が使われているらしいんだけど、なぜか魔族と人間族しか扱えないの」
「そうなのか?」
「ええ、すごく弱くなら他の種族の中にも使える人はいるらしいんだけど、この首輪を使えるレベルでってのはさっきの二種族だけね」
「へー適正の問題かな?君の闇魔法適正も棒線が引かれてたし」
「魔法の適正が見えるの?」
「ああ、さっき説明した鑑定でその人の魔法適正も見れるよ」
「それは・・・すごいわね。さすが神様がくれた力ね」
そうなんです。さすが神様パネェって感じなんです。
ただ望まないと情報が出てこないあたり配慮が足りないって言うか、
あの神様らしいって言うか・・・(わがまま)
「奴隷の首輪を人間しか使えない理由はそんなところね。竜の因子は・・・簡単に言うと竜族は肉体的な物だけでも元々強いんだけど、それ以上に魔法を無効化するシールドが最強たる所以だったの」
「無効化って全部?」
「そうよ。人族の中で魔法の技能と言えば一番はエルフだと言われているんだけど、そのエルフの魔法でも徹ったって話は聞いたことがないわ」
「ほー最強の守りなんだね」
「そうだったの」
「だった?」
「そう。私たちの体から取り出された竜の因子を混ぜ込んだ装備を使うと、その守りが機能しなくなるの」
「なんで?」
「詳しい理由は私は知らないわ。ただそれが分かってから人間族の竜人族に対する攻撃は執拗になったと聞いたわ」
ふーむ。竜族特攻武器って所か・・・。
「竜族は元々この世界で一番の強さを誇ってたの。それこそ災害と言っても良かったわ。襲われたら諦めるしかない」
まあ空飛んで魔法が効かなきゃそうなるよなぁ。
「だけど人間族に狩られる様になってから竜族も減ったらしいわ。最近ではほとんど姿を現さないって」
「人間が竜族を狩るのは何で何だ?襲ってきた奴をってのなら分かるけど」
「なんでも竜族を素材にした装備はとても強いらしいわ。他の人族や、魔物からの攻撃をはじき、竜族へは攻撃を通せる。最強ね」
なるほどね。気持ちが理解できてしまうゲーム脳が恨めしいな。
「あ、竜を倒した奴って急激に強くなったりするか?」
「何で分かるの?竜を倒した人はドラゴンスレイヤーと呼ばれて、今までとは一線を画す強さになるって奴隷仲間が言ってたわ」
うーむ。大幅レベルアップだろうな。そいつらと戦って勝てるかはわからんな。
「とりあえず君の変身を俺みたいに見破れる奴がいないとも限らないし、君も強くなる必要があるな。
さっきはできれば戦闘をと言ったけど、君のためにも強くなるべきだ」
「そうね、あなたは神の力らしいけどそれでも見破ったんだもの。他にいないとは言えないわね。今まで戦闘はほとんどしたことないけど・・・頑張るわ」
というわけで武器屋にやってきた。
「いらっしゃいませ!怪我は・・・ないようですね、よかったです。
何か装備に不具合でもございましたか?」
「いや、装備に悪いところはなかったよ!今日は彼女の武器を見繕いに着たんだ」
「そうですか、ありがとうございます」
客の顔をしっかり覚えているようだ。なかなかの商売人だな。
訓練する時間も欲しいし、早めに決めてしまおう。
「どんな武器がいい?」
「遠目から攻撃できる武器でお願い致します」
ん?言葉遣いが??
「えっと、じゃあ槍かな?」
「はい、それでお願いします」
奴隷の言葉遣いなんだろうか・・・。しょうがないか。
外でフレンドリーに接して彼女が嫌われても困る。後で聞いてみよう。
何本か試しに振ってもらったが鋼の槍では少し重い様だった。
だが│PLするつもりなのでそれを買うことにする。
「これください。あと彼女に合う胸当てを」
「かしこまりました。ではこちらへ」
試着した結果ちゃんと合うものがあった。
胸当てと槍、それに予備用のダガーを買って店を後にする。
「こんなに買っていただき、ありがとうございます。ご主人様」
ご、ご主人様とか違うもの想像するからやめて欲しいわ!?
そんな俺の動揺をよそに彼女はそ知らぬ顔で歩いているのだった。
まあそりゃそうか奴隷が普通の世界でご主人様呼びに変な意味なんかないわな・・・。
宿への道を歩いていると・・・会ってしまったアホ軍団に。
「あ!お前!」
頭を抱える俺。ビビッて俺の陰に隠れるアイラ。
奴隷が主人盾にしていいんだろうか・・・?
「よくもこの間は逃げやがったな!どんなトリック使ったかしらねえが今日は逃がさねえぞ!」
はあ・・・めんどくさっ。さすがに二度目は我慢する気ないぞ・・・。
「なあ、こんな往来で俺みたいな子どもに絡んじゃまずいんじゃないのか?
アンガスさんもお前らのこともう庇わないって言ってたぞ?」
「やっぱりお前が告げ口しやがったのか!お前のせいでアンガスの野郎からしこたま説教されただろうが!」
「そりゃ自業自得だろうが!」
「うるせぇ!てめえを逃がしたことで兄貴からも説教されたんだからな!」
兄貴?そういやヤクザの若頭が今日はいないな。それもあってこいつらこんなところでつっかけて来るのかな?
「説教されても進歩してないんだなぁ」
「へんっこないだはぶるって逃げ出したくせに、今日はずいぶんと強気じゃねえか!
ん?ははっおめえ女の奴隷を連れてるのか!それでええ格好しようってか!」
何か変な勘違いを始めたようだ。まあそれでもいいか。
「こそ泥のくせに話が長いんだよ。それでどうするんだ?」
「なんだと!調子乗りやがって!財布と女で許してやろうと思ったのに!」
それほぼ身包みはがれてるよね?ぜんぜん許してないよね?
奴らは顔を真っ赤にして剣を抜いている。チンピラらしく気がとても短いようだ。
先に抜かせたしもうぼこってもいいかな?
そう思って殴りかかろうとした時だった。
「よし、そこまでだ。双方動くな!」
衛兵隊の隊長だった。喧嘩が始まる前でタイミングが良いとするか、俺のストレス発散前でタイミング悪いとするか、微妙なところだな。
「こんな往来で刃物を抜いた以上見逃せんぞ!」
奴らは面白いぐらい顔色が変わって真っ青になっている。
人通りのあるところだよって注意してあげたのにね。
「隊長さんこんにちは~こんばんはか」
「なんだケンじゃないか。お前がこんなところで武器を・・・抜いてないな」
「ええ、あっちが吹っかけてきただけなので私は武器は抜いてませんよ」
「そうか。・・・・・・武器を抜いてない確認が取れたからお前はもう行っていいぞ。気をつけてな」
「はい、お手数おかけしました。また今度です」
アイラを連れてその場を後にする。
後ろでチンピラ連中がずるい、とかえこひいきだ、とか何で俺達だけ、とか言ってるけど無視だ。
日本だと喧嘩両成敗になるかもしれないけどこの世界ではそういうことはないようだ。
酒樽パワーのおかげかもしれないが。
奴らのせいでギルドの訓練場に行くほどの時間はなくなってしまった。宿の裏庭でアイラに武器を持たせる。
「えーと槍は何だっけ・・・。突き、薙ぎ、払い?だったかな?そんな感じ!
とりあえず重さに慣れてみて。明日は魔物を狩りに行くから!」
「え!?そんな適当な感じなんですか!?」
「うん、だって槍なんて使ったことないし」
アイラがショックを受けた顔をしている。
「あ、あの・・・私、明日死にませんよね!?」
「大丈夫、大丈夫。弱いの選ぶから!」
アイラは死に物狂いで槍を振ってたけど、どう見ても下手っぴだった。
暗くなってきたので宿に戻ったらおかみさんに叱られた。
泊まる人数が増えたことを申告しろと。ごもっとも。
部屋が空いてないということでそのままの部屋で寝ろと言われた。
あの狭い部屋に二人?ってかベット一個しかないよ!?
ちゃんと言わなかったお前さんが悪い。明日には今より大きい個室が開くから我慢しろ、だってさ。
今日寝れるかなぁ・・・。




