九話 冒険者の宿
「らっしゃーせー」
受付娘会心の営業スマイルと聞き取りづらいが威勢だけはある張った声が屋内に響く。ここは宿屋「砂漠の涙亭」。
早朝に決めたとおり町外れの木賃宿を引き払い、酒場で評判を吟味した上でここを訪れた。
ぱっと見中々良さそうだ。床は清潔で食べかすが放置されていないし、壁に入ったヒビはモルタルで補修されている。これだけでも上等なものだ。前の夜露さえしのげれば御の字という宿に比べれば。
一行が屋内を見渡し、宿を品定めしている最中、店番たる受付娘のほうでもご新規の客の見定めている。あまり人品の不確かな客は有りがたくない。客の良し悪しは金払いと素行の良さで決まる。個室で長期滞在ならなおよし。
(ふうむ。冴えない男二人と育ちの良さそうな女性二人、それと猫っぽいのと青くてでかいの。青いのはギガンテスか。暴れられると厄介だけど……、見た目大人しそう?)
HDクラッシャーズに受付娘が下した評価は「可」といった所だ。六人の見目はなんとか受付娘の値踏みに耐え切ったようである。まああまり繁盛しているとは言えないこの宿にとって今晩の宿代を前払いしてくれる客はすべて上客といえるのだが。
一行は宿代を払い奥へ通された。一階は三段ベッドが所狭しと詰め込んだ簡易寝台室。二階が個室だ。当然安い簡易寝台である。ベッドにはシーツが一枚かけてあるだけ。寝具の類いの貸出はあるが有料だ。
ベッドのシーツを軽くなで調子を確かめた真守は違和感を感じ鼻をスンスンとひくつかせた。
「なんだが嗅いだことのない臭いがするな。薬品のような……」
受付娘は――それはあれでしょうと答え、壁に貼り付けられた一枚のポスターを指さした。ポスターは商品の広告のようだ。目がバッテンになっているコミカルな昆虫のイラストと「宿シラミを一網打尽! 鳥印の防虫剤シラミコロース」と印字されている。
「あれを3日に一回散布してるんです。近所の錬金術士が売り出し中の新製品なんですよ。効果は抜群で売上も馬鹿売れらしいです。景気のいいはなしですよねー」
これを聞いたムーニャが感動してニャーニャー鳴いている。天然毛皮を纏っている獣人にとってこれほどの朗報はないのだろう。
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簡易寝台は雑魚部屋の五倍の値段である。高い。だがMP全回復の他にHPが15回復するので回復の手間が減り楽である。自然利用してしまう。




