八話
「ああやっとだ。下に行くのは当分先だなこりゃ」
真守達は息を切らせ地下一階に戻ってきた。地下二階に比べれば通い慣れたこの階層は天国のようなものだ。
だがまだ地上に帰る訳にはいなない。心労を積んだだけで一度も戦闘をしていないし探索も進んでいない大して進んでいないのだから。何も得ずに宿にのほほんと泊まれるほどの余裕はない。HDクラッシャーズは探索を続行する。
手書きの地図は順調に埋まっていった。ドアを開け、狭い通路を進んでいく。モンスターが潜む玄室はなく、道中徘徊していたプチスライムを文字通り蹴散らして撃破した以外は目立った敵もいない。
「そろそろマップ左上全部埋まるみたい。そこの曲がり角を曲がったら今日の分はミッションコンプリートだニャ」
マッパーのムーニャが地図とにらめっこして進行状況を教えてくれる。一行は気楽に道を曲がった。そして後悔した。もっと警戒すべきであった。盗賊がいたら警告の一つもしてくれたかもしれない。
曲がり角の先は行き止まりだった。そして血まみれのディナー会場が視界一杯に入る。十体以上の巨大蟻――フレッシュアントが引きずってきた得物をゆっくりと捕食していた。得物の四肢が強靭なアゴと前足で手荒に解体されていく。
六人は冒険者の末路を目にし声を喪失し動きを止めた。結果的にそれがよかったようで向こうはこちらに気づいいていない。
いち早く我に返ったブラウスが他のメンバーに振り返り、無言でハンドサインを送った。まず人差し指を唇に置き、その後手のひらを背後に向かってヒラヒラと振った。
――声を出さず、来た道を戻れ。
ハンドサインは以上の事を示していた。他五人は首を縦にふるまでもなくその指示に従う。あの数相手では死あるのみだ。今まで問題なく戦えていたのは、いつも一匹で出現していたからなのだから。
フレッシュアントはあまり知覚はよろしくないようだ。後ずさる一行に気づかず食事に夢中だ。逃走は成功した。
HDクラッシャーズはそのまま地上に帰還した。稼ぎは悪い。だが今日はもう色々とお腹いっぱいであった。
●
蟻がいっぱいだ。2グループ合計十二体出現とか暴力的な数だ。いかんでしょこれ。祈りならが逃げるを選択した。このゲーム逃走成功確率は低くないのでこれで大体大丈夫なのだ。




