七話
HDクラッシャーズ一行は迷宮入り口に到着した。朝っぱらだというに入り口を守る近衛騎士達に変わりはない。24時間交代制で詰めているそうだ。為政者からしたら街の真下に無尽蔵にモンスターがわく巣穴あるようなものだから当然の処置か。
「へー、騎士勤めも楽じゃあないな」
「まったくだ。精々奴らを減らして俺達の仕事を楽にしてくれ」
真守は顔なじみとなった隊長と門が開くまでの間適当に駄弁る。この髭の隊長はみためにそぐわず話し好きなのだ。大抵愚にもつかない嫁さんの愚痴を聞くことになるのだが、真守が今日の予定を話すと一つアドバイスをくれた。
「蟻に気をつけろ」
門の金切り声が止んだ。隊長の助言を頭の片隅に真守と五人は迷宮へと歩を進める。
今日から本格的に迷宮の探索に入る。迷宮を南北に地下一階を両断する長方形の空間にたどり着く。一回目の冒険ではジリジリと足の裏を擦るように慎重に踏破した道のりも、経験を積み連携も合うようになってきた今のパーティーならば意気揚々と鼻歌交じりでたどり着く事ができる。まあバンディット相手だとまだ危ないのだがあれから遭遇していない。彼奴らは元もあまり出現率が高くないらしい。一回目の惨事は運が悪かった。
数日ぶりに訪れた長方形の空間――中央回廊はガラクタが散乱しており汚い。鼻につく異臭も相変わらずだ。こんなところはさっさと通り過ぎたいのが人情だ。
あらかじめの相談で中央回廊にある、三つのドア。二つの通路の内、マップ左上へ続く通路を選ぶことに決まっていた。
これはマッパーを任せているムーニャの意見で、端から順番に地図を埋めたいらしい。左下の部分はすでに埋まっているので左上の部分を埋めてしまえば中央回廊東側を全て埋めることができる。反対する意見もないので採用となった。
選んだ通路を直進するとほどなく階段が見えた。地下二階へとつづく階段だ。降りるという判断はありえないだろう。さすがのブラウスも降りようなどとは言わなかった。ジェラートにジロリと威嚇され、苦笑いをして首を横に振る。
が、しかしムーニャは階段を降りようと強く提案した。他全員が猛反対したがムーニャは意見を変えなかった。
「ニャンニャーは別にニャンニャーをも殺す好奇心で降りようと行ってる訳じゃないの。みんなからマッパーを引き受けた以上皆の命を預かってるも同然。だから全力で義務を真っ当しなきゃならないのニャ」
結局この言葉か皆の心を納得させ地下に降りることとなった。ただし降りたら速攻上に戻るという約束をして。ジェラートはキンコにブラウスを指さし、手に持った杖を殴るようなジェスチャーをした。要するに何かこいつがやりやがったら容赦なくマジカル棍棒で殴れということだ。キンコは真剣にウンウンと頷く。
「うーひどい。さすがの私もそこまで向こう見ずじゃあないよ」
ジェスチャーを見せつけられたブラウスは不満を述べたが日頃の行いが悪いのだ。
階段を慎重に降りる。酒場で階段にはモンスターが出ないらしいという不確定情報があったが信用するのは危険だ。警戒度を密に隊形を保つ。
階段が終わる。地下二階の様子は拍子抜けほど地下一階と同じだった。夜光石が見慣れた石壁と石床を照らす。だが冒険者たちは理解した。もし今の練度で歩を進めようなら確実に死ぬ。ただ恐怖が見せた想像の産物か、それとも第六感が作用したのかはわからない。ただズッシリと重い死の予感が喉を乾かせる。
皆は無言でムーニャを急かした。ムーニャは呪文を唱えた。今いる現在位置を脳裏に浮かばせるキャンプ呪文【フロピック】だ。短い詠唱が終り、現在位置をマップに書き込む。
六人は即座に反転し地下一階へと登っていった。急がず慌てずだが大急ぎで。足を踏み外したら地獄に真っ逆さまなのだから。
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やっと冒険らしい冒険が始まる。オートマップを埋めたくてうずうずしているのだ。自分はマップ埋めたい病なのである。このゲームの面白さを構成する3分の1くらいはこのマップ埋めにかかっているというのが自分の持論である。こうなんだ、未知のフロアが埋まっていく快感みたいなのがあるのだ。中毒的なものかもしれん。
埋めていく内に地下二階へ繋がる階段を見つけた。やけにあっさりだ。特にイベントを起こしたりシークレットドアの先にあるわけでもない。原作初代にあやかっているのかもしれないな。
あの作品も階段が見つかりやすい場所にある。階段に辿り着くまでに玄室を開ける必要もないのも一緒だ。オマージュってやつか。
せっかく見つけたのだし潜ってみよう。別に地下二階で戦闘するわけではない。無謀にも程がある。階段の位置をマッピングしておきたいのだ。
まずないとは思うが、もし地下一階のどこかにシュートがあって落ちてしまった場合五里霧中で上り階段を探すはめになる。
そのような目に会わないために見つけた階段は、探索する気がなくても下りてすぐ戻ってくるという転ばぬ先の杖な作業をしておくのが3Dダンジョンゲープレイヤーの嗜みなのだ。




