五話
本日二度目の戦いに勝利し、ジェラートは帰還を宣言した。それを疑問に思ったブラウスは問うた。
「あれ? もう一戦してかないの? まだムーニャの【ブラーヌ】が一回残ってるっしょ」
「いいや、今日はもう終わりなのだ。上で用事もあるしな。フフフ」
ジェラートはなぜか不敵に笑い、皆に帰り支度を施した。他の四人も素直にそれに従ったのでブラウスは少し違和感を感じながらも後を追った。
「こんにゃろー! バカヤロー! 謀ったな、ジェラートぉぉぉぉりゃああああ! この縄を解けぇ!」
「フッフッフ。今日のところは私の作戦勝ちのようだなブラウス」
ここはボタクッテヤル商店の真ん前。天下の往来でなぜかブラウスが縄で全身グルグル巻きにされて地面に転がっている。それをニヤニヤと勝ち誇った笑みでジェラートが見下ろしている。
なぜこんな事になったのかというとこういう事だった。
地上に帰還してから一行は、前衛の新装備を整えられる小金がたまったので商店に買い物に来たのだ。が、買い物となると予想されるのがブラウスの妨害である。こいつの無駄な買い物好きと舌先三寸が合わさるととんでもないことになるとジェラートは考え、他四人を事前に説き伏せてこの事態になったのである。
やり方はシンプル。まずムーニャがブラウスの顔面に【ブラーヌ】を打ち込み前後不覚にした後、上背があるキンコが後ろから捕まえ、最後にジェラートがあらかじめ用意してあったロープでふん縛るというものだ。
作戦は無事終了し、ブラウスは手も足も出ない。
「よし、OK。真守! 利明! このアホを私達が抑えている間に無事買い物を済ませてくるのだ!」
やたら大事な大捕物になり、道行く人々の視線が背中に刺さるのを感じながら真守達はダッシュで商店へと向かった。
二人を見送ったブラウスは縄の締め付けがどうにもならないと判断するとジタバタするのをやめ、優しく猫なで声でジェラートに話しかけた。
「ねえねえジェラ? 私が悪かったよ。この縄を解いて欲しいな。いやね。悪い事を考えてるわけじゃないのよ? たださあ私が買い物に同行したほうが役に立てると思うってだけなの。私のしゃべりなら値引き交渉でたっぷりまけさせてやれるぜ!」
「うっ、値切る? そういうのもあるのか。確かにそれも大事なような……」
ジェラートは早くも心理的に懐柔されそうになっていたが、ムーニャが口を挟んだ。
「おいおいジェラート。何即効で口車に乗せられそうになってるニャー。どうせ買うのなんて格安の中古品なんだし、値切ってもたかが知れてるニャ」
おめーはブラウスの事となると途端におバカさんになるのよね~とムーニャが付け足し、ジェラートはさきほどの調子はどこへやら涙目になっている。
真守・利明の男衆二人は商店でお目当てを物色している。といっても店内に入る訳ではない。
ボタクッテヤル商店入り口付近では、店先の日除けの下で数打ちの中古武具が木箱につめ込まれて投げ売りされているのだ。購入時も店先で番をしている丁稚の小僧に言えば事足りるのでペーペー冒険者は一切店内に入る必要がない。
一日目に装備を整えた時も、斧槍を売却した時も店先だけで済んでしまった。店内で買い物ができるのはそれなりの名声と資金力がある冒険者パーティーだけなのだ。
今日の用は中古の頭部装備を購入するためだ。二人は木箱に入った銅製の兜を次々かぶっては脱ぎ、自分の頭にフィットする兜を探した。中古とはいえ手入れはされているようでへこんだり割れていたりしている粗悪なものは見当たらない。まあ見栄えは悪いが。
これでもないあれでもないとガチャガチャやっていると店番の小僧がアドバイスをくれた。兜を買う客には布クズがサービスでつくらしい。これを隙間につめてサイズを合わせるのだという。
都合のいいものを見つけ、ブラウスの分も適当に見繕い購入。二人は店を後にした。男の買物などこんなものだ。
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ドラクーエドリィでは名声値というシステムがある。迷宮のモンスターを倒したり、酒場のクエストをクリアしたりすると上昇する。名声値を上げると様々な恩恵があると設定メモにある。
その代表が商店だ。原作では一切新しいアイテムを入荷しない怠慢商店だったが、ドラクーエドリィでは名声値を上げるごとに新しい、強力なアイテムが入荷するらしい。入荷というか商人のおメガネに冒険者の格が適うと購入可能になると考えるべきか。
原作のストイックさもいいが、こういうのも悪くない。あれだ。救済措置というやつだ。
現状、HDクラッシャーズの名声値は0だ。一階でどれだけ戦っても名声は得られないらしい。




