二十七話
六人が迷宮より這い出て、扉が音を立てて閉じられると偉ぶった兜の兵士――後に名を聞いたことによると近衛騎士団第三部隊隊長カプランが近づいてきた。
「全員いるようだの。まこと重畳なことだな」
気遣う言葉の割に大した感慨もなさそうな様子だ。まだ数ある凡百冒険者にすぎないからだろう。
負傷しているブラウスを見つけ口ひげを指でひねりつつ部下に、酒樽を呼んでこいと指示をだした。小姓がひとっ走りし、すぐに奥からドスドスと重量ある足音が聞こえてきた。
まもる がそのシルエットを最初見た印象は、鏡餅から短足が生えた魔法生物か何かだと思った。照明の下にたどりついたそれは一応ギリギリに人だった。
ゴワゴワとした髭を蓄えたドワーフだ。服装から僧侶であることがわかる。しかしその体形はまったく僧侶らしくない。太っているとにかく太っている。日頃の不摂生具合を下腹とアゴに大きく貯めこんでいた。
ドワーフといえば短躯で筋肉質。上から下まで同じように太い酒樽のような体形で有名ではあるが、この肥満僧侶はただの贅肉の塊でしかない。酒樽というアダ名はまったくもって名を体に表していなかった。突き出た腹を揺らしながら喋った。
「おふー、おめえら新顔か? たく湿気た面してんなあオイ」
酒臭さを振りまきながらぶつぶつ文句を垂れている。酔っ払っているようで要領をえない。業を煮やしたカプランが話を継いだ。
「こいつの名はズンダという。君らと同じ冒険者で、負傷した冒険者の治療を任せている。」
カプランの説明によると、暇な回復呪文持ちの冒険者を臨時で雇い、負傷して帰還した冒険者の治療を行っているらしい。ただし有料でだ。ニコニコ現金払いが推奨されるが、迷宮内で手に入れたマナメタル払いも可能らしい。
負傷者を抱えるHDクラッシャーズには有り難いシステムではあるがジェラートが疑義を挟んだ。当然の如くこのデブ酔っぱらいドワーフについてだ。
「隊長殿、申し出は嬉しいが彼の腕は確かなのか? 見た所かなり酔っているようだし、信頼できないなら仲間を任せられん。間違えて【ロギ】をぶっ放されたら冗談ではすまんぞ?」
「懸念はもっとも。だがこやつが呪文に失敗した所をみた者はいないし、こやつが素面の所をみた者もいない。まあ自己責任でやってくれたまえ」
ジェラートは苦虫を噛み潰したが、ブラウスの容態は悪化しており地にへたりこんでしまっている。選択肢はないようだ。
ゴールドが足りなかったのでマナメタルを全て明け渡して補填する。ズンダの詠唱が始まった。要所要所でしゃくりあげて止まったが無事成功した。ニャーニャー言っているムーニャも呪文に失敗することがないし結構いい加減なものなのだなと戦士二人は思った。
ゆっくりとブラウスが立ち上がる。傷は完治したが、失った体力と血液が戻る訳ではない。これからやたら急勾配の階段を登らねばならない。さすがのブラウスも音を上げ、キンコの背を借りた。早急に休息をとらなければならない。階段の先、太陽の光が見えてくる。
一行は地上に帰ってきた。
夕日が町外れを照らしている。其処らの屋台からトントンと野菜をきざむ音、何かの肉類を焼いているのだろう、油したたる良い匂いが辺りに漂っている。もう夕飯時だ。
誰かの腹がなる。だが今は宿を探すのが先決だ。
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原作シリーズの携帯版には迷宮から街に帰還するとオートでHPMPが全回復する仕様があったそうだ。便利だが味気ない気もする。何事も一長一短であるな。




