いい加減にして。
突然、頭の真ん中をくり抜くような痛みが走ったせいで無理やり意識が吹き替えした。
「いっでぇ_____なんなんだよ…まったく___ん?」
かび臭さが鼻を突いてきて、身を切る寒さに体が震える。確認するため周りを見渡す。暗い闇が包む空間ではよく見えないが、音の反響などから、やはりここは洞窟で間違いない。
やはりとは言うがもともと馬車に居たはずだったが、ここにいる理由がわからない。直前の記憶もあいまいで、腕の疼きで最速のジークフリードがいたのだと___
「あ!!あいつら!!どこいったんだ!!」
「ご心配なく。」
暗闇の中でロウソクの炎とともに、陽炎にあぶり出されるダビデが、眼の前に現れた。
「_____」
ホラー映画のような登場で、言葉の前に体が動いて、尻餅をついた。そんな間抜けな様子をダビデは笑い飛ばした。
「あっはっはっは!!!まさか!征服者あろう男が___あっはっは!!!おかしくったらないね!!!」
「わ、笑うな!というかお前、説明してくれるんだろうな。」
「あっはっはっ____ええもちろん。だから縛ったりなどしていません。」
実際、俺の転移能力は現在地がわからなければ使えない。ダビデは食えない男だ。確信していなくてもそこまで折込済みなのかもしれない。
「私の魔法は幻惑。」
「…。」
「そんな顔しないでください。この魔法に精神作用はありませんよ、ただ瓜二つの幻影を投射するだけです。ある一定の距離から離れると、消えてしまいますがね。」
「つまりここまで来たのも、実際は1台だと。」
「ご理解早くて助かります。因みに向こうも全員無事でギルボアに到着したそうです。全員無事でね。」
「そうか…。」
手の内を曝け出した。未だダビデの思惑が読めず、後手に回るのが腹立たしい。
「それで俺にどうしてほしいんだ。」
「…急にしおらしいですね。」
「殺す気がない相手なら交渉ができるだろ。殺す気ならもう死んでるだろうし、利用する気ならアイツラの所在を話さないだろう。」
「ブラフの可能性は?もしかしたら後々利用する気かも…。」
「そうならもっと強気に出るだろう。お前なら。」
「ふふん。商人根性は初心者と言ったところですね___まぁいいですよ。早く立ってください。ここに来たのは別口の依頼、アナタをよんだ人がいるんです。」
ダビデは俺を連れて暗黒を進んだ。どうしようもないのでついていくが、いざとなれば俺はコイツを消さなければならない。心構えを持っておこう。
しばらく歩いたところで暗黒は続いていた。だがロウソクの明かりが増え、近づくと、畳に座るオバァちゃんが儚い炎に寄り添っている。
「あんた…日本人なのか。」
割烹着というのだろうか。昔ばなしにでも現れそうな古臭い格好で星座をしている。
声に反応して、開いているのかどうかも怪しいまぶたから、俺を覗いている。そして皺くちゃな口をゆっくりと這わせて、低い濁った声を放つ。
「初めてお会いする。とはいっても、わしはお主の事を追いかけてはいたがね。」
「はぁ…。」
「女神アストライアが送り出した男、八木元拓哉。」
ゾッとした。ネットリテラシーの欠片もない言葉に身が締まる想いだ。
「臆するな勇者よ。…わしはお前様に聞かねばならない。」
ババァは会話を切り返して、とんでもないことを言い始めた。
「貴様は神と戦えといえば、戦えるのかの?」
まさかカルト教団なのか。怪しむ心が急に膨れ上がって自然と眉間にシワが寄る。
「…まぁ素直に信じる物好きもおらんだろうと思ってはおる。だからダビデを遣わしたのじゃが。」
「そこに関しては全く持って申し訳が立たないです。」
鋭い目つきがダビデを射抜く。そこに乗じて俺も追撃をした。
「いい加減話してくれ。何があった。」
「…ここに来る途中で、襲撃にあったのです。」
それでこの体のダメージなのか、道理で肩周りが想いと思った。
「奴らは荷馬車を破壊して、アーティファクトを盗んだだけで飽き足らず、ある荷物を盗んだのです。」
「あの荷馬車に何が乗っていた?俺達以外に___いやいい。」
コイツ…バレないように幻想の魔法を使って見えないようにしてやがったな。話が進まないので言及はしないが、なにかで絶対やり返してやる。
「荷物の名前は、アキラ。この世界の根源に至る記憶を持った方。記憶を受け渡すメモリーホルダーのスキルを持った女性の転生者です。」
「メモリーホルダー?」
「彼女はこの世界で唯一、世界の真理に触れた希少価値の高い記憶を持った方のなのです。」
「アキラの力を使い、今度は貴様に世界の裏側を見てもらおうと思ってな。」
「まてまてまて」
俺の静止でふたりともきょとんとしているが、俺の意見を介さず話が進んでいるのはいただけない。
「なんで俺なんだ。そもそもこんな訳わからない事に巻き込まれても、やるつもりはないぞ。」
「貴様がもつのは瞬間転移のスキルじゃな。」
驚きすぎて言葉が出ない。この事を俺は仲間以外に話したことがない。
「そのスキルはまだ本来の力を発揮しておらんこと、貴様は知っておるか?」
「本来の力。」
「ワシはそのスキルの力を限界まで引き出すことができるぞ。もしワシの話を聞いてくれたらな。」
「クソ!!また交渉かよ!!!!あーーーーーー」
この世界で商人という仕事を選んだ負債がこれか。まぁ致し方ないとは思う。いつまでたっても暴力に支配され続けるのは癪だ。早く自由に生きたいもんだ。
「…それで、どうしてほしいんだ。」
「さすが勇者。」
「勇者なんていうな。そんな柄じゃないんだ。」
「あいわかった。ひとまずアキラを奪還じゃな。ギルボアを抜けて・・・。」
ばぁさんの言葉を受けながら、俺とダビデは次の行動を決めていく。




