王国騎士団・特務第七部隊
疑いは、悪意からだけでは生まれません。
守ろうとした結果、傷つけてしまうこともあります。
村の中央に、重い足音が響いた。
整った鎧の音。
風とは違う規則的な振動。
レオンが振り向くより早く、騎士たちは円を描くように広場を囲んだ。
銀と青の紋章。
王国騎士団。
その中でも黒い外套を纏った一隊が前に出る。
特務第七部隊。
「勇者レオン」
隊長格の男が静かに名を呼ぶ。
「報告書は受理した」
声は冷静だった。
だが視線は、カイルとフィアに向いている。
フィアは今日も淡い茶色のコートのままだ。
風に揺れる裾を押さえながら、小さく息を吐く。
「増えたね」
「囲まれている」
カイルは状況を淡々と述べる。
隊長が続ける。
「村の消失事案。魔物の両断痕。空間削削の形状」
一瞬だけ間が空く。
「王都に報告された“規格外戦力”と一致する」
視線がはっきりと二人を捉える。
ガルドが小さく唸る。
「待て、それは——」
レオンが一歩前に出る。
「彼らは——」
だが隊長が遮る。
「勇者の見解は理解している」
冷たい言い方ではない。
だが決定事項だった。
「しかし王都は調査を命じた」
フィアはきょとんとした顔をする。
「調査?」
「同行を願いたい」
丁寧な言葉。
だが騎士たちの手は剣に触れている。
カイルがレオンを見る。
レオンは目を逸らさない。
だが迷いがある。
それが全てを物語っていた。
「抵抗するな」
レオンが小さく言う。
願いだった。
命令ではない。
フィアは少しだけ笑う。
「うん、しないよ」
本気だった。
面倒そうではあるが、怒ってはいない。
カイルも動かない。
騎士が魔封の手枷を差し出す。
触れた瞬間、空気がわずかに揺れる。
だが何も起きない。
カイルは黙って手を出す。
フィアも続く。
抵抗はない。
広場に緊張が落ちる。
誰も戦っていない。
それでも空気は張り詰めている。
隊長が静かに言う。
「王都へ」
風が吹く。
村の中央で、勇者と騎士団と、ただのお出かけ好きな二人が並ぶ。
疑いは確定ではない。
だが拘束は事実だった。
フィアが小さくレオンに言う。
「疑われちゃったね」
責める声ではない。
少しだけ寂しい声だった。
レオンは答えられない。
それが何より重い。
村の空は静かだ。
だが物語は、静かに次の段階へ入っていた。




