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骨の髄まで  作者: 國生さゆり
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シーン20 察しのいい男



  シーン20 察しのいい男



 で立つ幹部たちの面前で、岡田は赤松の名を呼んで自分の車に招き入れた。無関心を顔に貼り付けたかん子が「本日は、ありがとうございました」と丁重に頭を下げる。



 暗い車内からその様子を眺めていた染矢は、これでは誰の襲名式だったのかと思えば溜息が漏れた。大体、こんな事を許すとは5代目も甘い。俺らの世界はすきを作れば、獰猛に醜く喰われる世界だというのに……、



 人がはけるのを待って「出せ。見失みうしなうなよ」と運転手・小松に指示を出す。「はい」と返事をするや、小松はエンジンを掛け、滑らかにアクセルを踏んだ。慣れ親しんだ感覚だった。染矢は族のNO.2だった小松を組に引き入れ、一から運転手としてのイロハを教え、ヤクザの作法を叩き込んだ一人だ。



 かん子に押し付けられた若竹との交代に、不満1つ態度に出さなかった小松は、引継ぎをねて暇を見つけては若竹を連れてドライブに出かけ、本家と関係のある諸々の場所、駐車スペース、組との関係性を教えていた。そんな面倒見のいい小松にさえサジを投げられた若竹は今、どこで眠っているのだろうと考えていた染矢の携帯が振動する。赤松からだった。左手の親指で画面をスライドさせて耳元に持ってゆくや、赤松は「赤坂の“こはく”に向かってる」と言った。お見通しかと思いながら微笑んだ染矢が「わかった」と返すと、「岡田総裁から5代目に話は通ってる。お前も顔を出せ」と赤松は言った。




 椎田は水沢から「銀座にゆく」と聞いて俺に報告してきた。赤松が水沢に風潮するようにと言いふくめていたという事だ。皆、“赤松は銀座にいる“と思っている。少なからず赤松は身の危険を自覚しているという事で、呑気にかまえているわけではなく、それなりの自衛を日頃から心がけているとわかった染矢は静かに息を吐いた。



 「俺んとこの西村と内田に外警備をさせる。お前んとこのやつで中を頼む」と言った染矢に、赤松は「それで、お前は来るのか?来ないのか?どっちなんだ」と低くも耳ざわりの良い声で聞いた。「お邪魔させてもらう」と言った染矢に、赤松は「いい子だ」と言うや電話を切った。




  「クソ」とつぶやいた染矢が笑う。




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