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骨の髄まで  作者: 國生さゆり
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シーン2押し通る

  


   シーン2 押し通る


 定例会は散会となり、本家の廊下を歩く赤松は2人の男を従えていた。染矢はその1人の名を呼ぶ。「水沢」と。赤松は聞こえなかったをつらぬくかのように、歩をゆるめる事無くその場から立ち去ってゆく。



 赤松のガッチリとした背中をめ付けた内心で“どこまでも俺をシカトする気か、クソったれが!!今じゃないだろう!簡単に考えを口に出すんじゃねえよ!!“と毒吐どくづいていた染矢に、水沢は重たげに振り返り「ご心配なく。ションベン行くにも、ボディーガードが付いて行ってますよ」と呼び止められた理由を尋ねる事もなくそう言った。間髪入れずの染矢が「女は?」と聞く。「いませんよ、そんなもん」と、それがどうしたとでも言いたげな顔つきで水沢は応え、水沢をしらけ目線で刺した染矢が「そんなはずはない」と言い切ると、急速冷凍の目で染矢に対抗した水沢は「あなたには関係ない事です。こっちはこっちでやってますんで」言葉使いは丁寧なものだったが、その声質は冷たく、受付不可で、捨てるように染矢を置き去りにして歩き出した。



 「チッ」と舌打ちした染矢は上着の内ポケットからスマホを取り出して、2コールでおおじた女に前置きなく「赤松とは切れたのか?」と聞く。「アンタから、小遣いもらってるってバレたのよ。アンタのせいよ!このクソバカ野郎!!」女の乱暴な言いように染矢の目が笑う。笑いながら染矢は「お前が軽いからだろう」と言ってやる。



 女は怒るでもなく、腐るでもなく「今の女は私の連れよ。どんなプレーが上手いか、どこに住んでるんだか、どんな性格なのか知りたいんだったら、あなた、私にお行儀よくしなきゃ」と甘い声で冷静に言い返し、いまだ笑みを浮かべている染矢が「ああ、そうだな。悪かった。何が食べたい?」と紳士的に誘うと、「碑文谷にオープンしてから予約が取れない、“人参“っていうイタリアンがあるんだけど、明日、14時くらいからでどうかしら」と言って、女は一方的に電話を切った。



 そういう仕返しを染矢に思いつく万智子は超一流のコールガールで、今も現役だがここ数年は客をとっておらず、染矢がケツ持ちの元締めで、人あしらいも上手けりゃ、間違いを犯す事もなく、客を逃さない頭も持っている。もちろん今もなおボディーメンテナンスは完璧で、鳴かせた時の声も変わらないはずだ。




 それにしても戦争しながら新しい女なんか囲いやがって、いつの間にかに握り締めていたスマホが鳴り出していた。画面を一目した染矢の気が引き締まる。「代行、今から戻ります。はい、、承知しました」と言って電話を切った。何故、代行は[あの男・高橋]を呼べと言ったのだろう。珍しく染矢にかん子の考えが読めず、厄介事が起きると感が告げているだけだった。




 「クソ」と小さく吐き捨てた染矢は脳みそを掘り返して電話を掛け出す。「掛かってくると思ってましたよ。今ごろ遺書があったなんて、代行も人が悪いなぁー。ゴタついてる時に気か休まらないでしょ、大変ですね」と起き抜けの寝ぼけ声で言われた染矢は「ご無沙汰で申し訳ありません、高橋さん。ええ、前回いい記事を書いて頂いた事、我々が忘れるワケがないでしょう。わかってます。それで急で申し訳ないのですが、本日お時間を頂けないでしょうか、謝礼?もちろんです。迎えをやります。1時間後でどうでしょうか?」わざとハキハキとした口調で話す自分に呆れながら、やはりこの男は前回、埋めておくべきだったと思う。相変わらずの上から目線で態度がデカく金に汚い。その態度からこちらの何かを保険としてどこかへ隠しているとさっせられる。代行が何を考えているかのダシに使った後…、いや、どうせ今回も外道仕事だ。やらせてからでも遅くはない。



 かん子の部屋に向かいながら、染矢はネット検索して再び電話を掛け始める。すぐに繋がり「リストランテ、人参でございます」と言った男に、染矢が「明日の14時に予約をお願いしたいんですけど」と言うと、男が「申し訳あ」と口を開き始め、男の言葉をブッチ切った染矢は「8万あんたに手渡す。あぶれた客には新人がオーバーブッキングしたと言えばいい、あんた名前は?」と聞く。ためらいの吐息が聞こえ、男は「…戸上トガミと申します」と名乗った。「戸上さん、俺は中村、中村染矢だ。いい女を連れてゆく、眺めのいい席を頼む」と言ってる間に、戸上は吹っ切っていた。「かしこまりました、中村様。では、明日の14時にお待ちしております」と言った戸上が電話を切った。最後までてっせられなかったおろかな奴め。これでお前は一生、俺の言いなりだ。



 ふと、しかしながら、この世で金で押し倒せないのはなんだろうと考えてみる。……無いか…。そんなもんはこの世に存在しない。愛でさえ金で買えるのだから。



 

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