しつこい豚と混濁した記憶
遅くなってすいません
試験が明けました
次の授業が楽しみと言ったな。
あれは嘘だ、うん……。
今俺とレインは食堂の近くにある第3カフェテリアに来ていた。
なんで学校に食堂と別でカフェテリアが3つもあるんだよ……、という疑問は湧くだろうが、そこは気にしたら負けである。
この学園広いから、何があっても驚かないスタンスでいこ~!
「んでレイン、話ってなんだ? もしかしてさっき先生に渡されてた手紙が関係してんの?」
「そうよ。こんなものに時間なんてとられたくないのに……」
つい先程教室に着いた途端、次の授業が受ける必要性を感じない読み書きであると気づいた俺達。
一時間近く暇になるのでどうせなら学園見学でもしようという話になったのだが……
10分前ーーー
俺達は教室に帰ってきていた。
そこで次の授業がなにかを確認する。
「そういえば次は読み書きだったわね……。ベル、めんどくさいしさぼっちゃいましょ?」
とても王族とは思えないことをおっしゃるレインさん。
王女の威厳とか知ったこっちゃないようだ。
「というかよく考えたら、次の授業って受ける人とかいるのかしら……。私達これでもSクラスよ? 身体能力と魔法だけで試験に受かった脳筋とかでもない限り、うちのクラスで読み書きできない人なんていないと思うわ」
ごもっともですレインさん。
でも、脳筋ってとこでちょっとこっち見るのは止めようか……?
俺別に脳筋じゃないし!
ダンジョンで長く過ごしてたせいでちょっと実力至上主義入ってるだけだし!
そんな心の叫びをどうにか抑え込み、俺はレインに問う。
「まあ、そうだろな。……でもそれならこれから何する? 1時間位暇になっちゃうぞ?」
「そうねぇ……。あっ! 学園見学とかどうかしら! 私達昨日入学したばかりだし、5、6時間目の予習ってことで」
「ああ、そりゃいいな! この学園広いから色んな施設があって楽しそうだし」
こうして俺達は見学ツアー? を行うことに決めたのだが、教室を出ようとした時フィー先生がレインを呼び止めた。
「あっ、ちょうどいいところに! レインさん、お手紙が届いてましたよ? なんでもアルスラの国王様からの手紙だとか」
「お祖父様から? なにかしら、緊急の用事?」
レインは先生から手紙を受けとるとその場で読み始める。
そして読み終えると呆れた顔でため息をついた。
「はぁー、あほらし……。ベル、悪いんだけど学園見学は今度にしてちょっと付き合ってくれる?」
「ん? 別にいいぞ?」
「ありがと。じゃあさっきの食堂の近くにカフェテリアがあったからそこにしましょうか」
ということがあって今に至る。
「それで手紙にはなんて書いてあるんだ?」
「読んだ方が早いわ。はい」
そういってレインが手紙を渡してくる。
一体何が書いてあるんだか……
なになに?
『我が孫娘レインへ
レインよ、元気にしておるか? 何事もなければ……というかベルゼがおるから何が起きても大丈夫じゃろうし、問題なく学園についた頃だと思うのじゃが。
まあ世間話は次の機会ということで、ここまでにしておいて、本題に入りたいと思う。
どうもグリード帝国の貴族が暗部を使ってお前をさらおうとしているという情報が入った。ベルゼがおるから大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。じゃから従者枠として送る予定だったリンカを学園に編入させることにした。もちろん、学園側の許可は得ておる。リンカならばよっぽどの強者が相手でない限り問題はないじゃろうし、そちらには副騎士団長の息子、カインズ=レイモンドとその婚約者のエマリア嬢がいるはずじゃ、事情を話し協力して守ってもらえ。こちらもどこの貴族が暗部を送っているのかわかり次第連絡するので、それまではできるだけ一人にならんようにな。
・PS
これはベルゼにも伝えておいてくれ。
もしグリード帝国と争うことになった場合、勇者召喚を行いたいと思っているのじゃがその時にベルゼの力を借りたい。
できればでよいので、手伝ってくれると助かる。
アルスラ王国国王アルスラ=レンフォードより』
ほうほうほうほう……。
とりあえずカインズ君がルイスさんの息子でエマさん?と婚約してるリア充野郎ということはわかったよ、くそ野郎。
まあそれはいい。いや、よくないけど今のところはいい。
それより俺達に恨みを持つグリード帝国の貴族ってめっちゃ心当たりあるんだけど……
「レインさんや?」
「なにかね、ベルさん?」
「これあきらかにあの……豚君のことだよね?」
「そうね。あのグリード帝国の……豚のことね」
……どうやら俺達二人とも、あの豚君の名前を思い出せないようだ。
ほんと豚のイメージしか残ってない……
「しっかし、あの豚君もしつこいなぁ……。レイン、あとで万が一、いや億が一の対策としてマジックアイテムを作ってやるから持っといてくれ」
するとレインが驚いた顔で、しかし嬉しそうに問いかけてくる。
「いいの……? とっても嬉しいわ! ありがとう!!!!」
予想以上に喜んでくれるレイン。
はしゃいじゃってまぁ……
まあこんだけ喜んでくれると、こっちも作りがいがあるってもんだ。
「んじゃ豚君対策はそれでいいとして次は勇者召喚についてだ。っと! その前に……これは少々興味がある程度なんだがエマさんもどっかの令嬢とかなのか?」
「ええそうね。エマさんはキエフ公国っていう小国の侯爵令嬢で、本名はハイレーン=エマリアさんよ。エマさんのお父様はキエフ大公と親交の深い人で、その優秀さ故にキエフ公の懐刀と呼ばれているの」
キエフ公国……
2代目からの手紙には書いてなかった気がする。
「なあ、キエフ公国っていつ頃できたんだ?」
「えっ? ええっと……確か150年くらい前じゃなかったかしら。結構最近出来た国で、もとは紛争地帯だったのを初代キエフ公が統治してそのまま国にしたって聞いてるわ」
わぁ……中々凄い歴史をお持ちで。
だがなんで書いてなかったのかはわかった。
2代目が活躍したのは結構前のはず、2代目が死んでからキエフ公国がつくられたのだろうと考えればつじつまが合う。
さて、この疑問はこれで解決したということで、改めて勇者召喚についてだ。
「んじゃ今度こそ勇者召喚について教えてくれ。というかまず異世界から勇者なんて呼んだらその勇者の家族に迷惑かかるんじゃないか?」
これは勇者召喚について聞いたとき真っ先に思い付いた疑問だ。
だってよく考えたら勇者を呼んでくるってつまり誘拐と同じじゃん!
豚君もそうだけど誘拐はよくないだろ。
俺なら、身内から誘拐される奴が出たら誘拐犯に手加減できそうにないし……
力がなかったあの頃みたいにはなりたく……?!
はっ?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
……なんだ今の。
あの頃っていつだよ?
力がなかった? どういうことだ?
俺は確かただの学生でごく一般的な生活を送ってきたはずだ。
催眠? 投影? 暴力団? 壊滅? 弟? ……姉ちゃん?
なんでそんな脈絡のない言葉が頭に浮かぶんだ……?
催眠なんて知らないし、暴力団とか一般人の俺が関わるわけないし、何より俺に姉なんていない。
弟はいた気がするけど……
転生したせいで記憶が混濁してんのか?
わかんないし、とりあえず1つずつ思い出していこう。
俺の名前は確か……佐藤祐介だったはず。
あとは……
う~ん……思い出せない……。
何だった「……ルゼ。ベルゼったら! 聞いてるの?!」
「えっ? なっ、何だ?」
やばい、レインに呼ばれてた。
俺は急いで返事を返す。
「全く……人の話はちゃんと聞きなさいよ、あなたから聞いてきたんだから。そんなんだから色々ミスしちゃうのよ。……ていうか大丈夫? 顔色悪くなってるわよ。保健室でも行く……のは魔王だから不味いか。早退する?」
レインが心配そうな顔で聞いてくる。
……記憶については気になるけど、周りに心配をかけるのはよくないな。
いつかわかる日が来るだろうし、今はベルゼ=スライムクンとしての人生? を楽しむことにして……
パンッ!!
よしっ! 切り替え完了!
「きゃっ! きゅ、急に顔なんか叩いてどうしたの?」
「なんでもないよ、心配かけたな。もう大丈夫だから」
安心させるように頭を撫でる。
と、顔を赤くしたレインに手をはたき落とされた。
「お、王女の頭をそんな簡単に撫でるんじゃありません! 私王族よ?!」
ありゃ? ……怒らせちゃった?
これはまずい。
魔王だから身分的にはそこらの王族よか上なはずだが、女の子の頭を無許可で撫でるのは確かに良くなかった、反省しよう。
「ごめんごめん。勝手に撫でたのは悪かったな、反省するよ。ジュエルの時の癖がつい」
あっ……レインが真顔になった。
「へぇー、あの子にはしてるんだ。へぇー……」
こっ、怖い……
急にどうしたんだ……? もしかしてまたなんか地雷踏んだ?
戦々恐々とする俺。
だが予想に反してレインは怒らずに顔を元に戻し、話始めた。
「(私も撫でてもらえたし)……まあいいわ。勇者召喚の仕組みについてもう一回話してあげるから、今度こそ聞いときなさいよ」
「わかってるって! 今度はちゃんと聞いとくから教えてくれ」
こうしてレインは 『勇者』 という者についての説明を始めた。
今回は少し話を進めるため長めにしました。
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