到着と事件
「そこをどけっ、卑しい奴隷めが!」
ありゃ? テンプレが来たのか?
声のしたほうに顔を向けると、そこには学校の制服のようなものを着た猫耳の少女が豚? っぽい男に剣を突きつけられてる様子が見えた。少女は震えており今にも倒れこみそうだ。
「まずいな……」
「ベルゼ様、私達が行って参りましょうか?」
「いや、いい。俺が止めてくる。一応アスタロト達はレインと一緒に身分を証明するものでも用意しておいてくれ。」
アスタロト達にそう告げた後、俺は少女のもとへ向かうべく歩きだした。
「わっ、私は奴隷なんかじゃないです! ただここの学校に通ってる生徒なだけで……「うるさいっ! 亜人など全て奴隷のようなもの! そんな奴隷ごときが誉れ高きグリード帝国の貴族である俺に口答えするなど許さんぞ!!」 きゃっ!」
おいおい! 剣を降り下ろしやがった! さすがに見過ごせんな。
俺は急加速し、少女が剣に切られる前にかつぎ上げて剣の間合いから離れ、砂煙を起こした。
「君、大丈夫?」
「えっ? えっ? 私今切られそうに……あれ? あなたは?」
少女は突然の事に驚き、放心していたようだがなんとか反応してくれたので状況を説明してやる。
「君がなんか豚のようなものに切りかかられてたからさ、つい助けちゃった。もうちょっとこのままだけど我慢してね」
「はっ、はい。助けていただいてありがとうございます! ただあの方は貴族様なのであまり手出しはしないほうが……」
「はははっ、権力ならこっちも負けないから大丈夫だよ。そろそろ砂煙がはれるな、君名前は?」
「あっ、はい。私獣王国出身のサリアといいます! あなたは?」
「ん? 俺は……」
やばい……
なんて名のるか考えてなかった!魔王とかだめだろうし……
どうしよどうしよ! ……まあベルとかでいっか!
「俺はベル、オクタグラム学園に通うために試験を受けにきたのさ。それじゃサリアさん、しっかり捕まっててね」
「はっ、はい!」
顔ばれしても面倒だし眼鏡は外しとくか。
さて準備オッケー、豚狩りを開始しよう!
サリアside
私はオクタグラム学園高等部二年のサリアといいます。
学園に通い始めて4年、私達は昨日から二年生となりました。
今日、私は学園で行われる入学試験のお手伝いをするために早く家を出ました。
「それじゃお母さん、行ってきまーす!」
「はい、行ってらっしゃい。かっこいい後輩がいるといいわね(にやにや)、あなたそろそろ恋人の一人くらいつれてきなさいよ~!」
もうっ! 人がいっぱい歩いてるんだから恥ずかしいこと言わないで! ……とりあえず早くに家を出ました。出たといったら出たのです!
そのまま歩くこと5分、横道から貴族様とその護衛と思われる集団が歩いてきました。絡まれないよう気を付けないと……
私は見つからないよう脇道をこっそりと移動しすれ違おうとします。
「おい、ちょっとまてそこの獣。なぜ高貴な俺の前を通った!! 獣風情が!」
考えうる限り最悪の事態がおきてしまいました。
「ごっ、ごめんなさい! すぐ通りますのでどうか!」
「すぐ通る? 獣ごときが高貴な俺の前を通るだと?! ふざけるんじゃないぞ!!!!」
しまった! 変な風にとらえられちゃった! なんとか言い訳しないと……
「それは、その……そういうわけでは……」
「うるさい! いいからそこをどけっ、卑しい奴隷めが!」
奴隷?! 私たち獣人は奴隷なんかじゃない!!
ついかっとなった私は、剣を突きつけられているにも関わらず余計なことをくちばしってしまいました。
「わっ、私は奴隷なんかじゃないです! ただこの学校に通ってる生徒なだけで……「うるさいっ! 亜人など全て奴隷のようなもの! そんな奴隷ごときが誉れ高きグリード帝国の貴族である俺に口答えするなど許さんぞ!!」 きゃっ!」
貴族様はよりにもよって、差別が一番激しい国であるグリード帝国の貴族様だったようです。
後悔しても遅く、剣は無情にも私に迫ってきます。
ああっ、こんなとこで死んじゃうんだな……
私は目をつぶり、切られるのを待ちました。
しかし痛みはなかなか襲ってきません。
あれ、もしかしてもう死んじゃったのかな?
そんなことを考えていると声が聞こえました。
「君、大丈夫?」
「えっ? えっ? 私今切られそうに……あれ? あなたは?」
ゆっくり目を開けるとそこには、変な眼鏡をかけた私と同じくらいの年齢に見える華奢な少年がいました。
「君がなんか豚のようなものに切りかかられてたからさ、つい助けちゃった。もうちょっとこのままだけど我慢してね」
えっ、このままって……お姫さまだっこのままってこと?!
待つのよサリア、まずはお礼でしょ。
「はっ、はい。助けていただいてありがとうございます! ただあの方は貴族様なのであまり手出しはしないほうが……」
そうです、相手は貴族様。
手出ししてこの人にまで迷惑がかかってはいけません!
「はははっ、権力ならこっちも負けないから大丈夫だよ。そろそろ砂煙がはれるな、君名前は?」
権力なら負けない? 何故でしょう?
不思議に思いましたが名前を聞かれたのでそちらを優先しましょう。
「あっ、はい。私獣王国出身のサリアといいます! あなたは?」
「ん? 俺は……」
そう聞くと少年は若干困ったような顔をしましたがすぐ答えてくれました。
「俺はベル、オクタグラム学園に通うために試験を受けにきたのさ。それじゃサリアさん、しっかり捕まっててね」
「はっ、はい!」
少年……ベルさんはどうやら戦うようで、かけていた変な眼鏡を外しどこかに消し去りました。アイテムボックスかな?
そんな眼鏡の行き先についての考えや、貴族様が怖くないのかな、という疑問はベルさんの顔を見たとたん吹き飛びました。
かっ、かっこいい…………
ベルさんはまるで絵本に出てくる王子様のような顔をしていました。砂煙がはれた今、周りからも声が聞こえます。
「美しいっ……」
「きれいね……」
「いったいどこの誰だ? どこかの有名な貴族の子供だろうか……」
私は恥ずかしくて、ベルさんの顔を直視することができなかったのでずっと顔をそらしていました。
すると貴族様がなにかをいい始めました。
「お前は誰だ?! 獣人風情をかばうとは……」
「俺? 俺はベル、試験を受けにきたただの平民さ」
「平民だと?! 平民ごときが高貴な俺に歯向かうだと? 身の程を知れ! 炎よ、我が前に集まりてひとつの槍となせ、ファイアランス!!」
私は焦りました。
だめっ! まさか中級魔法を使うなんて! 私が何とかしないと!
しかしそれは杞憂でした。
「えっ? なにその恥ずかし中二ワード?! 俺ダンジョンにいるあいだ言わずにすんで良かった!! 無詠唱万歳だな、まったく……」
彼はそう小声で呟くと(何を言っているのか全然わかりませんでしたが)右手を前につきだしました。
そして驚くべきことにファイアランスを消し去ったのです。
すごい……! 防御魔法が得意な私でもあんな真似できない!!
彼は何者なのでしょう。
私はとても気になり始めました。
「たったこれだけか。誉れ高き豚さん! 自分を丸焼きにするのに使ったらどうだい?」
「なっ、何をー!!!!!!!!! 俺はグリード帝国の子爵の息子だぞ! 父様に言いつけてやる!」
! そうです、相手は貴族様。権力を行使されては平民だと言う彼では太刀打ち出来ません。
「ベルさん、逃げてください! 私が全責任を取りますから!」
初めて会った私にここまでしてくれたベルさんにはなんとしても逃げてもらわないと!
私は必死に叫びます。しかしベルさんはどこ吹く風というようにまったく気にした様子はありません。
「大丈夫だよ、サリアさん。そろそろあいつが……」
「そこのグリード帝国の者! 武器を捨てなさい。彼は私の身内のものです!」
声のする方を見ると高貴な雰囲気を纏う少女が立っていました。
「何だ貴様は! 俺はグリード帝国の「黙りなさい!」なっ……」
「こちらにおわす方はアルスラ王国第2王女、アルスラ=レイン様であらせられるぞ!」
王女様?!
とたんにグリード帝国の貴族様も含め、皆が膝をついていました……ベルさんと私以外は。
「もっ、申し訳ありません。ご無礼をどうかお許しください!」
「本当ならば私の身内である彼、ベルに手を出した時点で国際問題としたいところですが……この一件、なかったことにすると言うならば許しましょう」
「はっ、もちろんでございます。では失礼します、お前達行くぞ!」
そうして貴族様は、こちらをひと睨みしたあと去っていきました。
良かった、助かった……
私はひと安心しました。
それにしても……王女様と知り合いだなんてベルさんって何者なんだろう?
彼の正体が実は、新しく誕生したという魔王様本人だったとは……この頃の私には知るよしもありませんでした。
少し長くなりました。
次回は9日の11時頃更新予定です。
ブクマと評価ありがとうございます。




