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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第33章 森羅万象のコマンド
93/95

(1)

 語り疲れたコーラマバードは気がつくとその場からすっかり消えていた。

 気配も何も残っていない。


 いや、その場に残されているものが一つあった。水流で流されたはずのエライザが光りの中心に取り残されていた。


 3人はコーラマバードがたった今までいた場所をしばらく見つめていた。


 「俺は降りるぜ」


 「トルク・・・」

 サルナが唐突に結論を出したトルクににじり寄る。

 「いい・・の・・・」


 「こういうのはやっぱりよりふさわしい人間がやるべきことさ」

 「私のどこがトルクよりふさわしい人間だと・・・」

 「まあ、大体互角だけどな。見た目とかでは俺のほうが勝ってるがな」

 (・・・ムムムム・・・)サルナが腕を組む。


 「デキレースにはデキレースの結論があるのさ。俺は降りるぜ」

 トルクがアルを斜に見詰めニヤリと笑った。


 「見た目の話は承服できかねますが・・・ありがとう・・・」

 アルバドアンザールはトルクを見返した。


 『トルクコンカラットは相続の権利を放棄する』

 光の差し込む場所から空を見上げてトルクがその言葉を言い放った。


 見えない電撃となって世界中へ伝播していく。

 電撃は空を渡り雲を渡り、雨に載り・・・電撃は衛星まで届き、衛星を渡り地上に降り注ぎ・・・


 相続の放棄をトルクが宣言すると、一枚の紙切れが地上に繋がる穴から降ってきた。

 ひらひらと舞いながらひとつずつサインが浮かび上がっていく。コーラマバードのサインを筆頭に14人のマスター達のサインだった。


 14人のマスター達はコーラマバードの後継が決まるのを世界の何処かで待っていた。

 アルバドアンザールを4番目のマスターと認める書類。それは地面に落ちてからもサインが加えられ続ける。


 新しいマスターとなったアルバドアンザールはその場にいてもうその場にいなかった。


 異世界のマスター達と交信しているのか、眼は見開いているがトルクやサルナと同じ世界を見てはいなかった。

 陽の光を受けるかのように両手を広げ立ち尽くす。

 アルバドアンザール自身がワールドコンソールとなった姿だった。


 アルバドアンザールの瞳の中には膨大なコマンドが通り過ぎていた。

 森羅万象を司る5万語の神の言葉が右から左へ流れていく。


 静寂を破るように岩が砕ける音、崩落する音が坑道内を響き渡った。

 そして獣の咆哮が響き渡る。


 暗闇から側室にゆっくりと浮かび上がるエルメル。

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