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コーラマバードは一呼吸置いてから話し続けた。
恐らくこれが自分自身に仕込んだイベントの最後の作業だった。
[・・・私たちは200年前この世界を作った。そう、21世紀の初頭だった。
この世界は試作から数えて3番目の世界にあたる。3番目の世界は実験場として理想に近い。
この世界で人はいろいろなものを学んだ。
多くの学術は何億年先の未来を見ているがこの世界は数十年の単位までそれを引き下げた。
過去も、未来もほぼ人類の手中に落ちている・・・]
コーラマバードは世界の成り立ちを語りたかったのか、それとも自分の行ってきたことを語りたかったのか。
皆を見渡し続けながら語り続ける。
[・・・4番目の世界はまだ人の住む世界ではないが目的の理想に近づいている。なにせビッグバンから物凄い速さでシュミレートしているのだからな。
サイの目の順番でさえ、蝶の羽ばたきの結末でさえ、雨後の桶屋の利益でさえ・・・確実に確定する。
これからの人類は生まれてから一生の殆どをアナザーワールドで過ごすようになる。
そして人の数だけワールドが存在し、過去と未来へ向かう無限個のパラレルワールドが存在する。
完璧にシュミレートされた世界が・・・]
次第にコーラマバードを照らす光は強まり、その神々しさを増していった。語り口は人が想像し得る神格像そのものか。
[・・・リアルワールドが神の造ったアナザーワールドでないことを証明できるものは誰もいない。ならばアナザーワールドこそが本当に自由な世界だ。
ただ一つの懸案を除いて世界は同じ道を歩んでいた。
それはインスタンスから特異体が時たま発生することだった。
進化には必然な事象であるにもかかわらずシュミレートには多大な影響を、妨害を及ぼす。
1番目の世界は、試作の世界はそれで破綻してしまった。人間のパラダイムルール違反がそれの原因といわれている。
1番目の世界は狂気と破壊に満ちてしまった。
インスタンス自身が自分達の消滅を計ろうとした。
自己淘汰を始めたのだ。頽廃と堕落の末に。それはある重大な結論をもたらした。
なんと人間のパラダイムルール違反がアナザーワールドの進化を促していたと言うのだ。
我々の現実世界、リアルワールドと一番よく似ているのかもしれない。
もちろん神の存在を認める場合に限られるが。
アナザーワールドは現段階では古臭い世界だ。200年前の世界を模写し進化を禁止してきたのだ。パラダイムルールがその法律だ。200年もの間。
だがどうだ、明らかなる進化が発生し世界は舵取りを失いかけている。
IT革命の十数年後に立ち上げられたアナザーワールドはほぼそのままの姿を留めている筈だった。
4番目の世界が理論的に実証されたならばアナザーワールドにも正式に、しかも気づかぬうちに進化が許されるようになるだろう。
いや、アナザーワールドでこそ進化が必要となるのだ。人間がそのカルマを断ち切るための試金石として・・・]
世界の成り立ちを教科書で教えることはない。マスター達に口伝され続けるだろう。
コーラマバードはそれこそ世界思想を延々と語り続けた。次の後継者に語り継ぐべき言葉を。




