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「後継候補がやっと全員揃ったのです。今この場で。そして皆は、世界は誤解しています。コーラマバードの遺産は膨大な知的所有権だけではありません。この世界の、アナザーワールドの森羅万象を手に入れる、いや、背負わされるのです」
「全員揃ったんじゃなくて必然的に殺されて此処にいないんだろ。無駄に見るに耐えないクソイベントに巻き込みやがって。そもそもお前を後継者にするために養子にしたんだ、デキレースに巻き込まれた他人はたまったものじゃない」
「いえ、私が保証されていたのは後継候補に挙がることだけです。後継候補が一人では他の、13人いるワールドマスター達の承認が得られません」
「じゃあ、何なら今この場で殺し合いでもするかい」
「結界が無くなった今、私はこの世界で何もできません。ですがライフルを持っているだけ私の方が有利です・・・」
アルバドアンザールはニヤリとした。
「撃ちたければ撃てばいい。避けるけどね」
トルクも笑い始めた。
「お二人に言いにくいのですが、物理的に発生するワームホールは存在しません」
「なんだよ茶番に付き合わされたようなものか」
「いえ、アナザーワールドのマスターになるということはワームホールを発動する以上の力を持ちます。つまり後継者候補がマスターにならない事がワームホールの起動の条件です」
「だからセレクションを急ぐためにワームホールテロ予告を企てた」
「二か月以内にセレクションを終わらせるために」
「・・・でも悪いが与えられる知的所有権にも森羅万象にも興味がない」
「では何故ここまできたのですか。マスターになる事は究極の地位を得ることになると言うのに。あなたをコーラマバード探しに駆り出したのはアカデミーのチェアマンです。ですがあのチェアマンでさえコーラマバードの意を受けた推薦者でしかありません」
「大げさだ。よくよく考えれば種も仕掛けもないつまらん都市伝説でしかない」
本当は種も仕掛けもない都市伝説ほど怖いことをトルクはよく知っていた。
「では何故?わざわざ」
「何故ここまで来た?・・・何故だろう?」
「何故危険を冒してまでここまでやってきたのですか。意地みたいなものですか」
「何故だろう。うーん、何故だろう。強いてあげれば・・・、強いてあげれば・・・、スーパーポジティブな彼女に捕まってだなぁ・・・」
「サルナさんですか?よく判らないなぁ。弱みでも・・・?・・・そういうことですか。まあ、いいでしょう」
「ちょっと待て、良くない。なんか誤解を招くような、間違った解釈で納得するのは止めてくれ」
「お二人の関係は詮索しません」
「十分、脳内で詮索してる顔してる」
「あらかじめ言っておきます。後継候補のセレクションイベント発動の条件は生存する後継候補がコーラマバードの前に全員集合することです。そして後継者以外の後継者候補が相続を放棄する必要があります」
「つまり俺に放棄を宣言しろと」




