(3)
アルバドアンザールはコーラマバードから聞いていた。
放射性崩壊を数億倍に促進する。
フェルムラグトキシンを吸収し、結晶化そして分解を行う。
まさに時代の錬金術と呼ぶに相応しい所業。
ランタンが無くてもエレメントの発光で十分に明るい空間。
そのエネルギーと魔力は尋常ではない。
決して触ってはいけない。見つめてもいけない。
見つめすぎると心を奪われ触ってしまう。
触った途端恐らく殆どのものは炭化してしまう。
だが莫大な力をもった多面体もフェルムラグトキシンの濃度も下がり、一世紀以上の役目を終え、いつ崩れ去ってもいい状態だった。
その力が衰えるとともに負のエレメントのパワーも釣り合うように減衰し、エルメルに破られるまでに低下していた。
やり方もコーラマバードに聞いていた。ご丁寧にハンマーまでが置いてある。
打ち込むべき楔はすでに挿すべきところに挿してあった。
文明の発祥を示す壁画の中心。全部で4つ。
3つ目の楔が打ち込まれてもたいした変化はなかった。もともとあった亀裂が広がった程度でしかなかった。
4つ目の楔を打ち込んだ瞬間。
「だめ・・・」エライザが短い声を上げるがもう遅い。
大きく岩盤が裂ける甲高い音がする。
「あっ・」と思った瞬間もう遅かった。(・・・、やってしまった・・・)
何がどうなるかコーラマバードに聞いていなかったわけではなかった。
岩盤から勢い良く水が噴出し、身体の自由を奪う。病床のコーラマバードが話していたことを思い出した。
渦に巻き込まれ流されていくエライザ。
表面まで流されるアルバドアンザール。
潜ってエライザを捕まえようとするが浮力に押し戻される。
互いに伸ばした手は繋がることはなかった。
只の水ではなかった。
無味無臭だが異様に比重の大きい水。
まず人間が沈むことはないような水?、水のような液体。
人為的に配合され、地下で何十分の一にも被圧された液体。エレメントの機能を停止させる液体。
それ自体も僅かな光を帯びている。
アルバドアンザールは水の先頭に浮かびながら坑道を地上に向かって押し出される。
トロッコに乗ったままのサルナは浮いたトロッコごと流された。
流れに逆らわなければ然程苦にならない。
サーフボードも必要ない。十分浮いていられる。
問題は何処まで流されるかだが。




