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大きな坑道の重厚な青銅門扉。
「いい趣味してるな」
「使えない合金があるため青銅で造られています」
「いや、そうじゃなくて、なんでもかんでも厳かに造れば他人がビビると思ってるな」
「そうかもしれませんね」
アルバドアンザールが思わず吹き出して口に手を当てる。
名も知らぬ青銅の偶像が門の中心で手を結び、同じく青銅の天使と鳩が数多飛び交う。
一体の偶像は目を見開き、もう一体は目を閉じ、左右から手を結ぶ。
そして人間の膝下の位置にキーユニットが取り付けてある。
長い間誰も触れていないキーユニットは土埃にまみれていた。
エライザがバックパックから抜け出すと土埃を払いキーユニットに手を当て、次いで目をかざす。
名も知らぬ偶像が手を放し、重厚な門扉は軋んだ音を発てながらゆっくりと解放された。
巨大な坑道が口を開ける。
小さなライトが天井に疎に連なって奥まで点き始めた。
アーチに組まれたチタン格子。
格子間を埋めるレジコン。
どれくらい深いのか想像もつかないほどの深淵が三人を待ち受けていた。
坑道は大型トラックが楽に通れるだけの広さがある。
端には貨物用に軌道があり。使い込まれた機関車のない涙型トロッコが一台放置されていた。
「先に行ってくれどうせ直ぐにエルメルが追ってくる」
トルクはサルナをトロッコに乗せる。
サルナ自慢のショルダーバッグをトロッコに投げ込んだ。
そしてトロッコを押し始めるトルク。
アルバドアンザールも並んでトロッコを押す。
「どうするつもりですか」
「行ってくれ。ブービートラップでもと思ってね。簡単だから直ぐに追いつくよ」
「いつもそうですね」アルバドアンザールは口元を緩め含みを持たせた。
「昔からハイリスクのスタンドプレーが性分なんだよっ」トルクは力を入れてトロッコに惰性をつける。
「分かりました。奥で待っています」
アルバドアンザールは勢いのついたトロッコに飛び乗った。
今は使われていないトロッコの軌道は天井の小さなライトに誘われ暗闇の中へ延びていた。
エライザが持つランタンがなければ足元の軌道さえ見ることができないであろう暗闇。
時代にしてアナザーワールド創生時代に掘り始められ、早々に見切りをつけられた廃鉱山。終末兵器の実験場に利用された忌むべき空間。
コーラマバードが結界を張ってから時間の流れが止まってしまった空間。いや、時以外を隔離した空間というべきか。
長い間トンネルの勾配なりに深部へと下ったトロッコは水平に近づいたところでゆっくりになり、遂には下るのを止めた。
物語もそろそろ佳境に入ってまいりました。
畳みかけていきます。
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