(4)
エルメルのよろけて下がった右足はギリギリ鳥モチの上にあった。
「引っ掛かりやがったな。結構強力らしいぜ。それ」
実のところまったくの偶然でしかなかった。
「おのれっ、おのれっ、なんだこれは」
もう持ち上がりはしない。
暴れてバランスを崩し、左足も鳥モチに捕らえられた。とうとう膝を折る。そして左手をついた。
トルクの特殊警棒が追い討ちをかける。
斜め下から思いっきり振り抜いた特殊警棒が下顎を捉えた。
返す流れで打ち下ろす。左右から渾身の力で打ち散らす。
粉々にならないのが不思議なぐらいに。
「やったか?手間掛けさせやがってっ」
トルクの鼻息は荒い。
エルメルは口の端から赤い血の筋を垂らした。両膝と両手をつき、意識を失っているように動かない。
「危ない!」
サルナがトルクを庇う。
動かないエルメルが急に首をもたげ口から赤い液体を勢い良く吐き出した。
トルクに体当たりしたサルナの足に赤い液体が掛かる。
サルナは左足に焼けるような痛みを感じのたうち回る。強烈な痛みに満足な叫び声すら上げることができなかった。
痛みが引くと同時に視野が狭まり意識が遠のいていく。
エルメルはゆっくりと首を持ち上げると声にならない雄叫びを上げる。足を床ごと持ち上げようとしていた。
鈍い音と共に石の床にヒビが入る。
「一度ならず二度までもここまで追い込まれることは未だかつてなかった。楽しいぞ。さすが創造主の後継候補だけのことはある」
「この血はなんだ。何をした」
「もう遅い。毒だ。苦痛で意識も保てまい。60分で発症し、爆発的に空気感染する。その数日後死に至る。かつて都市一つを壊滅に追いやったサルバドール財団のオーソドックスウィルスだ。」
「それだけ聞けば充分だ」
トルクは再度特殊警棒でエルメルの顎を振り抜いた。
煙幕を吹き飛ばすほどの雄叫びと供にエルメルが暴れ始める。床や、柱や家自体が崩れ始める。
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気を失ったサルナを背負ったトルクとアルは裏から家を抜け出ていた。
アルバドアンザールはライフルを肩にかけ、エライザとスザンナを詰め込んだバックパックを背負っていた。
結界の中で星が瞬いている。ずり山の丘を越え、坑口までの岩道を進む。
「この領域の結界を解除したい。出来るか?」
「ええ、そのつもりです。でもなぜ、今すぐですか。直ぐには・・・」
「外に助けを呼びたい」
「分かりました。坑道の一番奥です。結界の中枢があります。急ぎましょう」
アルは入り口がランプに照らされている坑道を指差した。




