(1)
そこは嘘のように普通の空間が広がっていた。
結界を通り抜けるもう一つの方法。それは空間を結ぶトンネル。
つながった二つの空間は空間の歪みに沿って木々を舞い上げるほどの突風を発生させた。
「急げ、通るぞ、エネルギーを消費すれば直また活動を始めるはずだ」
24人目は体温を吸い取られかろうじて息は有ったが動けなくなっていた。
結局突風に逆らって結界を通り抜けたのはエルメルとたった6人の黒服だった。
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明け方近く、サルナがソファでうとうとし始めたころ・・・
♧A、♡A、♢A・・・トルクが札をオープンする。
「まあ、あなたは子供相手に大人げないことね」
「勝負に大人も子供も関係ないよな。裾から零れたヤツはなんだよ」
「うそ、うそ・・・ばれる筈は・・・」
エライザが裾に手をいれたりスカートをまくり上げたり、足元を探したり服のポケットを叩いたりする。
「羽が生えて飛んで行っちまったかな」
トルクはエライザが忍ばせていた札が手違いで滑り落ちて図らずも棚の下に滑っていくところを見逃していなかった。
「なかなかやるわね・・・重ね重ね子供相手に」
「しゃべり方が既に子供じゃないだろ」
「未だ100歳ちょっとの乙女よ。とてもくやしいわね」
「まだまだ脇が甘いな・・・」
「あらそう、じゃあ。これは何かしら」
エライザがトルクサイドのテーブルの下に張りついていた♤Aを剥がしてテーブルに放りだす。
「うそ、うそ・・・ばれる筈は・・・」
「羽が生えてテーブルの下に止まっちゃってたのかしら」
「お互い様だろ。イカサマは得意じゃないんだ」
「お互いに脇が甘いわね」
トルクが外に気配を感じる。
大きすぎる星明かりだけの静かな結界の中で響き渡るかすかな殺気。
「何か来ている」トルクは立ち上がり窓に寄る。
「どうやら結界を通過した者がいるようですね」
寝室に入ったはずのアルがいつの間にか戻っていた。
「この空間を囲む結界は6つの琥珀のエレメントで構成されています。エネルギーレベルをフラットにするためには相当のエネルギーを必要とします。本来無傷で入ってこれるはずはないのですが・・・」
「ゲームを投げ出したら負けよ。トルク」
あからさまに不機嫌な顔をつくるエライザ。
「今回は負けといてやるよ」
「そうなの、ありがとう」
続けて満面の笑みを浮かべるエライザ。
「武器はある?」
サルナがソファで腰を浮かせて臨戦態勢を整える。
「ライフルが1丁だけです。プラスチックであまり威力はありませんが」
「威嚇にはなるわ。あなたが持っていてください。大丈夫、任せて。今回は色々持ってきてるから」
先回のような失態を犯すわけには行かない。
サルナが大きく膨らんでいるショルダーバックに目をやってにんまりとした。
何故かわからないが突然悪寒が走るトルク。
(なんだ、なんだ、急に鳥肌が・・・)
窓の外で何かが光った。
「伏せて!」
サルナが小さく短く叫ぶ。




