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暗闇だった足元に明かりがゆっくりと上から順に螺旋に点く。
足元はなだらかに下り、すり鉢状の採掘場は悠に数キロの半径を持つ。
明かりが螺旋の最下段まで灯り終わるとその全貌が浮かび上がった。
「足元を見てください。これが元凶です」
「昔は100t積めるダンプトラックが常に螺旋を行き来していました。もう廃れていますが」
「すごいな、向こうが見えない」
「あの中心が実験坑道です。延べ十数キロに渡り張り巡らされた坑道の入り口です」
「爆弾の・・・」
「最初の目的はね。でもそうはならなかった。人類史上最もおぞましい・・・MUAのドクター・コウが全長100kmのコライダーで偶然に創った原子・・・」
「緩慢な汚染物質・・・」
「さすがですね。そうです。科学者の間でひそかにフェルムラグトキシンと最近呼ばれ始めたものです」
「テストフィールドに閉鎖された鉱山施設を使ったってことか」
「そうです。数ミリグラムが600ミリの距離で人体や地球を構成する同種金属と緩慢な連鎖反応を起こします。そしてフェルムラグトキシンを生産し続けます」
「どうシナリオされているんだ。大体予想つくけど」
「世に出た場合のシナリオは・・・」
「誰かが悪用した場合」
「大まかには一か月程度で人の血液が流れなくなります。それとマントルに拡散した場合、20年程でマントルの流れが止まるとシュミレートされています」
「ずいぶんゆっくり・・・って言っていいのかしら・・・」
「元は普通の実験坑道があるだけだった。時の為政者と科学者は甘く見ていた。汚染物質の除去と濃度低下の為にこれだけのすり鉢を掘ったってことか」
「そうとも言えます」
「そして今でも薄めてわざわざシャトルで放出している。あと寸でのところで人類初の有人輸送を成功する筈だった軌道EVまで壊してしまったから」
「このすり鉢は連鎖反応が収束するために必要な形状です。姿勢が安定していれば一定の角度を超えて拡散しません。収束に向かいます。そしてこの結界は軍事利用を恐れてこの広大な場所を隠しています」
「コーラマバードがずっと。手管に手管を重ねてね」
「すごいわね」
サルナが広大な採掘場と夜空をゆっくりと見回す。
フクロウがゆっくりと星空に旋回した。
「今日はもう遅くなりました。実験坑道は明日ご案内しましょう。コーラマバードから直接話を聞いたほうがいいと思います」
「ちょっとまって。コーラマバードはさっき死んだって・・・」
「死んでしまったのに話が聞ける?」




