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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第25章 緩慢な汚染物質
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(1)

 「僕はトルクこそが栄誉を授かるに相応しかったと今でも思ってる」


 アルバドアンザールは立ちながらコーヒーカップに口をつけ一拍置く。


 「冗談だろ、俺がリーダーだったらチームが何度全滅してたかわかりゃあしない」

 「かもしれませんね」ゆっくりと微笑むアルバドアンザール。

 「はいはい」


 「忘れていませんよ。授与式にみんないなかったことを」

 「しっかり覚えてるな」

 少しばつが悪そうなトルク。

 「それぞれ事情があったのはわかりますが振り向いたらみんな居なくなってたのはさすがに血の気が引きました」


 「なっ、えっ、どうして。なんで居なくなったんですか。おめでたい席に」サルナが当然の疑問を呈する。

 「遠目で見たプリンセスがユニーク過ぎたってことで良かったんでしょうか」

 「そんなことで・・・」


 「俺はそんなこと言ってない。ゲーム前からエイシンジェーンが言い寄られて大分困ってた。まあ、いろんな意味で潮時だったってことさ。みんなそれぞれ違う道を歩んでる」

 「そうですね。そして僕はコミュニティを抜けて直ぐにアナザーワールドのフォースマスター、コーラマバードの養子になったんだ。世を捨てた変わり者の養子にね」


 「何で養子なんかを。だって200年も独り身だったって聞いてます」

 「その真意は図りかねますが・・・」

 「ホントは知ってたんだろ」トルクが見透かしたようにつっこむ。

 「ですね。ご想像の通りだと思います」


 「そうだ、私たちはそのコーラマバードを探しているんです。その為にトルクに人探しをお願いしたんです」

 「サルナさんにはご迷惑をお掛けしたみたいですね。詳しくは承知していませんが」

 「コーラマバードからワームホールテロの予告が届いたんです。彼は今どこにいるのでしょう」


 「コーラマバードはもういません。二ヶ月前に埋葬しました。残っているのはコーラマバードの意思だけです」

 「死んだ?」

 既に死んでいる。

 サルナは予想外な展開に目を見開いた。

  ・

  ・

  ・

 家から外に出て小高い丘を登る。

 3人の後をついていく頬の赤いエライザ。

 ランタンを右手に持ったアルを先頭に暗闇の中を歩いていく。


 「暗くて申し訳ないですが・・・足もとに気をつけてください」

 丘に昇り詰める三人。丘を駆け上がる突風がサルナの髪をなびかせる。顔を伏せ突風を避けるトルク。


 「星がきれいね」

 上空を風に乗りながらゆっくり旋回するフクロウ。

 フクロウが夜空を眺めるサルナに急降下する。思わず頭を庇って短い悲鳴を上げるサルナ。

 「このならず者のオウルどもめ!」エライザが石を投げつけるが当るはずもない。


 「・・・」エライザの豹変ぶりに不意を突かれて目を点にするサルナとトルク。

 (エライザは結構な辛口なんです・・・)小声でサルナに呟くアルバドアンザール。

 「聞こえてるわよ」小石をアルバドアンザールに投げつけるエライザ。


 丘の上でアルバドアンザールは立ち止まった。

 頬の赤いエライザがポケットから出したデバイスのスイッチを押す。

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