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「人の心配してると足元すくわれるぞ。そっちこそ大丈夫か」
トルクは引きずりながらも倒れない。
「余計なお世話よ」
脹脛に喰いついたストレイドッグを片手で握り落とすエイシンジェーン。
「向こうが疲れるか、こちらのメンタルが折れるか」
奥歯を食いしばり一匹ずつ振りほどいていく。一匹の足が地面から浮き上がり飛ばされる。
今度は二匹同時に地面から浮き上がり、足を刈られて転がっていく。
いつの間にか10匹余りが一度にトルクに組み付いていた。
それでもトルクは一向に力が抜ける気配が無い。岩に叩きつける。地面へ投げ飛ばす。一匹また一匹と空に舞っていく。
タックルを浴びながらトルクは1キロ以上進んでいた。
進む後には動けなくなったものたちが次々と転がっていく。
「くそっ、オーナー共は何処にいる」
肉弾戦に持ち込みたいエイシンジェーン。
「二時の方角、丘の上にいる。三時の方にも。遠いな」
トルクはとりわけ格闘が得意なわけではなかったし腕力も強いほうではない。ただ格闘の力学は何となく知っていた。
格闘はバランス感が命。
相手の攻撃エネルギーをそのまま相手に返す。少ない自分のウエイトを効率的に使って相手を倒す。
自分自身のウェイトとスピードという諸刃の剣を効率よく、間違えることなく使う。
そしてそのトルクがバックパックのゴーレムを起動する。
立ち上がるゴーレムにストレイドッグが距離を取る。
「凄いな・・・・・。さすが最有力チームのサブだ」
巨石に立ち指示を出していたチームラングレーのリーダー達は観戦模様だ。パロットの映像を見ながらトルクが10匹余りと組み合っている姿にあろうことか見惚れていた。
「だがリーダーには向いてない」
「・・・どうメンタルを鍛えたらあんなに・・・一度に相手が出来るんだ・・・しかもゴーレムを動かしながら」
トルクを囲むストレイドッグが20匹に達した頃、さすがにトルクは力尽きようとしていた。
(やばい・・・こりゃかなりやばい・・・か・・・)
トルクは背後のプレッシャーが急に軽くなるのを感じる。
「待たせたね」
金色のガーディアン・ベアがトルクの負荷を一枚ずつ剝がしていく。
「おっ、遅かったじゃないか。終わったころに」
「おかしいですね未だ五割くらいでしょうか。残ってますよ」
「残しておいたんだよアルの見せ場の為に」
「それはありがとうございます。さっきアンドジョンはサンドノを連れて前進を抜けました」
「それでわざわざ戻ってきたのか。ご苦労なこった」
「そっちこそ苦労してると思ってね」アルバドアンザールが微笑む。
「まあな・・・、正直助かったぜ」フッと顔を緩めるトルク。
・・
・・・・
・・・・・・
「まずいぞ、フラミンゴの連中が谷を抜けたぞ。見失っちまう。エセックスに出し抜かれるぞ」
響き渡る好転を知らせる叫びか・・・。
(助かったか?)
ぼろぼろになったエイシンジェーンと肩を組み、トルクとアルバドアンザールは崖を上る。
4番フラグへのショートカット。血を垂らしながら。
中やってくるプロキシや、血の匂いを感知したエージェントを薙ぎ払いながら。
4番フラッグでチームに合流したのは分かれてから18時間が経過していた。




