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「何を言い出すんだトルク。死者が出ればそれは勝利じゃない。たとえ勝ったとしても」
「だがフラミンゴを差し置いて我先に4番フラグをとりには行けない。裏切りが露呈するからな」
「合議が破綻すれば振り出しに戻る・・・ですね」
「奴らは紳士協定を破ってフラミンゴを窮地に追い込んだ。フラミンゴが白旗を揚げるのは時間の問題だと思っている。今考えているのはどのチームがNO.1になるかってことだ」
「一枚岩じゃないってことですね」
「その証拠に見てみろ、隠れてるつもりらしいが微妙に距離をとって陣取っている。ちょうどチームの数だけ。配置は2:8で前進の方が進みやすい。後進は俺とエイシンが止める。なんでもいい。一つチームを落とせば逆転する。オセロのようにな」
「勝率が15%の内に駆け抜けるってことですか」
「その通り。挟み打ちされると厄介だ。まず後進が派手に進行する。そしてここがスパイスだ・・・派手に進行と逆戻りを繰り返す。予想外のアクションに長考する傾向はAIも人間も同じさ」
「負荷が集中しすぎる。信用してない訳じゃない。やり切れるんですか」
「大丈夫だ。その間に前進を突破しろ。なるべく一点突破で。チームを守るにはそれしかない。バラけると人数が少ない分つらいぜ。4番フラッグの場所は覚えた。直に追いつく。いいよな」
「仕方ない。わかった・・・。だが時間が掛かりすぎるようなら白旗を揚げる。一人でも欠けたらそれは負けなんだ。いいね」
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キャンプホールドを解いたチームフラミンゴ。前進グループを残すとトルクとエイシンジェーンは後進し始めた。
小柄なトルクに比べエイシンジェーンは身長195cm、体重130キロの巨漢女戦士。しかしトップスピードは時速30キロを優に超える。
エイシンジェーンは格闘をよく知っていた。エージェントマッチより肉弾戦を得意として間違いなく屈指の武闘派。手負いであることを感じさせない。
皆エイシンジェーンと対峙することを恐れる。そして手負いであることに誰も気づいていない。
「逃げ出すなら今のうちだ。膝を着いたら終わりだよ」
ストレイドッグの群れを前にエイシンジェーンが言葉を投げる。
「膝を・・・着くわけないだろ。まかせろよ。リンボーダンスならそこそこ得意だぜ」
両腕を前に組んで片膝を深く曲げるトルク。
「それってコサックダンスじゃないの・・・」
「いや・・・・・・いや・・・知ってたけど・・・」思わず尻を着くトルク。「・・・やば」
「言ったそばから・・・」
暫くにらみ合っていたストレイドッグが一斉に襲い掛かる。
「ほら見ろ作戦通りだぜ」
予想通りというかそれともわざと引き付けたのか、ストレイドッグの攻撃はトルクに集中した。
まずタックルで潰しに来る。一匹、また一匹と下半身に喰い掛かってくる。止まったら多勢に無勢、最後だ。
トルクは軽々とそれを剥がす。タックルを受けるとその為にスピードが落ちる。ついにはタックルで下半身が埋まってしまった。
巨漢のエイシンジェーンも数匹にまとわり付かれ格闘を始めた。エイシンジェーンを倒して名を挙げたい者達と。
「トルク大丈夫なの」
エイシンはトルクに得体の知れないものを感じていた。付き合いは長いがまじまじとトルクの格闘を見たことがない。
普段はサブとして表に出ることは無い男。判断力とフィジカルがそこそこあるのは知っている。だが正直底が知れないとも思っていた。
ここにきて一番リスクの高いスタンドプレーを買ってでたトルク。
エイシンジェーンは格闘しながらもトルクを見ていた。




