(1)
トルクはビッグシューターを否応なしに思い出していた。
まだトルクが社会と共に生きていた時代。
社会と決別する前のトルク。
トルクとアルバドアンザールはビッグシューターで通算3度オレンジ色のチャンピオンジャケットを着た。
窮地に追い込まれても敗北を認めるのが嫌で戦い続けた。
社会は勝手に勝負のステージを作り、名誉や責任という名の強制力と同調圧力で人をステージに上げる。
ステージから降りることは自由だが、そのステージから去る人を社会は敗者と呼ぶ。
トルクはたまに考える。敗北を認めることができたならば今頃違う生き方をしていただろうと。
《フラミンゴはホウイされていル。フラミンゴが勝ち抜けるカクリツは15%まで急コウカした。このままいけば3日後には1%までテイカする》
ゴーグル越しにホーネットのメッセンジャー・ゴーストが三人に話しかける。
メッセンジャー・ゴーストは空洞のような目と口をしている。風になびくボロを纏い、足があるのか無いのかも定かではない。
黒い720度ゴーグルをした三人が岩を背にもたれ掛かっていた。
「何処かへ行ってしまえ。バカヤロー」アンドジョンが毒付く。
「なぜそこまで確率が下がるんですか。メッセンジャーはどこに属していても質問に嘘はつかないルールですよね。答えてください」アルバドアンザールが問いかける。
《フラミンゴ以外の8チームは既にシンシ・キョウテイをハキしてイル。ホーネットを中心にドウメイを組み始めるのはジカンのモンダイだ。フラミンゴはコリツするダロウ》
「諦めろということでしょうか。ここまで来たゲームを」
《リーダー・アルバドアンザールの理解の通りダ。このまま続ければムゴたらしいサイゴを遂げることになるダロウ》
「そう言って脅して来いって言われたのかよ」
《そのとおりだ》
「イラつくほど正直だな」
「何処で待ち構えているんですか」
《この先の4番フラグへ向かうまでにガリーで50匹のストレイドッグがフラミンゴを襲ウ》
「50匹も・・・」
「8チームで一人2匹操るとすると80か。いい線いってる」
トルクが指を折る。
「白旗を揚げたほうがいいでしょう。致命的な犠牲を払うことになります。プロキシ・ストレイドッグは容赦しない」
「やめてちょうだい。ここまで来て諦めるようならゴールして死んだほうがましよ」
足を引きずったエイシンジェーンがサンドノに肩を貸しつつ裏から現れた。
エイシンジェーンとサンドノは敵と競っている最中に尾根から滑落してサンドノが動けなくなっていた。
「仮想双方向複合現実の中で喰われる。いや、実際に喰われるに等しい。大体が致命的な精神異常を来す」とサンドノ。
「もって5分だな。致死者になる。何人も見てきた」




