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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第22章 アルバドアンザール 
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(2)

 果たしてパスワードは当たっているのか。それともはずれか。


 フィールドが完全にボールで埋め尽くされ真っ白になった後人影が浮かび上がった。

 人影はドットが荒すぎてモザイクのようになっていた。確証は持てないがトルクはその人物に見覚えがあった。


 端正な顔立ちの美青年。コーラマバードに見いだされ、養子となった青年。

 次第にモザイクは波が収まるように端から消えていった。


 若干面影は変わっていたが間違いなくアル。アルバドアンザール。

 その人物はしゃべり始める。


 「やはり君だったのか。少し痩せたかい。久しぶりだね。ガンジス。いや、トルクと呼んだほうがいいのかな」

 「懐かし名前だろ、アル」


 「忘れたことはないよ。実は探していたのは僕のほうさ。会いたかったよ。僕は君ほど人を探す能力に優れていないからね。探してくれるのを待っていたよ」


 トルクは予想外のアルバドアンザールの言葉に戸惑っていた。

 なぜ自分をアルが探そうとしていたのか?。


 そしてトルクは戸惑いを隠そうとしていた。こちらが戸惑いを見せれば会話はアルのペースになっていく。昔からアルの小利口な物言いがあまり好きではなかったからだ。


 「どうすればいい?」

 「少し困ったことがあってね。よく解らない人達に結界を囲まれているんだ。出向こうにも出られない状況でね。恐らくレイヤの縁を感知して入り込もうとしている。どうやってるのか解らないのだけれど」


 恐らくそれはエルメルだ。レイヤを根城にする奴なら有り得る事だった。


 「多分、エルメルという殺し屋です。すごく凶暴です。気をつけてください。あっ、初めまして、私、内務省のサルナ東郷です」

 「やあ、こんにちは、アルバドアンザールと言います。トルクを導いてくれて感謝します」

 「いえ、それより気を付けてください」


 「結界ならば大丈夫です。そう簡単に結界の中には入ってこれません。ここは100年以上生き永らえた結界の中です。時間は古臭い結界発生装置にある種魔力を生じさせています。十分な時間稼ぎになるでしょう」


 「私たちコーラマバードに会いたいんです。コーラマバードにも会えるでしょうか?」

 「会えるかも知れませんが会えないかもしれません」

 「・・・」トルクがアルをあまり好きでない理由はこういうところだ。


 「私は結界から出て行けませんがお二人にパスを発行しましょう。唯の設定でしかありませんが。その場所から東北東の方角へ真っ直ぐ進んでください。ある場所を境に結界が包んでいることがわかるでしょう。お迎えにあがれなくてすいません」


 アンティークピンボールは急に光を失い始めた。

 フレームは酸化色に変化していく。


 ガラスにひびが入り、砕け散る。最後は瓦解してしまった。

 それと同時にアンティークピンボールに支えられていた燃え殻たちが崩れていった。


 あたかも火災の中で燃え尽きたかのように。

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