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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第22章 アルバドアンザール 
66/95

(1)

 二人は夕方、燃え尽きたバーの前に立っていた。


 燃えて倒壊した柱、所々が炭になって転がる梁。溶け落ちた屋根。砕けて焦げた硝子。消えないガソリンのにおい。

 丸一日束縛した警察にはお引取り願った。

 

 トルクはある結論に達していた。

 (やはりこのバーだ。何か見落としているとすれば)

 燃え尽きたバーににじり寄るトルク。そして瓦礫によじ登る。必死にバーの構成を思い出していた。


 (あれだ。きっと。あれしかない)

 瓦礫と炭の山を掘り始めた。サルナも掘り始める。


 (音が聞こえる・・・)


 「音が聞こえる。何か音が」それは低く、通電する音。微かにトルクとサルナの耳に聞こえた。

 音のするほうを尚も掘り続ける。

 トルクは興奮からか、わき腹の痛みも感じなくなっていた。


 隙間から光が洩れた。確信に変わった。

 難しいことは無い。そうだ、難しいことは何もない。


 それはアンティークピンボール。ガラスが仄かに光り、しかも嘘のように無傷。

 フィールドではボールが音も無く跳ね回っていた。


 この機械もまたイベントキャリア。


 [EXTRA MODE;MAINTENANCE

 ガラス面にモードを求めるプロンプトが既に出ている。


 アンティークピンボールはバーの婦人が役目を終えた瞬間からイベントに入っていた。イベントがアンティークピンボールを炎から守っていた。


 「これは何?」

 「メンテナンス用のモード選択プロンプトさ。この手の物は大体昔からメーカー毎の決まった文字を入れるんだけど・・・」


 右のフリッパーを押すとトグルするMAINTENANCEとEXITとMESSAGE。

 [EXTRA MODE;MESSAGE

 [EXTRA MODE PASS W IN;


 「パスワードみたいなものがいるのね」

 右のフリッパーを押すとアルファベットがスクロールする。トルクは緊張していた。


 (何かヒントは無いのか?何度間違えられるんだ?)

 入る言葉は一つだけ。その言葉はトルクの頭にはっきりと浮かんでいた。

 「マダムに教えてもらっただろ」

 「そうか、やっとあれね」


 こ・れ・だ!

 HIDDEN UNIVERSE

 (さあ、宇宙を語り合いたいんだろっ、こいよっ!)


 フィールドとスコアボードから薄い光が立ち上がる。

 覗き込むトルクとサルナの髪が光にたなびく。エキストラボールがフィールド上部から降注ぎ、フィールドを埋め尽くす。


 スコアが物凄い勢いで回転し始める。

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