(1)
二人は夕方、燃え尽きたバーの前に立っていた。
燃えて倒壊した柱、所々が炭になって転がる梁。溶け落ちた屋根。砕けて焦げた硝子。消えないガソリンのにおい。
丸一日束縛した警察にはお引取り願った。
トルクはある結論に達していた。
(やはりこのバーだ。何か見落としているとすれば)
燃え尽きたバーににじり寄るトルク。そして瓦礫によじ登る。必死にバーの構成を思い出していた。
(あれだ。きっと。あれしかない)
瓦礫と炭の山を掘り始めた。サルナも掘り始める。
(音が聞こえる・・・)
「音が聞こえる。何か音が」それは低く、通電する音。微かにトルクとサルナの耳に聞こえた。
音のするほうを尚も掘り続ける。
トルクは興奮からか、わき腹の痛みも感じなくなっていた。
隙間から光が洩れた。確信に変わった。
難しいことは無い。そうだ、難しいことは何もない。
それはアンティークピンボール。ガラスが仄かに光り、しかも嘘のように無傷。
フィールドではボールが音も無く跳ね回っていた。
この機械もまたイベントキャリア。
[EXTRA MODE;MAINTENANCE
ガラス面にモードを求めるプロンプトが既に出ている。
アンティークピンボールはバーの婦人が役目を終えた瞬間からイベントに入っていた。イベントがアンティークピンボールを炎から守っていた。
「これは何?」
「メンテナンス用のモード選択プロンプトさ。この手の物は大体昔からメーカー毎の決まった文字を入れるんだけど・・・」
右のフリッパーを押すとトグルするMAINTENANCEとEXITとMESSAGE。
[EXTRA MODE;MESSAGE
[EXTRA MODE PASS W IN;
「パスワードみたいなものがいるのね」
右のフリッパーを押すとアルファベットがスクロールする。トルクは緊張していた。
(何かヒントは無いのか?何度間違えられるんだ?)
入る言葉は一つだけ。その言葉はトルクの頭にはっきりと浮かんでいた。
「マダムに教えてもらっただろ」
「そうか、やっとあれね」
こ・れ・だ!
HIDDEN UNIVERSE
(さあ、宇宙を語り合いたいんだろっ、こいよっ!)
フィールドとスコアボードから薄い光が立ち上がる。
覗き込むトルクとサルナの髪が光にたなびく。エキストラボールがフィールド上部から降注ぎ、フィールドを埋め尽くす。
スコアが物凄い勢いで回転し始める。




