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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第21章 死か付与か 
65/95

(3)

 「私はね・・・そうだ、私の話も聞いてくれる」

 「ああ、いいよ」


 「私はね、色々なことがやりたかったの」

 サルナが何かを思い出したかのように話し始めた。


 「両親はまだ若いけれどアンカレジで老人のような生活をしてるわ。今でも一緒に暮らそうって連絡が来る。でも私はそこで一生を過ごしたいとは思わない」

 「だな、無理だな」


 「失礼ね。この世界には歴史が着々と作られているけど進むべき未来はきっと無いわ」

 「歴史じゃないだろ。作られてるのは都市伝説じゃないのか」

 「呆れた。なんでも知っている体ね」


 「ああ、知らなかったと思うけど実は都市伝説マニアだからな」

 「知ってるわよ」

 「あれ、いつ分ったんだろ」トルクが人差し指を空に向けてくるくると回してニヤリと口元を曲げる。


 「まあ、平凡な生活も私には向いていない。与えられたキャリアパスと演出された艱難辛苦。与えられた娯楽に熱中できない。スポーツ観戦や、管理された映画とアトラクション。古典娯楽はみんなR-45。世界は人間を子供扱いしている」


 「長生き出来ない性分だな。サルナさんはよ。ローグランと比べたらまるでおとぎの国か神様の国だ」

 「そうなの・・神様の国ではね、愛と勇気と友情と。そんなものばかり」


 「たぶん成功体験だけで本当の意味での挫折もない」トルクは知った風に呟いた。

 「すべてが愛と勇気と友情だけで解決できる世の中じゃない。世界が理不尽だって事をみんな認めたがらない。そしてそれを子供たちに教えない。だから戦争すら終わりはしない」


 トルクはサルナの言葉に違和感というかちぐはぐなものを感じた。

 だが特にツッコむ気もしない。トルク的にはうすうす気づいていたことである。トルクのよく知るこの世とトルクの知らないあの世がごちゃまぜになっている様について。


 「私は全然優しくない現実を見ていたい。真剣に新しいことや、真剣に試される事にいつもドキドキしてる。自分で言うのもなんだけど変にポジティブなのよね」

 「なるほど、自覚はあるようだな」


 「失礼ね。でも、まあそうね、だから捜査局にもいたし陸軍にもいたわ。いろんな世界を見たくてね。気がつくと内務省にいたの。指揮官投げ飛ばしちゃったのがまずかったかしら。それとも和平交渉先でやり過ぎたのが悪かったからかしら。こう云う経歴の持ち主はあまり前例が無いのよ。へへっ」


 「へへって・・・う~ん。同情するよ。敵さんに」

 (ポジティブすぎるにも程がある。指揮官投げ飛ばしたって何処の指揮官だよっ、やっぱり天然だな)


 「トルクのことも教えてくれない」

 「いいけど・・・」

 「トルクのご両親は?」


 「さあな。いないっていうか浄化作戦の影響かな。古い記憶がないんだ」

 「まったく?」

 「ほぼね。昔、田舎でエターナルと暮らしていたのはおぼろげながら覚えているけど」


 「エターナルってロボット家政婦のことでしょ。他には一緒にいなかったのかしら」

 「他には丸メガネの爺さんだけかな。それも殆ど覚えてない。エターナルは姿形と顔しか覚えていない」


 「うーん・・・なんか悪いこと聞いちゃったかしら」

 「覚えちゃいないから良いも悪いもないな。すまんね。話が膨らまずに」トルクは苦笑いして目を泳がせる。

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