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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第20章 とんだ変態だな 
62/95

(4)

 (これが見たかったのかな、ひょっとして・・・)


 ジエフはトルクの要求事項の一つがこのデータであることを理解した。だが肝心なデータの示すところが解らない。必死に理解しようと目を凝らす。


 「・・・ああ、ああ、マイナーコードが・・・5・・・7・・もっとか・・・かなり混じってる・・・。レイヤ毎にシステムが違うからか・・・。データセンターのメインフレームでコード解析しながら進んでも相当時間が掛かる」

 スクロールを前に色々と理解した。さすが内務省のオペレータ専門職ジエフ。


 「うーん」

 トルクはスクロールが終わる前にまた頭を抱えてしまった。

 「だよね普通・・・解らんよね・・・」


 「んっ、うーん」

 トルクは目にも留まらないコードを指をさしたり時折腕を組んだりする。


 「??・・・まさか、そんな筈はないよね。これ、このまま読めるの・・・まさかね・・・・・・・・・冗談でしょ・・・」ジエフがぽかんと口を開けて呟いた。

 そしてトルクを見たサルナが深く椅子に腰を落とす。


 「・・・広すぎる・・・。歪の散在する範囲が広すぎるんだ」トルクが呻いた。

 「とんだ変態だな」ジエフがまた呟く。


 数年前、ほぼ体が動かず、コーディングの知識を持たないギフテッドが死を前に病床でメジャーコードを翻訳して話題に上った。


 ジエフも心得がないわけではない。戯れにメジャーコードの翻訳にチャレンジしたことがあったが数百行がやっとの世界だ。しかもマイナーコードと云えば原始コード自体は言語に匹敵するほど数多存在する。


 対になるセキュリティコーディックを持たない限り常人には成す術がない。

 「これなら判るだろ」

 トルクはコンソールをまた叩き始めた。


 メインモニターには一帯の鳥瞰図と重なった歪の等高線が描かれ始める。

 一番歪が大きい場所はバーから北に集中していた。ちょうど筍の三角錐をあちらこちらに生やしたように。

 白い三角錐は小さく一定の確率によるノイズと判断されたもので地図全体に散在している。

 赤い三角錐は有意な歪で総てを囲むと直径30キロにもなる。

 それでもかなり範囲は狭められる。


 「いい線行ってるんじゃ・・・。この辺は終末兵器陰謀論の核心地と一致するし・・・確か・・・何十年探しても何も見つかってないってノンフィクションドラマで結論してたわね。見つけた人に懸賞金を支払うって」

 サルナは深夜ドラマを思い出す。


 「・・・もしかしてミスターコンカラットは人間じゃない・・・いや、そんな筈は・・・」(世の中にこんなアクロバチックなワークパワーを持った人間がいる筈がない・・・いや、目の前にいる・・・)ジエフは何か重大な法律違反を見つけた新米学者のように言った。


 人間と誤認されるような機械は存在が否定されている。

 これはロボットのクオリティが限りなく人に近づき社会問題化したおよそ100年ほど前に法制化されたものだ。


 「そんな訳ないじゃない」呆れたようにサルナが答える。

 「こんなクオリティの高いロボットが居たら会ってみたいね」


 「もしかして満身創痍なのもリアリティの演出かしら」

 包帯だらけのトルクを見てサルナが笑った。

 「まあな。ほっといてくれ」


 「世の中にはとんだ変態がいるもんだな」

 ジエフは呆れ果ててどっかりとチェアに腰を落した。


 サルナが決心したように椅子から立ち上がる。

 「直径数十キロの歪をしらみつぶしに探さないといけないのかしら」


 「レイヤの歪は謂わば裏技さ。目星はついたけどね。正しいアプローチのヒントはやっぱりバーの婦人から貰ったはずさ」

 トルクも決心したように立ち上がる。


 「そうねっ、その通りっ」

 サルナは婦人の言葉を書き写したペーパーを高く掲げた。

 「よし、もう一度バーまで行こう」

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