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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第15章 終末兵器の実験場 
49/97

(2)

 バーの前に佇むトルクとサルナ。


 吹きさらしの物寂しげなネオン。通電していない。

 背後のソーラーガーデンは大部分が足の付け根まで土埃に埋もれている。

 ソーラーリーフは誰かがたまに土埃を落としているのだろう。僅かだが人の臭いがする。


 ソーラーガーデンとは歴史上メガソーラーの最大級と云われたものだ。生態系や気候への影響が指摘され世界的に新設は百年以上前に禁止されていた。


 検索の果てに静かな所にたどり着いたようだ。

(ここはどこだ。聞く相手もいない。デットエンドか。出直すか)

 思案に暮れるトルクとサルナ。

 いかに優秀なサーチャーのトルクといえど試行錯誤を繰り返す。素人よりは遥かに少ないが。


 「ローグランの乾季を思い出すな。風化合成樹脂が苦手な人は多いけど俺はそんなに嫌いじゃない」


 「でもこれはいわく付きの土埃よ。まあ、肉体的ダメージは風化合成樹脂よりまだ少ないって研究成果もあるようだけど・・・」

 「ナノ粒子で皮膚炎起こすから汗をかけって云ってたよな」


 「だからそのジャンパー脱がないのかしら。野暮ったいわね」

 「気に入ってるんだほっといてくれ」


 もともとジャンパーはサルナが買い与えたものだ。なんとなくサルナは照れくさい。紺色で薄手のジャンパー。レトロブランドの復刻版

 とりあえずバーへ歩き出す二人。


 「無駄足かも知れないけど、とりあえず入るの一択だな」


 階段やフロアーには少なくとも一定のインターバルで人が通っている気配がある。

 土埃の溜り具合や掃除の具合から若干のメンテナンスの臭いもする。


 「そうね、廃墟でも・・・なさそうだけど・・・誰も・・・居そうにないわね・・・」


 そう言いながらもサルナはショルダーバックから凍結銃を取り出した。サルナの野生の勘は危険だと伝えている。


 スウィングドアを開けて中に入るとバーの中にはアンティークピンボールとジュークボックス。


 カウンターにはダンシングフラワーとテーブルネオンがアルコールのボトルに埋もれていた。

 テーブルネオンが小さな音を発てて光っている。


 (だれかいる?)

 トルクとサルナにえもいわれぬ緊張が押し寄せた。互いに顔を見合わせる。

 だが不思議と人の気配が全くしない。


 トルクはレジスターの中に残っているコインをジュークボックスに入れ、適当にキーを押す。


 これも通電していた。小さな歯車の音。動き出すアーム。

 静かな店内に突然大音量で流れ出す大昔のカントリーミュージック。


 アンティークピンボールに興味を示したトルクはコインを入れてスタートボタンを押す。

 そしてフリッパーをカタカタと連打し始めた。

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