第9話 見えない敵
熱波怪獣フレアドンとの戦いから三日後。
アーク司令室には久しぶりに穏やかな空気が戻っていた。
「各地の気温も正常値に戻りました」
マリアが報告する。
博士が大きく伸びをした。
「やっとエアコンがまともに使えるわ」
副指令が苦笑する。
「博士、そればかりですね」
司令室に小さな笑いが起こった。
窓際では護が外を眺めていた。
あの日の戦い。
ブレイブフォーム。
そして光の槍。
今でも夢だったような気がする。
未来が隣にやって来た。
「考え事?」
「まあな」
護は少し照れくさそうに笑う。
「俺、本当にあんな力持ってるのかなって」
未来は静かに答えた。
「私も同じだよ」
「え?」
「ルナフォームになった時もそうだった」
未来は窓の外を見つめる。
「でもね」
「力より大事なのは、どう使うかだと思う」
護は少し驚いた。
未来は本当に強い。
自分よりずっと。
そう思った。
その時。
警報が鳴った。
ビーッ!
ビーッ!
ビーッ!
司令室の空気が一変する。
「怪獣ですか?」
護が振り向く。
だが。
マリアが首を横に振った。
「違います」
「全国規模の通信障害です」
◇
数時間後。
東京。
大阪。
福岡。
札幌。
日本各地で異常事態が発生していた。
スマートフォンが繋がらない。
テレビが映らない。
インターネットが不安定になる。
そして。
人々の様子がおかしくなり始めた。
駅構内。
突然口論を始める人々。
ショッピングモール。
些細なことで喧嘩になる客たち。
道路では交通トラブルが急増していた。
副指令が険しい顔になる。
「偶然ではないわね」
博士も頷く。
「人間の感情が異常に高ぶっとる」
◇
シーカー本部。
三神が巨大モニターを見つめていた。
「おかしい」
「明らかに何かの電波や」
モニターには見たことのない波形が映っている。
マリアが解析結果を表示した。
「発信源不明」
「しかし全国で同時観測されています」
十文字が腕を組む。
「怪獣か」
「それとも宇宙人か」
◇
その頃。
誰もいない地下施設。
無数のモニター。
ノイズ。
電子音。
そして。
闇の中に浮かぶ赤い瞳。
ゾルガだった。
その前には奇妙な装置が置かれている。
「人類は面白い」
「少し刺激するだけで争い始める」
低い笑い声。
「これが恐怖」
「これが憎悪」
「これこそが我らの糧だ」
その背後のスクリーンに映るのは、
巨大な影。
まだ姿は見えない。
しかし確かに何かが眠っていた。
◇
翌日。
シーカーの調査チームに護と未来も同行する。
現場は巨大な通信中継施設。
施設内は無人。
しかし。
機械だけが勝手に動いている。
未来が不安そうに呟く。
「何だか嫌な感じ……」
護も同意する。
「誰かに見られてる気がする」
その時だった。
施設全体の照明が消える。
真っ暗闇。
そして。
無数のスマートフォンの画面が一斉に点灯した。
ピカッ。
ピカッ。
ピカッ。
数百台。
数千台。
不気味な光。
そこに映し出されたのは、
巨大な赤い目だった。
「なっ……!?」
護が息を呑む。
未来も凍り付く。
そして。
低い機械音声が響いた。
『人類ハ争エ』
『憎ミ合エ』
『破滅セヨ』
次の瞬間。
施設全体が激しく揺れた。
警報が鳴り響く。
マリアの通信が入る。
「護!未来!」
「地下から巨大生命反応!」
「怪獣出現です!」
護と未来が顔を見合わせる。
ついに来た。
ゾルガの新たな刺客。
そして。
地面を突き破ろうとする巨大な影。
その正体とは――。




