第7話 灼熱の侵略者
青空が広がっていた。
怪獣災害のない、久しぶりに平和な朝。
アーク司令室にも緊張感はなかった。
博士はコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
三神はモニターの点検。
マリアは静かにデータ整理を行っていた。
隊長はそんな様子を見回し、小さく頷いた。
「新人二人に休暇を与えろ」
十文字が振り向く。
「よろしいので?」
「ここ最近は働き詰めだ」
隊長は微笑んだ。
「少しくらい普通の生活を思い出す時間も必要だろう」
数十分後。
護はアークの展望デッキで背伸びをしていた。
「休みかぁ……」
未来が笑う。
「嫌そうだね」
「いや、急に休めって言われても何すればいいのか分からなくて」
未来は少し考えた。
「私は保育園に顔を出そうかな」
「あー、そういうのあるよな」
「護くんは?」
「コンビニかな」
二人は顔を見合わせて笑った。
昼前。
護は久しぶりにコンビニを訪れていた。
自動ドアが開く。
店長が顔を上げた。
「おっ、生きてたか」
「その挨拶やめてください」
店長は豪快に笑った。
「怪獣騒ぎばかりだからな」
護も苦笑する。
変わらない。
この店も。
この街も。
数か月前まで当たり前だった風景。
一方。
未来は保育園を訪れていた。
「未来先生ー!」
園児たちが一斉に駆け寄る。
未来はしゃがみ込む。
「みんな元気だった?」
「うん!」
子供たちの笑顔に囲まれながら、未来は心の奥が温かくなるのを感じていた。
守りたい。
そんな言葉が自然と浮かぶ。
だが。
異変は突然始まった。
午後一時。
東京。
気温四十二度。
午後二時。
気温四十五度。
午後三時。
気温四十八度。
街がざわつき始める。
人々が空を見上げる。
陽炎が揺れる。
風が熱い。
まるで巨大なドライヤーを当てられているようだった。
アーク。
警報が鳴り響いた。
ビーッ!
ビーッ!
ビーッ!
「全国規模の異常高温発生!」
マリアが叫ぶ。
博士の顔色が変わる。
「自然現象やない!」
衛星映像が切り替わる。
山岳地帯。
巨大な熱源。
そして。
ゴォォォォォォォッ!!
山を突き破り現れた。
全身を赤黒い岩石に覆われた巨大怪獣。
熱波怪獣フレアドン。
隊長が立ち上がる。
「出撃だ」
Gファルコン隊発進。
十文字の指揮の下、
戦闘が始まる。
だが。
レーザー。
ミサイル。
全てが熱波に阻まれる。
フレアドンが咆哮した。
ドォォォォォン!!
巨大火球。
Gファルコン一号機被弾。
「くそっ!」
十文字が歯を食いしばる。
同時刻。
地上。
護と未来の通信機が鳴った。
「護!」
「未来!」
「聞こえるか!」
十文字だった。
「こちら護!」
「未来です!」
「アークへの帰還は不要だ」
護が驚く。
「え?」
「現在地で市民の避難誘導を行え」
未来が即答する。
「了解!」
「今のお前たちにしか救えない人がいる」
通信が切れる。
護は周囲を見た。
暑さで倒れる人。
混乱する人々。
避難を始める家族。
未来も子供たちを避難させ始める。
その時だった。
誰もいない廃工場。
空間が歪む。
黒い裂け目。
その奥から現れる影。
人のようで。
人ではない。
赤い瞳が光る。
「地球人……」
「愚かな種族だ」
低い声。
「だが……」
「この星は我々のものになる」
影の背後には無数の光点が浮かんでいた。
まるで艦隊のように。
異界星人ゾルガ。
それは単なる怪獣使いではなかった。
地球そのものを狙う侵略者だった。
そして。
都市へ進むフレアドン。
それを見つめる護。
避難する子供たちを守る未来。
ガーディアン苦戦。
迫る灼熱。
そして地球侵略の影。
護はまだ知らない。
次の戦いで、
自らの勇気が新たな力を呼び覚ますことを――。




