第4話 守るべきもの
アークの朝は早い。
巨大な空中基地の格納庫では、整備員たちが慌ただしく動き回っていた。
戦闘機のエンジン音。
飛び交う指示。
モニターに映る世界各地の情報。
ガーディアンは二十四時間休むことなく活動していた。
その光景を護は呆然と見つめていた。
「すげぇ……」
思わず漏れた言葉だった。
その隣では未来も目を輝かせている。
「本当に秘密基地みたい……」
すると背後から声が飛んだ。
「秘密基地やなくて職場や」
二人が振り返る。
博士だった。
相変わらず白衣姿である。
そして、その白衣の袖は少し焦げていた。
「博士……また何か爆発させました?」
未来が呆れたように尋ねる。
博士は視線を逸らした。
「ちょっとや」
「ちょっとで焦げるんですか」
「ロマンには犠牲が付きものや」
そこへ副指令が現れる。
「博士」
静かな声だった。
だが博士は顔色を変えた。
「は、はい」
「実験室の壁を吹き飛ばしたそうですね」
「事故や」
「始末書十枚です」
「鬼や……」
護と未来は顔を見合わせた。
どうやらこのやり取りは日常らしい。
――中央司令室。
隊長はコーヒーを片手にモニターを見つめていた。
その隣には副隊長・十文字が立っている。
「新人はどうです?」
十文字が尋ねた。
隊長は微笑む。
「まだ右も左も分からない」
「普通の若者ですからね」
「だからこそいい」
隊長はそう言った。
その時。
警報が鳴り響く。
ビーッ!
ビーッ!
ビーッ!
マリアが即座に反応する。
「海上都市エリア7で異常発生」
「詳細」
「大型台風が進路を変更」
モニターに映像が映る。
巨大な積乱雲。
激しい暴風。
そしてその中心部には異様なエネルギー反応があった。
「怪獣か?」
十文字が眉をひそめる。
マリアは首を横に振る。
「不明です」
「だが自然現象ではない」
隊長は立ち上がった。
「ガーディアン出動」
――格納庫。
護と未来は初めて出撃準備を見ることになった。
巨大なシャッターが開く。
その向こうには三機の戦闘機が並んでいた。
「Gファルコン」
攻撃型。
最前線を担う主力機。
「Gイーグル」
高速偵察型。
索敵能力に優れる。
「Gクロウ」
救助・支援型。
災害現場での活動を想定した機体。
未来は思わず声を漏らした。
「かっこいい……」
護も頷く。
正直、少し興奮していた。
その時だった。
格納庫に現れた一人の女性。
パイロットスーツを身に纏った若い女性だった。
長い髪を後ろで束ねている。
堂々とした歩き方。
周囲の隊員たちが自然と道を空けた。
「あの人は?」
未来が尋ねる。
十文字が答えた。
「ファルコン隊隊長」
「ガーディアン最高のパイロットだ」
女性は二人を見る。
そしてニッと笑った。
「新人?」
「は、はい」
「そう緊張しなくていい」
彼女はそう言ってヘルメットを抱えた。
「私は月影未来――じゃなくて」
慌てて笑う。
「冗談冗談」
「私は速水レイカ」
護は思わず吹き出した。
「今、名前間違えましたよね?」
「気のせい」
「絶対違う」
「気のせい」
レイカは笑いながら戦闘機へ向かった。
その背中を見つめながら未来は呟く。
「すごい人だなぁ……」
――その頃。
海上都市エリア7。
巨大な積乱雲の中で何かが動いていた。
風が唸る。
海が荒れる。
そして稲妻が走った。
その光に照らされたのは巨大な翼だった。
ゴォォォォォォォ――!
獣とも鳥ともつかない咆哮が響く。
マリアの声が司令室に響く。
「未確認生命体確認」
「コードネームを付与します」
モニターに映し出されたその姿を見て、隊長は静かに目を細めた。
「始まったな……」
暴風の中。
巨大な影がゆっくりと姿を現した。
次回へ続く――。




