第3話 ガーディアン
海の向こうから朝日が昇る。
青く輝く空。
穏やかな海。
だが、その海の下では誰も知らない異変が起きていた。
深海。
超古代遺跡。
巨大な種子が脈動する。
ドクン――。
ドクン――。
その鼓動に呼応するように、地中深く眠るゴモスの瞳が赤く光った。
――その頃。
護は見慣れない飛行機の中にいた。
窓の外には雲海が広がっている。
向かいの席には博士。
相変わらず白衣姿である。
「だから何なんですか、これ」
「誘拐や」
「やっぱり!」
「冗談や冗談」
博士は豪快に笑った。
護は全く笑えなかった。
昨日、博士に連れられたと思ったら、そのまま飛行機に乗せられていたのである。
「帰りたい……」
「安心せえ」
「何をですか」
「ワシも帰りたい」
「降ろしてください」
その時だった。
機内アナウンスが流れる。
『まもなく目的地に到着します』
護は窓の外を見た。
そして固まった。
雲の上に島が浮かんでいた。
正確には違う。
巨大な空中基地だった。
「な、なんだあれ……」
博士はニヤリと笑う。
「アークや」
「アーク?」
「ガーディアンの本拠地や」
護は言葉を失った。
まるで未来都市だった。
巨大な滑走路。
無数の格納庫。
発着を繰り返す航空機。
その全てが雲の上に存在していた。
――同じ頃。
未来もまた空中基地へ向かっていた。
彼女を迎えに来たのはEAAの女性職員・神崎玲奈だった。
「本当に保育士なんですけど……」
「存じています」
「何かの間違いじゃ?」
「いいえ」
玲奈は淡々と答える。
「あなたにも見えたはずです」
未来は黙り込んだ。
あの日。
街を救った光の巨人。
そして自分の身体を包んだ光。
忘れようにも忘れられなかった。
「私は……何なんですか?」
玲奈は少しだけ微笑んだ。
「それを確かめるために来ていただきました」
――アーク中央司令室。
巨大なモニターが並ぶ部屋。
そこには一人の男が立っていた。
穏やかな目。
落ち着いた雰囲気。
どこにでもいそうな人物だった。
しかし部屋の誰もが彼を見ていた。
「隊長」
副指令の女性が声を掛ける。
「護君と未来さんが到着します」
「そうか」
男は静かに頷いた。
「ようやく始まるな」
その時だった。
警報が鳴り響く。
ビーッ!
ビーッ!
ビーッ!
司令室の空気が一変する。
オペレーター席に座る少女型アンドロイドが振り返った。
「海底遺跡付近に異常反応」
「詳細を」
「生命エネルギー急上昇」
モニターに映像が表示される。
海底。
暗闇。
そして――。
巨大な赤い眼。
副隊長・十文字が眉をひそめた。
「ゴモスか……」
隊長もモニターを見つめる。
「まだ完全には目覚めていない」
「ですが反応は確実に増大しています」
マリアが答える。
隊長は静かに腕を組んだ。
「時間がないな」
その時。
司令室の扉が開く。
護と未来だった。
二人は思わず立ち止まる。
巨大な司令室。
忙しく働く隊員たち。
そして正面に立つ隊長。
隊長は二人を見て微笑んだ。
「ようこそ、ガーディアンへ」
護と未来は顔を見合わせた。
二人ともまだ知らない。
自分たちの運命が大きく動き始めていることを。
そしてその頃――。
海底遺跡。
世界樹の種が再び鼓動を始める。
ドクン――。
ドクン――。
赤黒い光が海底を照らした。
その光を浴びたゴモスが咆哮する。
ゴォォォォォォォッ!!
海が揺れる。
大地が震える。
そして、海底遺跡の奥深く。
誰も知らない石壁に刻まれた古代文字が光り始めていた。
そこにはこう記されていた。
――闇の種が目覚める時、光の槍もまた目覚める。
その意味を知る者は、まだ誰もいなかった。




