↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/16

第13話 四つの守護獣

 朝。


 日本の東の空。


 海上に巨大な影が現れた。


 その姿は、巨大な龍を思わせる。


 青い鱗。


 長い身体。


 そして頭部から伸びる二本の角。


「グオオオオオオッ!」


 龍のような怪獣が咆哮する。


 しかし――。


 怪獣は都市へ向かわなかった。


 そのまま陸地へ上がると、道路を避け、建物を避けながら、ある方向へ進んでいく。


 同じ頃。


 南の海上。


 巨大な炎が空を覆った。


 炎の中から、


 巨大な鳥のような怪獣が姿を現す。


 赤い身体。


 巨大な翼。


 全身から炎を放っている。


 だが、その怪獣も街を襲わなかった。


 ただ、


 一つの方向へ向かって飛んでいく。


 西。


 巨大な獣が山から現れた。


 白い身体。


 鋭い爪。


 虎を思わせる姿。


 そして北。


 大地が大きく隆起する。


 巨大な亀のような怪獣が姿を現した。


 甲羅には蛇のようなものが絡みついている。


 四体の怪獣。


 それぞれ別の場所から出現したにもかかわらず――。


 向かっている方向は、


 すべて同じだった。


 EAA本部。


 管制室。


 警報が鳴り響く。


「東海岸より巨大怪獣!」


「南部にも怪獣が出現!」


「西部、北部でも確認!」


 隊員たちが慌ただしく動く。


 マリアが各地の映像をモニターに表示する。


「四体の怪獣が、同時に出現しています」


 隊長が眉をひそめる。


「被害状況は?」


「……それが」


 オペレーターが戸惑う。


「ほとんどありません」


「何?」


「四体とも、市街地を避けています」


「まるで……」


 未来が呟く。


「何かを探しているみたい」


 護もモニターを見る。


「目的地があるのか?」


 隊長が決断する。


「ガーディアンを出す」


「怪獣が何を目的としているのか確認する」


 その頃。


 一人の少女が街を歩いていた。


 まだ幼さの残る少女。


 少女は空を見上げる。


「……何だろう?」


 理由は分からない。


 だが、


 胸の奥が妙にざわついていた。


 そして――。


 少女の前に、


 青い光が一瞬だけ現れた。


 少女は立ち止まる。


「……あなた?」


 何かに呼ばれている。


 そんな気がした。


 その少女を、


 一人の男が遠くから見つめていた。


 スーツ姿。


 落ち着いた表情。


 EAA関係者とも思える雰囲気を持っている。


 男は静かにスマートフォンを見る。


 画面には、


 四体の怪獣の現在位置。


 男は微笑む。


「やはり……」


 そして少女を見る。


「守り人の血は、まだ残っていたか」


 その男の名は――


 ゾルガ。


 異界星人ゾルガが人間の姿を借り、


 人間社会の中へ入り込んでいた。


 ガーディアンの航空機が四神怪獣を追跡する。


「怪獣は、まだ攻撃していません!」


 『ならば、刺激するな』


 隊長から指示が入る。


 しかし、


 四体の怪獣が向かっている先に、


 少女がいることが判明する。


「少女一人?」


 護が驚く。


「はい」


 未来がモニターを見る。


「どうして……?」


 その時。


 突然、


 四体の怪獣が立ち止まった。


 そして、


 少女のいる方向を見つめる。


 少女は四体の怪獣を見る。


 恐怖はなかった。


 むしろ、


 どこか懐かしい。


「……あなたたち」


 少女の目から涙が一滴落ちる。


「どうして……泣いてるの?」


 怪獣たちは少女を襲わない。


 ただ静かに見つめている。


 その瞬間。


 少女の頭の中に、


 古い映像が浮かんだ。


 巨大な都市。


 空に浮かぶ光。


 そして、


 四体の怪獣。


 人々を守っている。


「……何、これ?」


 その時。


 空に黒い雲が広がった。


 四体の怪獣の身体から、


 突然、黒い煙が噴き出す。


「グオオオオオオッ!」


 四体が同時に咆哮する。


 今まで少女を守るようにしていた怪獣たちが、


 突然暴れ始めた。


 建物が破壊される。


 道路が吹き飛ぶ。


 人々が逃げ惑う。


「怪獣が暴れ始めた!」


 ガーディアンの隊員が叫ぶ。


 隊長が命令する。


 『総員、攻撃開始!』


 戦闘機から攻撃が開始される。


 四体の怪獣が反撃する。


 炎。


 雷。


 暴風。


 大地。


 都市が大混乱に陥る。


 護と未来も避難誘導にあたる。


「こちらへ!」


「走らないで!」


 人々を安全な場所へ誘導する。


 その時。


 未来が足を止める。


「……え?」


 頭の中に、


 声が聞こえた。


 『……お願い』


「誰?」


 護も立ち止まる。


 『助けて……』


「今、何か聞こえなかった?」


 護が未来を見る。


 未来が頷く。


「うん……」


 『あの子たちは悪くない……』


 『お願い……』


 『助けて……』


 未来が顔を上げる。


 遠くに、


 少女がいる。


「……あの子?」


 二人は少女のもとへ走る。


 少女は泣いていた。


「怪獣たちが……」


「私を守ってくれていたのに……」


 護が驚く。


「守っていた?」


「うん……」


 少女自身にも、


 なぜそんなことが分かるのか分からない。


「私には分かるの」


「この子たちは、本当はこんなことしたくない」


 その言葉を聞いた瞬間、


 護と未来は互いを見る。


 空。


 四神怪獣が再び攻撃する。


 ガーディアンが苦戦する。


 『スピアを確認!』


 『光の反応です!』


 護と未来が同時に走る。


 二人は人目のない場所へ入る。


「未来」


「うん」


「行こう」


「うん!」


 二人の手が重なる。


「光よ――!」


 二人の身体から光が溢れる。


 一つの巨大な光になる。


 そして、


 スピア


 が現れる。


 スピアは四神怪獣の前に立つ。


 青龍を思わせる怪獣が雷を放つ。


 スピアが受け止める。


 朱雀を思わせる怪獣が炎を放つ。


 スピアが避ける。


 白虎を思わせる怪獣が突進する。


 スピアが押し返す。


 玄武を思わせる怪獣が大地を隆起させる。


 スピアが吹き飛ばされる。


 護の意識が強くなる。


 『倒さないと……!』


 未来が答える。


 『待って!』


 『この子たちは、操られてる!』


 『でも、街が壊されてる!』


 『だから助けるの!』


 スピアの身体に赤い光が走る。


 しかし、


 その赤い光が徐々に薄れていく。


 藍色。


 紫色。


 月の光のような輝きが身体を包む。


 未来の思いが、


 スピアの中で最大限に膨れ上がる。


 そして――。


 ルナフォーム。


 ルナフォームとなったスピアは、


 攻撃しなかった。


 両手を広げる。


 四体の怪獣へ向け、


 優しい光を放つ。


「グオオオ……!」


 怪獣たちが苦しむ。


 身体にまとわりついていた黒いエネルギーが、


 少しずつ剥がれていく。


 しかし、


 その瞬間。


 空に黒い影が現れる。


 ゾルガだった。


 人間の姿のまま、


 遠くから戦いを見ている。


「なるほど……」


「やはり、守り人の血が四神を呼び覚ましたか」


 ゾルガは静かに笑う。


「ならば、その力を利用するだけだ」


 ルナフォームの光が強くなる。


 護の意識が響く。


 『未来……大丈夫か?』


 未来が答える。


 『うん』


 『この子たちを助けたい』


 『なら……やろう』


 『うん!』


 二人の光が完全に重なる。


 ルナフォームから、


 巨大な光の波が放たれる。


 四神怪獣を包み込む。


 黒いエネルギーが、


 怪獣たちの身体から一気に抜けていく。


 そして――。


 四体の怪獣の目から、


 赤い光が消えた。


 怪獣たちは静かになる。


 青龍の怪獣が少女を見る。


 朱雀の怪獣が翼を広げる。


 白虎の怪獣が少女の前に座る。


 玄武の怪獣が静かに頭を下げる。


 少女は涙を流す。


「……ありがとう」


 四体の身体から、


 淡い光が生まれる。


 その光が少女の手へ入っていく。


 少女の手の甲に、


 見たこともない古代の紋章が浮かんだ。


 少女は驚く。


「……何、これ?」


 だが、


 その意味を知る者はいない。


 少し離れた場所。


 ルナフォームのスピアが少女を見つめる。


 未来の意識が響く。


 『この子……何者なんだろう?』


 護も答える。


 『分からない』


 『でも、あの怪獣たちは、あの子を守っていた』


 『うん……』


 スピアは静かに少女を見つめる。


 その時。


 少女がスピアを見る。


「……ありがとう」


 スピアは何も答えない。


 ただ、


 優しく頷く。


 夜。


 四神怪獣は、


 それぞれ東西南北へ戻っていった。


 街にも静けさが戻る。


 ガーディアンの隊員たちは、


 スピアを見つめていた。


「……あの怪獣を倒さなかった」


「一体、何をしたんだ?」


 隊長も黙ってスピアを見る。


「……スピア」


 だが、


 その正体が護と未来だとは、


 誰も知らない。


 そして。


 街の片隅。


 一人の男が夜空を見上げていた。


 ゾルガ。


 その顔には、


 静かな笑みが浮かんでいる。


「守り人……」


「四神……」


「そして、スピア」


 ゾルガは小さく呟く。


「すべてが、ようやく繋がり始めた」


 その目が、


 一瞬だけ異界星人のものへ変わる。


「……ならば、次は――」


 男は人混みの中へ消えていった。


 少女は、


 自宅の窓から夜空を見上げていた。


 手の甲に浮かんだ古代の紋章。


「……私、何なの?」


 その問いに答える者はいない。


 ただ、


 遠い山の向こうから、


 小さな獣の鳴き声が聞こえた。


 少女は窓を開ける。


 夜空には、


 四つの星が輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。