第二章 癒しの花の冒険 前編 その7 連れて行かれた先
——私があの〝嫉妬〟のソレスナに連れて行かれた先はどこぞの地下室でした。
窓や出入り口はどこにもなく、転移魔法で逃げようにも高度な結界によって阻まれてしまいます。
そして地下室には、ありとあらゆる拷問器具が揃っていました。
ここは脱出不可能な拷問部屋なのでしょう。
私は現在の座標を知るため、探知魔法を発動させます。
その結果判明した座標は、アルカディア帝国の中枢に位置する帝国総督府の地下深くだった。
「目覚めた」
ソレスナの声が聞こえたかと思うと、突如天井の壁が波打つようにうねり、そこからソレスナが現れました。
そしてソレスナの傍らには、帝国の国章が描かれたローブを纏う魔法使いがいました。
私は驚愕の余り、腰が抜けてしまっていました。
アルカディア帝国は、その圧倒的な武力を以って領地を広げ、魔族と天使族以外の全ての種族が暮らすことのできる理想郷を作ったことで知られています。
その王国が天使族と共謀しているのであれば、それは魔族を滅ぼそうとしていると捉えることができます。
「お前らの目的は?」
私はソレスナと魔法使いを睨みつけました。
「黙れ」
ソレスナは一喝すると、私を重力操作で黙らせました。
「ぐぅぅうぅぅぅうっぅ~」
「実行。早く、お願い」
「へぇへぇ、それでは」
そして魔法使いは懐から漆黒の宝玉を取り出しました。
「ぐっ……それは! 狂奔の(ハヴォクティー)………宝珠!」
狂奔の宝珠——その宝玉は力を溜め圧倒的なまでの破壊力を生み出す宝玉。デメリットは、残りどれほどの魔力を溜め込んだから爆発するかが分からないこと。
「まさか私の力を⁉ でもその宝珠は危険すぎる!」
「大丈夫。魔力許容量計測魔法、作った。だから大丈夫。お前の超能、一部貰う」
「んっ? どうして一部なの?」
「お前に説明、義理ない。でもお前、私と同じ感じする。やっぱ説明する。超能、魂、根付く、力。だから全部、奪えない。分かった?」
「うん。ありがとう」
「それじゃ……」
「ちょっと待って。抵抗しても無駄なんでしょ。じゃあ痛くないようにお願い。力を奪われても動けるように」
「善処する」
そして魔法使いは、私の心臓部分に宝珠を押し当てた。
すると宝珠は私の身体の中にめり込んだ。
この時、想像を絶するような痛みを感じるのかと思っていたけど、全く痛みは感じなかった。ソレスナが痛みを感じないようにしてくれているのだろう。思ったよりソレスナは良い奴みたいだ。
宝珠が私の超能を可能な限り吸収した直後、私の意識は飛んでいった
そして記憶を失い、気が付いたらあの家族の家にいたのです。
………
……
…
「これが攫われた後にあった出来事。もう後戻りできないけど、本当によかったの?」
私は俯きながら、そうザガルに聞きました。そしてザガルは笑って、当たり前のように言うのです。
「何言ってるんだ? 当たり前だろ。俺はお前と一緒に生きるって決めた。それにお前一人に運命を背負わせたくない。背負うなら俺も一緒だ」
ザガルは私の肩に手を回し抱き寄せました。
「っ! ありがとう」
ザガルの腕の中は妙に安心感があり落ち着きました。
ふと、私の瞳の奥から熱いものが込み上げてきました。
「大丈夫だ。お前は一人じゃない。俺がいる」
その言葉を聞いた瞬間、堪えていたものが一気に溢れ出しました。
「ひっ………ふっ、ぐっ……………わぁぁあぁぁぁぁ—————」
ザガルは泣きじゃくる私を黙って受け止めていてくれました。
そして私の涙が少し落ち着いたところで、ザガルは私を腕の中に包んだまま静かに語りかけました。
「ところで、これからはどうするんだ? 帝国を滅ぼすのか?」
「うん。そうしたいと思ってるよ」
「それじゃこの洞窟からさよならだな」
ザガルは洞窟を見渡し、寂しそうに呟きます、
「そうだね……………」
私も少し寂しかったです。
この洞窟とはあの魔神さんと暮らし始めた頃からお世話になっています。
自然と愛着も湧くというものです。
「なあ。それだったら〝お礼〟言っておいた方がいいんじゃねぇか?」
初めはザガルの言っていることが理解できませんでした。
「どうやっ——」
私が聞くよりも早く、ザガルは私の口に指を押し当て答えます。
「精霊だ」
その瞬間私はザガルが何を言いたいか理解しました。
洞窟も大いなる大地の一部です。
つまり大地には精霊も宿るため、その精霊にお礼をしようという訳です。
本当にそんなことが可能なのでしょうか?
——理論上では可能です。
しかし一度もそんなことはしたことがないので分かりません。
実践あるのみです。
「ザガルの考え、理解したよ。一度も使ったことのないオリジナルの術式を使うけど、もし失敗したら精霊が暴走するから。その時はお願いね」
「オリジナル術式か……期待してるぜ」
ザガルは私が失敗することなど微塵も考えていないようです。
そんなに期待されてしまっては、成功するほかなくなりましたね。
「この地に宿る精霊よ。今こそ我が前に顕現し、その姿見を見せつけよ。精霊招来:精霊の具現化」
その瞬間洞窟全体が光り輝き出しました。
その光の輝きは次第に衰えていき、一か所に集中しました。
光が眩い最後の輝きを発するのと同時に、そこにこの世のものとは思えぬほど美しい、人の形を成した精霊が顕現しました。
「うふっ、ごきげんよう。貴方たちが私を使ってくれている人たちね」




