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魔法絵師マリカの不思議なアトリエ  作者: O.T.I
空と海の青《アズーロ》

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深淵のヌシ



 水底に潜んでいた巨大な魔物らしき触手に捕らわれてしまった私。

 何とか振りほどこうとしても水中では思うように身動きが取れず、ただ無意味に藻掻くことしかできない。


(た、助けて!!ミャーコ!!ジュリオ!!)


 深みに引きずり込まれながら何とか助けを呼ぼうとしても、声を上げることもできない。

 それでも即座に異変を察知してくれた二人が私を助けようと近づいてきた。


(マスター!!)


 ミャーコが私の手を掴んで引っ張ると、引き寄せられるスピードがほんの少しだけ遅くなった。

 だけど脚に絡みついた触手を振りほどくほどの力は無いみたい。


(やろうっ!!離しやがれっ!!)


 ジュリオが剣を振るって触手に斬りつけるけど……


(ちっ!!水中じゃ威力が出せねえっ!!)


 何度か攻撃を加えるものの、地上とは勝手が違うので効果的な攻撃が難しいみたい。


 そうこうしているうちに私の身体は確実に魔物の本体に引き寄せられ……その巨大な全容が明らかになる。


(た、蛸!?)


 そう。

 私を水中に引きずり込んだ魔物の正体は、幾つもの太く長い触手を持った巨大な蛸だった。

 事前に調べた情報には無かったけど、あれは伝説やおとぎ話にも登場するほどのあまりにも有名な魔物……『大洋の悪魔』の異名を持つキュロケスという怪物だ。

 前世であればクラーケンと呼ばれていたであろうそいつは数百年もの長い時を生き、その間際限なく成長し続けるという。

 外洋を航海するような大型帆船にも匹敵する大きさに成長した事例もあり、そんな怪物に海上でひとたび襲われれば絶望しかない。



(さすがにこの水路を住処にしてるくらいだからそこまで大きくはないけど……それでも10メートルは下らないかもしれないわ)


 その巨体からすればここは随分窮屈そうに見えるけど、柔軟な身体には関係ないわね……むしろ狭いところを好む習性なのかも。


 ……っと、そんな事を考えてる場合じゃない!

 こうしている間も私は引きずり込まれてるし、呼吸もそんなに長くは続かない。

 それに、今は触手が一本だけ右足首に絡みついているのだけど、他の触手にも巻き付かれて雁字搦めにされてしまったらもう脱出できなくなる。

 現にほかの触手も私を狙って伸びてきているのをが視界の片隅に見えた。


 ジュリオやミャーコが私を助けようと今も頑張ってくれてるけど……地上では魔物相手に無双していた二人も、水中では思うように戦えないはず。


 なら、ここは私が自分でなんとかしないと。

 だけど、当然私ごときの力では無理やり振りほどくこともできないし……そうなれば、あとは魔法しか選択肢がない。

 せいぜいが中級程度までしか使えない私の魔法で倒せるとは思えないけど、一時的に拘束を緩めるだけでも……


 たしか電撃の魔法で撃退した事例が多かったはず。

 でもこの状況でそんなの使ったら……みんな感電しちゃうかもしれないし……

 他のケースでは…………たしか、熱にも弱い…………


 っ!!まずい!酸欠になりかけてる……!

 もう考えてるヒマはないわ!!


 こうなったら一か八か……!!


 もう一刻の猶予も無いと悟った私は、足首に絡みつく触手に手を伸ばして掴んだ。

 そして無詠唱でも使える数少ない魔法の一つを放つ!


(これでもくらいなさい!!獄炎掌マノ・フィアメジャンテ!!)


 一気に魔力を解き放つと、触手を掴んだ私の掌から炎が巻き起こった。

 例え水中でも、燃え盛る魔法の炎は消えることなく触手を焦がそうとする。

 するとさすがの魔物もたまらずに私の脚を掴む力を緩めた。


(いい加減離しやがれ!!!)


(マスター!!)


 生まれた隙を逃さず、ジュリオが触手に剣を突き立て、ミャーコが力の限り私を引っ張ると、ついに私は触手の拘束から逃れることに成功した。


 だけど……


(い、意識が…………遠く……)


 もう呼吸はとっくに我慢の限界を超え、視界が急速に狭まっていく。

 そして…………そこで私の意識はプツリと途絶えてしまうのだった。




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