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魔法絵師マリカの不思議なアトリエ  作者: O.T.I
空と海の青《アズーロ》

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39/42

採掘



 舟を降り、最初の戦闘を無事に終えた私たちは洞窟の奥へと進む。


 天井から差し込む光は次第に細くなり、鮮やかだった視界の青も深く暗くなっていく。

 その様子はまるで深海へと潜っていくかのよう。

 実際には下に潜るのではなく、やや登り勾配みたいだけど。

 自然の洞窟なのでもちろん整地などされていないけど、比較的歩きやすい方だとは思う。


 洞窟は水上ルートのときの鍾乳石らしい白い滑らかなものから、ゴツゴツとした硬い岩石質に変化していた。

 これまでは光の加減で生み出された青だったけど、今は岩肌そのものが青みがかっている。


 空気は外よりかなり冷たく、入り口が海に通じているという立地の割にはあまり湿度は高くなさそう。

 魔法絵札の冷房は既に止めていたけど、私は肌寒さを感じたのでもう一枚上着を羽織っている。



 更に先に進むと、天井はだいぶ低くなり道幅もかなり(せば)まった。

 それでも探索するのに十分な広さはあるのだけど、天井の割れ目から差し込んでいた光も無くなった。

 まだ完全な闇ではないものの、そろそろ明かりが必要そうね。

 ミャーコなら夜目も利くだろうけど、私とジュリオはそうもいかない。

 そう思ったところでちょうど彼も足を止めた。


「流石に暗くなってきたな。ちょっと待ってろ、いま照明(ランタン)を出すから……」


 そう言って彼は背嚢を下ろそうとするが、私はそれに待ったをかける。


「あ、ランタンだと手が塞がっちゃうでしょ。私が明かりの魔法を使うわ」


 ここは魔物が出るからね。

 できるだけ両手は空けたおいた方が良いでしょう。


「普通は魔力の温存を優先するもんだが……まあ、マリカは魔力が無尽蔵だもんな。頼むわ」


「別に無尽蔵ってわけじゃないけど……明かりの魔法くらいは常時発動しててもぜんぜん問題ないわ」


 ジュリオにそう答えながら、私は【光明(ルーチェ)】の魔法を使う。

 以前、ランティーニ家の地下探索の時にアンゼリカが使った魔法と同じものだ。


 私が魔法を発動させると、煌々とした白い光が洞窟内を満たした。

 特に光源のようなものはなく、私の周りの空気そのものが光っているかのよう。

 影もできないのでとても不思議な感じがする。


「やっぱランタンより魔法の方が視界良好だな」


「魔物には丸わかりになっちゃうけどね」


「そいつは別に問題ないさ。俺らが返り討ちにするだけだ。な?嬢ちゃん?」


「ハイですニャん」


 あら、すっかり信頼してるみたい。

 お互いの実力を知るのにはたった一度の戦闘で十分だったのね。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 視界を確保してからまた探索を再開する。


 洞窟は一本道ではなく、途中にいくつもの分岐があった。

 鞄から手帳を取り出し、事前に調べて書き写していた地図を確認しつつルートを選定しながら進んでいるところだ。



「また分岐だ。次はどっちだ?」


「え〜と、今はここのはずだから……右ね」


 もう何度目かの分岐。

 ジュリオに問われた私は手帳の地図上で現在地を確認し、目的地に向う方の道を指差した。


 最初に魔物と遭遇してから10分くらいは歩いてきただろうか?

 今のところ他の魔物には遭遇しておらず、良いペースで探索を進められていると思う。


 そうしてしばらく進むと、岩肌が緑がかった青みを帯びる部分が現れ、キラキラとした結晶のようなものも混じり始めた。

 ふむ……この辺りかしらね。


「ちょっと待っててもらえるかしら」


「ん?採取かい?」


「ええ。岩群青……藍銅鉱(アズリテ)がこのあたりから採掘できるみたいなの。目的のものの一つよ」


 在庫がなくなりそうな絵の具の染料となるものだ。

 一番の目的は水天蘭玉だけど、こっちもついでに採取しておかないとね。


「あ、ほら見て。ここ、人の手で掘られた跡があるでしょ。ここが採掘ポイントで合ってるみたいね」


 私が指差した先に、人一人がすっぽり収まるくらいの横穴が掘られていた。

 周りをよく見れば同じような掘削跡がいくつも見られる。


「じゃあ俺は少し先の様子を見てくるわ。ミャーコ嬢ちゃんはここで見張っててくれ」


「ニャ、りょうかいですニャ」


 ここまでの行程でミャーコもすっかりジュリオと打ち解けたようで、ジュリオの指示に素直に返事をする。

 そしてジュリオは荷物から取り出したランタンを手にして洞窟の奥に進もうとするのだけど……


「一人で大丈夫なの?」


「なに、ちょっと様子を見てくるだけさ」


 私の声かけに振り向きもせず、手をひらひらさせてそう答えながら行ってしまった。



「……まあ、ここの魔物だったら大丈夫かしらね。それじゃあ私はさっさと採掘しちゃいましょう」


「お手伝いしますかニャ?」


「ううん、あなたは魔物が来ないか見張ってて。すぐに終わらせるから」


 二人して採掘に集中してたら魔物に不意打ちされかねないからね。

 それに、そんなに量を掘るわけでもないし、そもそも道具も一人分しかない。



 さっそく採掘を開始するため、私は鞄の中から(たがね)石頭(セットウ)ハンマーを取り出した。

 それから採掘跡の前に立ち、藍銅鉱の結晶が露出しているところを探す。

 緑がかった青色の岩の中にキラキラとした鮮やかな青の結晶が露出している部分を見つけると、その周辺の岩に鏨を当ててハンマーで打ち付けた。


 カーン、カーン……と岩を砕く小気味よい音が洞窟の中に木霊する。

 そうやって何度もハンマーを振るい結晶を掘り出していく。

 すると、それほど時間もかからずに拳大の藍銅鉱結晶を取り出すことが出来た。


 光に照らされてキラキラと青く輝くそれを、角度を変えながら(ため)(すが)めつ眺める。


「……うん、不純物も少ないし発色もいいわ」


「キレイですニャ!」


 品質の良さに私が満足そうにしていると、ミャーコも目を輝かせて言う。

 確かに、美しい群青色の結晶は宝石みたいだわ。

 粉末状になるまで砕いてしまうのがもったいないくらい。

 もう少し掘り出したいし、ミャーコにあげる分くらいは確保しましょうか。


 そう思った私は再び鏨にハンマーを打ち付け始めた。




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