バズっ太郎、雉と出会う ~雉も鳴かずば炎上すまい~
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この話を書くときに、始めてルビを振ったり「」を手軽につけられる機能があることに気づきました。
バズっ太郎と犬の旅は続きます。
なんだかんだで、確かになにかと情報についての嗅覚がするどい犬との旅は話のネタに事欠かず、楽しいものになってました。
しかし、そんな二人も今は静かです。自分達の動画を見てくれてる農家の人から、応援として茹でとうもろこしをたんまりともらったのを、なんとか消化しようと2人で黙々とバクバクと、とうもろこしを食べ続けてるからです。
天然新鮮なとうもろこしの甘みも十分堪能したし、そろそろ醤油や塩がほしいなと思って苦しくなってきたところで、前方でなにやらケンケンガーガーと、騒がしい鳥の鳴き声が聞こえます。
見ると、1匹の雉が、カラスや鳩、スズメ等、色々な野鳥から追いたてられていました。
直接攻撃されてはないものの、威嚇や追いたてられることに疲れたのか、雉はヘロヘロと軟着陸します。
それを見逃さず更に追いかける他の野鳥達ですが、ここでバズっ太郎達がちょっとまったと立ちふさがります。
バズっ太郎「事情はわからないが、1羽相手にあまりに大がかりすぎる。落ち着いて、一体何があったのか。」
犬「そうそう、ほら、とうもろこしでも食べながらゆっくり教えてよ。」
なるほど、上手いなと、さりげなくとうもろこしを減らす犬のちゃっかりを真似しつつ、バズっ太郎達は話を聞きました。
追いかけられてた雉は仲間内から「鳥頭の雉」と呼ばれてるらしく、いつもいい加減なことを大きく吹聴するくせに、すぐにその事を忘れてしまうから何かとトラブルを起こす雉だったとのこと。
今回は、巣作りに使いやすくて便利な枝が拾えて、更に美味しい木の実のなってる木の場所を吹聴したけど、その木がタカの巣だったらしく、命からがらほうぼうのていで逃げてきた野鳥達から責められていたとのこと。
しかし、その雉は自分がそんなことを言った覚えがないの一点張りで頭にきた野鳥たちから追いたてられてたという話。
とうもろこしをお土産にして野鳥達をなだめて、雉が回復したらきちんと話を聞いておくからと約束して、なんとかバズっ太郎と犬はその場を収めた。
雉の身柄を預かり野鳥達を返し終えた頃、一息ついて、体もやすまった雉が起き上がる。
雉「いやいやどーも助かりました。私、雉っていいます。この度はありがとうございました。」
バズっ太郎「どこか、体に痛むところや異常はある?」
雉「いえいえお陰さまで元気ぴんぴん委細問題なしですねー」
やたらとよけいな言葉を付け足して答えてくる。おしゃべりな雉というのは本当らしい。
犬「なんで嘘ついてタカの巣なんかに野鳥たちを誘い込んだんですか?」
雉「失礼な!私は嘘はつきません!たくさんおしゃべりしておしゃべり好きだから余計なこというなとはよく言われるけど、その余計なことだって、嘘をついた覚えはないんですよ!まぁ、間違ったことは言っちゃったことは、えぇ…はい…ありますけど」
しゃべってる内に自分でも自信がなくなってきたのか、否定が尻すぼみになっていく雉。
バズっ太郎「野鳥の皆さんは、あなたが巣作りに適した木の枝や、木の実がとれる場所を見つけたと吹聴したと言ってましたが。」
雉「そうですそうです!しなやかなのに折れづらくて、しかも木の実も生ってるんです。これはもー私だけが使うわけにはいかないなと思って皆に教えたんです!」
雉に背を向け、バズっ太郎と犬は話し合います。
犬「…どう思います?」
バズっ太郎「嘘を言ってる感じではないけど…タカの巣の事を知らなかったとか?」
犬「うーん…でも、色んな種類の野鳥達があそこまで集団で怒ってるなら、逆恨みって感じでもなさそうですし…」
雉と改めて向き合って
バズっ太郎「その木がタカの巣ってことは知らなかったの?」
雉「いいえ?知ってましたよ?初めてその木を見つけたとき、 タカと話しましたもの。」
バズっ太郎&犬「!?」
雉「タカさんは、その時身重でしてね。もうすぐ卵が生まれそうだから今日は見逃してあげるけど、卵が生まれたら私は子供達を守る、この木に近づくやつは容赦しない。卵が孵化して、子供達が留守番できる程度に大きくなったら多少はうろついても許してやるとも言ってくれましたよ。私、そう言われましたの。だから私、目一杯枝と木の実を持って、そのことをちゃーんと私のアカウントで皆に伝えたんだから!」
そういって雉は自分のSNSを見せつけてくる。
混乱気味にその雉のSNSを見るバズっ太郎と犬
犬「…タカの巣のことは、書いてないね。」
バズっ太郎「枝で作られた立派な巣の写真とか、美味しそうな果物の写真とコメントはたっぷりいっぱい書かれてるね…」
自身のアカウントを見返す雉
雉「あら…あら…そうか…私、また余計なことばかり言って…大切な事を伝えてなかったのですね…そうですか…」
口はなんとか回ってるが、明らかに気落ちしている。
雉「ありがとうございました…では…」
バズっ太郎「…これから、どうするんだ。野鳥のもとへ帰って今の事を説明すればただではすまないだろう。」
雉「はい。例え謝ってもこのままでは私が嘘をついたことには変わりません。一番大切な事を、言うべき事を言わずに片寄った話を吹聴したせいで、野鳥のみなさんにもタカさんにも迷惑かけました。糾弾を受けるのは当然です。」
犬「じゃ、じゃあどうするんすか。」
雉「私は、嘘はつきません。ちゃんと、ケジメはつけますとも。」
決意をこめて、雉はシンプルにそう言った。そして、雉は自分のとれるケジメの付け方を語った。
バズっ太郎「なるほど…」
犬「いや…それ無茶苦茶危ないですよ。下手したら、てか十中八九、タカのエサになりますよ?」
雉「それだけの事をしました。野鳥の皆さんも、タカのエサになりかけたのだから、それは当然です。」
バズっ太郎「…あなたの覚悟はわかりました。でも、このままだと無謀なだけです。私たちもお手伝いいたします。」
犬「え」
バズっ太郎「軽率ではあったかもしれませんが、あなたは誠実な心根のある方です。犬死にはさせません。」
犬「その言い方やめてください、バスっ太郎さん。」
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真剣な面持ちで、誰かへの手紙をしたためる雉。
釣りをしてるバズっ太郎。釣果はなかなか良さげ。
穴を掘って、鼻先を穴に突っ込んでる犬。ミミズやもぐら、穴ネズミを捕まえている。ミミズはバズっ太郎が釣りのエサにしている。
そして、雉が手紙を書き終えたらしく、その手紙をバズっ太郎に渡す。
雉「それでは、手筈通りによろしくお願いいたします。」
バズっ太郎「じゃあ、これで準備完了ですね。」
犬「雉さん、本当に気をつけて。結局、一番危険なことやるのは変わってないんですからね。」
雉「はい、ありがとうございます。」
そうして、雉のケジメは行われる。
場面変わって、タカの巣のある木
タカは産卵を終えて、今は巣で卵を温め、寝ずの番をしている。
そこへ、雉がやってくる。
タカ「雉か。何しに来た。この前言ったよな。失せろ。」
敵意を隠そうともせず、猛禽類の鋭い目付きと強い言葉で雉を威嚇するタカ。
雉「はい、思い出しました。タカさんの事情も承知してます。でも、申し訳ありません。今一度、枝と木の実をいただきたいんです。お邪魔はしません。」
雉が一歩、木に近づく。
タカ「ダメだ。私以外の他の獣の匂いが木につけば、それを狙う獣がやってくる。キリがない。失せろ、それ以上よると容赦しない。」
タカの足に力が入り、翼が膨らむ。臨戦体勢に入った証拠だ。
雉「…はい。タカさんが言う事が正しいです。しかし、申し訳ありません。私にも通すべきケジメがあるのです。」
雉も翼を広げて飛ぶ。
タカ「今日の晩飯にしてやる!」
狩りの開始だと、タカが一気に襲いかかる。
雉は木に突っ込んでいく。ガサガサと木の枝や葉が揺れる。雉はその小柄さゆえに木の枝の間を縫えるが、タカは雉より大柄なせいでうまく飛べない。加速も伸ばせない。
それを見越して、雉は枝を一本折って嘴に加えると、すぐさま遠くに離れていく。木から離れた雉をタカも追おうとするが、卵があるので巣からあまり遠くに離れるわけにはいかない。
一目散に逃げる雉を、エリアの外に出たら深追いはしない。
雉は、回収した枝を一本、遠くに置くと、またタカの巣に近づいていく。
再び木の枝を雉が掻い潜る、枝がバサバサと折れ、揺れる。タカも体格を活かして強引に木の枝をなぎ倒しながら雉に迫る。
そんな攻防を繰り返しながら、雉は一本一本、枝を集めていく。
しかし、10回目のトライでとうとうタカが雉に迫りつつあった。
度重なる雉のアタックで、タカの進路を阻んでいた木の枝がどんどん折れていき、木の中でもタカが飛び回るスペースがどんどん拡がってきていたのだ。
爪でえぐられこそしなかったが、思いっきり蹴り飛ばされてしまった雉は、吹っ飛ばされつつフラフラと飛行して逃げようとする。
狩猟者としてのスイッチが入ったタカは、逃がさぬとばかりに雉を追いかける。
このまま雉に追い付く、あとは爪を立てて仕留めて終わる。
そのギリギリのところで、邪魔が入った。
犬がワンワンと吠えながら、木の周囲をうろつき、木を見上げてガリガリと爪を立てている。
これはまずいと、タカは即座に巣にもどり、眼下の犬を、翼を拡げて威嚇する。
すると犬はすぐさま踵を変えて逃げていき、いつの間にか雉もいなくなっていた。
お陰で木が荒れてしまい、余計な体力を使ってしまった。苛立ちも収まらぬ中で、雉は一体何がしたかったのか。
枝を数本とったところで、巣が作れるわけもなく、ぼろぼろになることはわかってたはずなのに。
苛立ちと疑問が入り交じった中で、ふと眼下の木の根本を見ると、大量の魚やもぐら、ネズミの肉が置かれている。これだけあれば巣を離れて狩りをしなくても、卵の孵化に集中するだけの栄養は十分確保できそうなごちそうだ。
それに添えられた手紙を見る。
『タカさんへ 大切な孵化の時期に心中乱してしまいましたこと、重ねてお詫び申し上げます。こちらの食材をどうぞお納めください。 雉より』
アタックをしかけて木を荒らし、その上でこんなものをいつの間にか残していたことに疑問がつきないタカ。
それに、食料の回りにヒトの足跡がある。理由は不明だが人間が雉に協力してたなら、タカへの武力行使もできたろうに、どうやら雉は本当にこちらに危害を加えるつもりはなかったらしい。
そして、持ち前の鷹の目で、新たな違和感に気づく。自分も雉も、木の枝を揺らして、折って、ぶつかって暴れた。枝も木の実も叩き落とした。なのになぜか、枝も実も落ちていなかったのだ。
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場面変わって、タカの巣から離れたところにある原っぱ。
バズっ太郎と、犬と雉がいる。雉はバズっ太郎から応急手当を受けている。
雉「ありがとうございました、お陰で、私なりに誠意を見せることができそうです。」
バズっ太郎「うん、頑張ったね。凄く粘った。雉さんはすごかったよ。」
犬「そうですね。でも、こうなるってことはやっぱり雉1匹じゃあ無理なケジメでしたよ。」
雉「そうですね…お恥ずかしい。」
雉がやろうとしたのは、
①タカの説得、これがうまくいき、仲間へ枝や木の実を持っていき、タカの危険性を改めて告げる。これができれば理想だった。
②、①のプランがうまくいかなかったなら、タカを撹乱して枝や木の実を散らかして、その散らかった枝や実をこっそり回収する。
③そして、タカへのお詫びで、できる限りの食材をタカへ献上する。
③は、雉が確保できるタカの食材はせいぜいネズミやミミズ、虫がいいところだったろう。できる限りの食べ物を用意しても許してもらえないなら、それこそ雉が食べられるのもやむなしとさえ考えていた。
②だって、雉だけでは満足にできなかっただろう。しかし、それでも雉はやるつもりだった。なんとしてでも枝や実を、野鳥達に渡して、その上でタカの事情を共有する。自分のしてがした失敗のケジメとして、それだけは命をかけてやるべきだと、そう思っていた。
それを聞いたから、バズっ太郎と犬が協力した。
バズっ太郎がタカへの献上品となる食材を集めることで、雉ではとうてい捕まえられなかった大きな魚や動物を献上できた。
雉だけでは運べない大量のタカへの献上品と雉の手紙も、バズっ太郎が運べば、雉がタカの注意を引いてる間にそっと置くことができる。
犬は、雉が暴れまわって落とした枝や木の実をこっそりと回収する役。雉がタカの気を引いてる間に、できる限りの枝や実を集めた。これだけあれば、野鳥たちの巣作りやエサ集めにもかなり貢献できる量になってるだろう。
そして、雉は絶対に、タカと相対する一番危険な役回りだけは、絶対に一人でやると聞かなかった。それをさせてくれないなら、バズっ太郎たちの協力も固辞するという決意だった。
なので、バズっ太郎達はその気持ちを組み、決して手出しはしなかった。
最後に、少しだけ犬が吠えてタカの気を引いたが、まぁ逃げきったのは雉だけの力だし、過剰な献上品でとんとんだろう。許してほしい。
そうして、雉は獲得したエサや木の実を野鳥達へすべて渡し、タカの情報を共有し、謝罪することで己のケジメとした。
野鳥達は雉の負傷と目の前の品を見て、どれほどの覚悟があったのか察した。
そして、当然尋ねた。
野鳥達「一体どうやって、タカを出し抜いたんだ?」
雉「忘れてしまいました。鳥頭なので。」
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ところかわって、雉たちのすみかを離れた街道を歩くバズっ太郎と犬、今回の事を思い思いに話す。
犬「いやー、なかなかに刺激的な経験でしたねー。動画に撮影すればよかったですよ。絶対バズりましたよ。タカと雉の空中戦なんて。」
バズっ太郎「本人の同意のない撮影は盗撮だよ。それに、タカは我が子を守ろうとしてただけなんだから、勝手にネタにするのは絶対にダメだ。」
犬「えへへぇ、やだなぁ、わかってますよぉ。でも、雉って根性あったんですね。俺知りませんでしたよ。」
バズっ太郎「そうだね。第一印象は無責任で軽薄な発言をするやつだと思ってたけど、自らの発言を、どこまでも誠実に責任持とうとするあの姿勢には感じるものがあったよ。僕も誠実や正直を大事にしてるつもりだけど、自分の発言にあそこまで覚悟を持って殉じられるかというと自信ないよ。」
犬「あははー、それはさすがに過大評価ですよ。もともとはあいつがタカの情報忘れて舞い上がった結果の自業自得だし、よく言うでしょ『雉も鳴かずば撃たれまい』って、いででで!」
雉をちゃかした発言をした犬が急に悲鳴をあげる。犬の背中に雉が止まっているのだ。爪に毛が巻き込まれて引っ張っているようだ。
雉「鳴かず飛ばずで撃たれず終わるくらいなら、私は鳴いて飛んで、銃弾躱して生ききりたい雉ですの。」
犬「いでで!わかったから離れろ!」
ブルルと体を震わせて犬が雉を振り払う。
バズっ太郎「やぁ、雉。ケガはもういいの?」
雉「お陰さまで。それに私、鳥頭なので痛みもすっかり忘れてしまいましたわ。ところでバズっ太郎さん。」
バズっ太郎「うん?」
雉「お腰につけたKB-DAN-5で、私とフォローしあいませんか?」
バズっ太郎「え、いいけどなんでまた。」
雉「私もお二方についていきます。せっかくの旅仲間なんですからそれくらい当然です。」
バズっ太郎「いいけど、自転車旅だし、決して楽じゃないよ?恩返しか何かのつもりならそんなの…」
雉「恩返し?なんのことですか?恩を返すのは鶴の役目で雉の役目じゃありません。私があなたに返す恩があったのですか?忘れてしまいましたわ鳥頭なので。私がついていくのは、私がそうしたい、私の心に従ってるだけです。そんなつもりは毛頭ありませんので。」
犬「こ、こいつ…」
雉「まぁ、でも、旅は道連れ、世は情けともいいます。共に旅する仲間なのですから、私にできる事なら手助けするのはやぶさかではありません。」
バズっ太郎「ふふっ、わかった。よろしく雉。賑やかになりそうで嬉しいよ。」
こうして、バズっ太郎の一向に雉が加わった。この賑やかな息をつかせぬトークと、たまに出る素直になれない乙女チックムーヴが一部の層に受けて、濃いファンがついてバズっ太郎のチャンネルが伸びたのはまた後日の話である。
非常にねっとりとしたクセのある雉への求愛コメントがつくようになってバズっ太郎が微妙な気持ちになったのは言うまでもない。
西尾維新や、川上稔の「終わりのクロニクル」が好きなので、キャラクターの掛け合いが好きです。
おしゃべりな雉は書いてて楽しいやつです。以後、よろしくお願いします。




