71話
チームを組んで最初にやったのは、活動方針の話し合いだった。
テーブルを囲んで、ひよりちゃんとるなちゃんが少し真剣な顔をする。
「まず確認したいんだけど……」
ひよりちゃんが口を開く。
「私たちは、安全優先でいきたい」
るなちゃんも頷く。
「無理な戦いはしない。確実に勝てる相手だけ狙う感じで」
(うん、いいと思う)
私はすぐに頷いた。
「私もそれでいいよ」
そう言うと、2人は少し安心したような顔をする。
だから、続けて言った。
「そのために、あのお香でレベリングしてるし」
「「……え?」」
ぴたり、と空気が止まる。
(あれ?)
ひよりちゃんとるなちゃんが、同時に首を傾げた。
「いや……ちょっと待って?」
るなちゃんが手を上げる。
「それ、安全優先と真逆じゃない?」
「モンスター集めるの、普通に危険だからね……?」
ひよりちゃんも苦笑いしている。
(そうかな……?)
少し考えてから説明する。
「ちゃんと相手は選んでるよ?」
「危険なモンスターは使わないし」
「それに、もし危なくなったら――」
少しだけ間を置いてから、
「【トラベル】で逃げるし」
そう言うと、2人は一瞬黙った。
「……あー……」
「それは、うん……」
実際に体験しているからか、強く否定はしてこない。
「あと、陣地も作るし」
「ちゃんと準備すれば、安全だよ?」
自分としては、かなり堅実なやり方のつもりだった。
しばらく沈黙。
そして――
「……まぁ……」
「実際、生きて帰れてるしね……」
2人は渋々といった様子で頷いた。
(よかった)
納得してもらえたみたいだ。
「すぐ慣れるよ」
そう言うと――
2人は、なぜか引きつった笑みを浮かべた。
(……?)
話は、そのまま活動頻度の話になる。
「あとさ……」
るなちゃんが少し呆れたように言う。
「兎見さんって、どのくらい潜ってるの?」
「毎日だよ?」
「「毎日!?」」
声が揃った。
(あ、びっくりしてる)
「うん。だいたい毎日」
そう答えると、2人は顔を見合わせた。
「いや、無理無理……」
「普通やらないから、それ……」
ひよりちゃんが苦笑する。
「迷宮って、体力もだけど精神的にも削られるし……」
「専業の人でも毎日は潜らないよ?」
(そうなんだ……)
初めて知った。
自分では、それが普通だと思っていたから。
「私たちも、基本は週末だけだよ」
「平日は学校あるし、バイト代わりだしね」
るなちゃんが肩をすくめる。
(なるほど……)
生活の一部、という感じなんだ。
少し話し合って、結論が出た。
「じゃあ――」
ひよりちゃんがまとめる。
「チームとしての活動は週末だけ」
「それ以外は各自で、って感じでどう?」
「うん、それでいいと思う」
るなちゃんも同意する。
私も頷いた。
「分かった」
「私は今まで通り潜るね」
そう言うと、2人はまた微妙な顔をしたけど、特に止めはしなかった。
そして、チームとしての具体的な活動内容。
「基本は――」
るなちゃんが指を折りながら言う。
「レベリングと、お金稼ぎ」
「で、その手段が……」
ちらっとこちらを見る。
「お香、だね」
「うん」
私は頷く。
「効率いいし」
「……効率は、うん……」
ひよりちゃんが遠い目をする。
こうして。
私たち【兎さんと愉快な仲間たち】の活動方針は決まった。
安全第一。
……のはずなんだけど。
(ちゃんと安全だよね……?)
ふと、少しだけ考える。
でもすぐに、
(うん、大丈夫)
と結論づけた。
今まで問題なかったし。
これからも、きっと大丈夫。
そう思いながら、
次の週末のことを、少し楽しみにしていた。




