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魔女になりたくない魔法使い  作者: 甘塩
パルメ地方編
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第65話 古びた魔法陣の記憶 前編

 週が明けた月曜日の朝、私が支部の執務室に顔を出すと、アリシアさんとエルザさんが手招きしてきた。

 挨拶を交わした後、早速本題に入る。魔法省職員の調査で、ここから所要三時間ほどの距離にあるアリコ島という島に、謎の魔法陣の痕跡があることがわかったらしい。魔法陣は効力を失ってから相当年数が経っているようで、危害を及ぼす恐れはないけど、発見した職員が解読できないほど難解なようで、アリシアさんと私に白羽の矢が立ったようだ。…なるほど、魔法陣の解読か。おもしろそう。

 …ということで、早速アリコ島に向かって海の上を飛ぶ私たち。今日も白い鳥がミャーミャー鳴いていて長閑である。

 ポルト海は本当に島が多く、少し高度を上げて辺りを見渡すと、至る所に島が見える。人が住んでいる島だけで百五十あるわけだから、無人島も含めたらもっとたくさんの島がある。島は大小様々で、山がそびえ立つ島もあれば、歩いて簡単に一周できちゃいそうな小さな島もある。

 海といえば、水平線までだだっ広い大海原をイメージしがちだけど、この海はそれとは違って、島が織りなす箱庭のような景色が広がっている。二つの島がほとんどくっ付くように並んでいて、間を水路のような海が横切る不思議な風景を眺めながら、私とアリシアさんは先を進んで行く。

 幾つもの島を越えた先に、目的地であるアリコ島が見えてきた。私たちは降下して浜辺に降り立った。家はいくつかポツポツと立っているくらいで、閑散としていた。

 アリシアさんは地図を広げて、魔法陣の場所を確認する。


「もう少し先に行ったところのようですね」


 私とアリシアさんは歩いてそこまで行ってみることに。浜辺の向こうは一転して切り立った崖になっていて、全体的に山がちな島のようだ。

 数分歩いたところで、古びた桟橋が見えてきた。昔使っていた船着場だろうか。使われなくなってから結構経っていそうだ。


「この近くのようですね…」


 アリシアさんは辺りをキョロキョロと見回す。私も落とし物を探すように見回すと、地面に薄く曲線が描かれているのが見えた。


「あ、アレじゃないですか?」


 私が声をかけ、そばに寄ってみる。……と、確かに魔法陣が描かれていた。ところどころ消えちゃっているし、文字も薄くてよく見えない。しかも見た感じ、簡単な魔法陣ではなく、熟練者が描いた複雑なタイプだ。むしろ相当年数経ってるのに完全に消えてないのが凄いのかもしれない。


「…これは難しいですね。下手に魔法をかけると消えてしまいそうですね…」


 アリシアさんも顎に手を当てて悩む。私は魔法陣をじーっと見て、解読できそうなところを探す。描き方に癖があるというか…なんか、私と描き方が似てる…?


「あの…魔女の方ですか?」


 不意に声をかけられて、私はビクッとして顔を振り向ける。……と、そこに女の人が立っていて、珍しそうに私たちを見ていた。


「魔法省のアリシアという者です。すみません、断りもせずに」

「いえいえ!良いんですよ。もしかして、その魔法陣ですか?」

「はい。用途不明の古い魔法陣があると聞きまして、調査に来たのです」

「そうだったんですね。…その魔法陣、わたしが小さい頃にここを訪れた魔女の方が描いたもので、もうかれこれ…三十年近く前ですね…。顔は…よく憶えてないんですけど…」

「なるほど…、そんなに前の魔法陣なんですね…。よく残ってましたね」


 アリシアさんは感心したように魔法陣を眺める。三十年か…。私の人生よりもっと長い年月を越していたなんて…。


「あ…なんとなく思い出してきました」

「ほんとですか!」


 私は振り向いて女の人に目を向ける。女の人も私の顔をじっと見ていた。


「確か…あなたによく似ていました」

「え……?」


 女の人の言葉に、私はポカンとしてしまった。

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