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魔女になりたくない魔法使い  作者: 甘塩
パルメ地方編
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58/75

第58話 気になること 前編

 メリーベルに来てから初めての週末を迎えた。この日はアリシアさんと買い物したり美味しいものを食べたりする予定だ。宿の食堂で朝ごはんを食べた後、身なりを整えて外へ出る。今日は前にミロルで買った服を着て、ローブは宿に置いておくことに。

 待ち合わせ場所である噴水広場に辿り着くと、噴水のそばでアリシアさんが待っていた。普段の魔女の格好と違って、白を基調としたふんわりした服装で三角帽子も被っていない。帽子を被っていない姿はレアである。ルージュの赤い髪もきれいだったけど、やっぱりアリシアさんの輝く金色の髪はビューティホーだ。


「アリシアさん、びゅーてぃほーですね!」

「シエルさんこそ凄く似合ってます…!可愛すぎてうずうずします…!」


 アリシアさんが早くも抱きつきたいオーラを出している…。休日で人多いから、さすがにここで抱きつかれるのはまずい…。

 私は少しの警戒心を持ちながらアリシアさんと街歩きを始める。右を見ても左を見ても建物がぎっしりと並んでいて、道にはたくさんの人が行き交っている。上を見上げれば、たまに箒に乗った魔法使いが飛んでいくのが見える。

 ルージュが現れた時にはどうなるかと思ったけど、あれから何も事件は起きず、今もこうして日常を歩んでいる。ルージュはなんでこの地方に来たんだろう。

 私は試しに箒を発現させて、まだ箒の柄の先端に残してある追跡の魔法陣を見てみる。隣を歩くアリシアさんもそっと覗いている。魔法陣にはまだ光の点が浮かび上がっていた。少し位置が変わっているので、別の島にいるようだけど、まだ遠くに移動していないのが意外だった。また捜す手間が省けるから良いんだけど、一体何をしているんだろうか。島で魔獣を増やしている?周りが海だから、魔獣を増やすのに必要な水も簡単に手に入る。

 これだけを考えれば、ルージュが島に残っているのは不穏だと考えるけど……、一昨日の様子を思い出すと、そう思えない自分がいた。…ただ、気にはなる。


「アリシアさん、…せっかくの休日なのに申し訳ないんですけど、午後からまた島に行きたくなっちゃって…」


 私は視線を下に落とし、語気を弱めて口に出す。アリシアさんは私との休日を楽しみにしていたはずだ。


「良いですね!シエルさんと島巡りもしたかったんですよ。まだ二つしか行ってないですし!」


 予想に反して、乗り気で私の両手を掴んできた。…やっぱりアリシアさんは優しい。私の考えてることもわかっていて、こうして合わせてくれている。…だから、午前だけでもアリシアさんを楽しませたいなって。


 この後は服を買ったり、小物類を見て回ったり、パルフェを食べたり、紅茶を飲んだりと、存分に都会を楽しんだ。地元じゃ考えられないようなたくさんの選択肢がある都会。前にフーゴーさんが言っていたように、島からこの街に移り住む人が多いのもわかる。しかも、島は移動が不自由だ。

 …でも、島には島の良さがある。あの星空だって、今この場所からだったら見られない。あの静かなさざなみだって、島だからこそ聞けた音かもしれない。

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