第47話 船着場にて 後編
船着場に無事着岸した船。…からいの一番に飛び出したのはお客ではなく船頭で、大股で船着場に足を付くと、そのまま勢いよく走ってきて私にお礼を言いにきた。
「魔女様っ!先ほどはありがとうございましたっ!」
「あっ…!そんな畏まらずに…!あと…私は魔女じゃないです…。こっちの方は魔女ですけど」
私は咄嗟にアリシアさんに目を向ける。こちらは帽子被ってますから正真正銘魔女ですよ。
「いやいや…!あなたも魔女様みたいに助けてくださいましたので魔女様ですっ!」
「ほへ〜〜…」
私は謎理論に返事できずに思考を諦める。もはや正式に魔女かどうかは関係ないようだ…。それは困った…。
「魔女様っ!何をご所望でしょうか!?カエルですか?やっぱりカエルなんですか!?」
…童謡の読み過ぎですね。…っていうかエネルギーが凄い。やっぱり体力使う仕事だからだろうか。
「いえいえ、お礼とか何もいらないですよ。それより、私と同じくらいですかね?おいくつなんですか?」
早いところ話を終わらせたかったので、無理やり話題を切り替える。
「17です!」
ドンピシャだった。
「私と同い年ですね」
「そうなんですか!?同い年でもう魔女になられてるなんて…!凄い…!」
「いや…なんで魔女じゃなくて…」
問答無用で魔女判定されていることに困っていると、後ろからお客の一人であるおじさんが声をかけてきた。
「魔女さん達ありがとね。干物食べる?」
そう聞いてきて、近くの干し網から魚を二匹手に取って差し出してきた。ひょっ!?魚の干物…!?…初めてだ。…どんな味なんだろう…。
「良いんですか!?いただきます!」
そう言って嬉しそうに受け取ったのはなんとアリシアさん。私が驚いて目を向けた時には既にもしゃもしゃ食べていた。
「美味しいです!味がしっかりしてますね!」
「だろ?干物も鮮度が重要なんだよ」
アリシアさんの反応におじさんは調子良くなっている。…凄いアリシアさん。漁村の人とも仲良くできるとは…。
その後、気前の良いおじさんが私達を家に上がらせてくれた。船頭のフーゴーさんもおじさんに呼ばれて入ってきた。
「魔法省の人か!いやいや、お世話になってるよ!ありがとね」
おじさんがご機嫌な声色でお礼を言う。エルザさんが言ってた、魔法省の人が島の人を乗せて行き来してる件か。そうそう、この島に来た目的はそこらへんの話を聞くためだ。
「実は私達は昨日パルメ地方に来たばかりでして、現状あまりこの地方のことをよく知らないんです。良ければ詳しく教えて頂けませんか?」
アリシアさんが丁寧な口調で話を窺う。さすがアリシアさん、優しい声色できちんと聞きたいことを聞くスタイルである。
「そうなのか。フーゴー、おまえさっきからだんまりだな。説明しな!」
「うげっ…、キラーパスかよおじさん」
フーゴーさんは嫌そうな顔をするが、おじさんは構わずハハハと笑っている。…大変そうだと、私が同情の目を向けると、フーゴーさんが少し恥ずかしそうに話し出した。
「まぁ、見ての通り、俺みたいなのが船頭やってるくらいだから、人手が居ないんですよ…。そもそも人も少ないし。船を漕ぐのは結構力使うんで、おじさんみたいに年齢高いとたまに体壊して大変なんです」
そう言った途端、おじさんがハハハと笑いながらフーゴーさんの頭をパシンと叩いた。……。
フーゴーさんは痛そうに頭をさすりつつ口を尖らせる。
「そんな顔すんな!まぁ若いので喋ってな!」
おじさんハハハと笑いながら奥へと行ってしまった。
「あぁ言ってるけど、マジで一回靭帯切ってますからねあの人」
えぇ…!?靭帯…?聞いただけで痛い…。
…それにしても、ホントに人が居ないんだな。でも、ちゃんとフーゴーさんは私と同い年ながら役目を全うしている。今はちょっとぎこちないかもしれないけど、それは慣れれば大丈夫だし、自分がやらなきゃというのが伝わってきた。…そんなフーゴーさんを、私は凄いと思った。




