第45話 島に行こう 後編
メリーベルの街はとっても広い。空から見渡しても建物がぎっしりと詰まっている。着いた時は夜だったからなんとなくだったけど、今見たら、なるほどミロルより都会だし、なんだったら私が今まで訪れたことある街で一番都会かも。魔法学校も田舎にあったし、地元も田舎だし、田舎が普通だった私にとって、刺激は十分過ぎるほどだ。
一日じゃ到底回りきれない規模で、時間をかけてあちこち見て回りたいなぁ…なんて思ったりして、すっかり旅行気分になっている。…でも、これから向かうのは海に浮かぶ島。都会の賑やかさとは無縁そうな静かな空間が広がっていそうで、こんな大きな街から箒で一時間で行けるのは、お手軽スポットとして良いと思う。
「シエルさん!海が見えてきましたよ!」
アリシアさんが前方を指差す。街並みの向こうにコバルトブルーの美しい水平線が見えてきた。
「おぉ…!ビューティホーですね!」
「シエルさんの言い方かわいいです!」
アリシアさんがまたもや興奮してしまう。もうどこにスイッチがあるのかわからない…。そのうち常時オン状態になってしまいそう…。でも面白いので私もノってみる。
「アリシアさんも言ってみてください」
「えっ…?わ、私がですか…!?びゅ、びゅーてぃほー…?」
アリシアさんぎこちなくて思わず笑ってしまった。スイッチオン状態なら躊躇いなく言うかもと思ったけど、そこは羞恥心が残っているようで、違和感ありありな感じだった。
「アリシアさんもビューティホーですよ」
私はニコッと笑みを浮かべる。結局何が言いたかったかというとこれである。
「そ、そういうシエルさんはソーキュートですっ!」
アリシアさんは妙に力んでいてどこかぎこちない。いつもは私がペースに飲まれているけど、今この時だけは逆だった。
そして、いよいよ私達は海へと飛び出す。眼下は一面の青で埋め尽くされ、白波も立たない穏やかな海面に陽の光が照らされて輝いている。草原や森の上を飛んでいる時とは違った開放感を感じながら、海の向こうに見える島を目指してまっすぐ進む。時折白い鳥が近づいてきてミャーミャー鳴いては離れていく。何もかもが新鮮で、心地良い。
しばらく飛び続け、私達は島の浜辺へと降り立った。ここはペール島という名前の島で、数ある島の中でもメリーベルから一番近く、それなりに人が住んでいるらしい。ただ、降り立った浜辺には誰もおらず、聞こえるのは静かなさざなみの音だけ。
「あ、綺麗な貝殻」
アリシアさんが足元にあった小さな巻貝を手に取る。透き通るように白く、形もきれいだ。
「おぉ…!貝殻なんて超久しぶりに見ましたよ。キレイですね〜」
私は顔を近づけてまじまじと観察する。昔小さい頃に家族で海に遊びに行った時以来かも。私とママが魔法で砂のお城を作って、そのお城のてっぺんに、まだまだ小さかったコニーが、拾った貝殻を頑張って乗っけていたような……そんな小さな頃の記憶。
まるでタイムスリップしたかのように、あの時と変わらない海の景色。……今頃ママ達は元気にやっているだろうか。
「シエルさん…?」
耳にアリシアさんの声が届き、私はハッと意識を取り戻す。
「海がキレイで思わず見惚れちゃいましたよ」
とりあえずあははと笑って適当にごまかす。そして、私は一転してステップを踏むように砂浜を歩いて回る。柔らかな砂の絨毯が気持ちいい。
そのまま私が数歩先を行くように二人で進んでいくと、砂浜の先に船着場が見えてきた。




