第44話 島に行こう 前編
私とアリシアさんは、まず支部長に挨拶しに行った。
「コンラートだ。よろしくね」
支部長と握手を交わす。見た目四十代くらいの男性で、金髪の穏やかそうな雰囲気の人だ。帽子は被っていないけど、ローブを着ていて、袖のところに銀色の線が二本入っている。
「リアーネさんから聞いてるよ。すんごい優秀だってね!」
コンラートさんは期待に満ちた目をアリシアさんに向ける。すごいじゃなくてすんごいです。
「いえいえ…!そんな…!」
アリシアさんが手を横に振って困り笑いを浮かべる。私なら恥ずかしいのと同時にプレッシャーを感じてしまうけど、アリシアさんはそこらへんの対処がうまい。
その後、アリシアさんは私のことも話してくれて、コンラートさんは快く同意してくれた。
支部長室を後にした私達は、アリシアさんの所属先である部署に行き、一通り挨拶して回る。なんか私も新入りで配属されたような気分だ。ドキドキ…。みんな良い人そうだし、頭良さそう…。
「マネージャーのエルザよ。よろしくね」
アリシアさんの直属の上司であるエルザさんは、茶色の髪をポニーテールにしていて、背が高くてスタイルが良い。リヒトより背が高いかも…。年齢は聞いてないけど、三十代くらいの見た目だ。
この後、エルザさんに応接室へと連れられて、今後のことについて会話した。
「パルメ地方にあるポルト海には、たくさんの島が点在していて、無人島もあるけど、半分以上の島には人が住んでるの。中には一家族しか住んでないみたいなところもあったりね」
「プライベートな島ですね」
私の返しにエルザさんは微笑む。一家で島を貸し切れるなんて羨ましいなぁ。海に縁がない私にとって、綺麗な海に浮かぶ島は幻想の世界だ。
「ただ、いろいろと問題があってね。魔法使いならどうってことないんだけど、魔法が使えない人は海を渡るのに船が必要で、漕ぎ手も必要。今はその漕ぎ手が不足していて…、私達魔法省の職員が協力して、島の人を一緒に箒に乗せて行き来したりしてるの」
…そういえば、リヒトが前にそんなこと言ってたな。魔法使いが重宝されてるって。なるほどそういうことだったのかと、パズルのピースがはまる。…それにしても、どのくらい島があるんだろう。
「島はどの程度あるのでしょうか」
アリシアさんの方から尋ねてくれた。
「ええっと……人が住んでいる島だけで百五十くらいね」
ひゃ、ひゃくごじゅう……!?
多くて十個か二十個くらいだろうと思ってたら桁が違った。
…ということで、まずは現状を知るべく、一番近い島に向かうことに。ここから飛んで一時間くらいとのことなので、今までの長距離移動と比べたら近いもんだ。
早速、私とアリシアさんは箒に乗って島へと向かう。まずは海を見たい。あと浜辺でのんびりしたい。……仕事のはずなのに、頭の中に次々と欲が浮かんでくる。
「初日からすみませんシエルさん」
「いえいえ、謝ることじゃないですよ」
私は笑みを向ける。アリシアさんも釣られるように表情を和らげた。…と、思ったらまたも両手を箒から離し、グッと拳を握りしめて迫ってきた。脇見運転ですよ!
「島に行ったらせっかくですし、浜辺でゆっくりしましょう!きっとリラックスできますよ!」
とりあえず首を縦に振っておいた。




