第43話 新たな地方へ 後編
日もすっかり暮れた夜の八時ごろ、ようやく視界にまとまった街の明かりが見えてきた。明かりの範囲からして大きな街だとわかる。
やぁっと着いたぁ〜…。長かった…。さすがに半日以上という長時間移動は、魔力的には余裕があっても疲れるなぁ。…明日休みじゃ…ないんだよね…?アリシアさん休まなくて大丈夫なんだろうか…?
私が少し心配そうにアリシアさんを見つめていると、アリシアさんもこちらを向いて柔らかい笑みを浮かべる。
「お疲れ様です。今日は宿に行ってゆっくり休みましょう。明日も無理せず、休んでいても大丈夫ですよ」
「いえいえ!アリシアさんの右腕ですから私!休んでられません!」
勢いで右腕発言しちゃったけど、自分で言っといて恥ずかしい。お言葉に甘えて……なんて一瞬思っちゃったけど、ローブを見て心を引き締める。
「心強いです。でも本当に無理しないでくださいね?」
アリシアさんは本当に優しい。自分のことより私のことを第一に考えてくれている。私だけじゃない、リヒトのことだってすごく気にかけていたし、他人をこんなにも思いやれるアリシアさんを私は尊敬する。
メリーベルの街は夜でも人通りがそれなりにあって賑やかだ。ざっと見回した感じ、確かにミロルより大きな街だなぁと感じた。メリーベルは海に面した街だけど、今いる場所からは数多くの建物に阻まれて海が見えない。
宿屋も立派なもので、背が高くて横幅も大きい建物だった。アリシアさんは寮があるけど、着いた時間も遅かったので、今日だけ同じ宿に泊まることに。
部屋に入った私は、ローブを脱いでクローゼットに掛けると、ベッドに飛び込んでそのまま眠りにつきそうになる。いかんいかんと起き上がり、シャワーを浴びにいく。
シャワーを浴びている最中、昨夜のことがフッと頭に浮かぶ。…リヒトが私のことを…かわいいって……その…かわいい…あぁ…かわいいって……うぁぁーー!
シャワーの後、ベッドに寝っ転がって熱を冷ましつつまったりと過ごす。明日からまた新しい環境に身を置くわけで……ドキドキするけど…別のドキドキもあって紛らわしいというか……頭が整理できない……。いや、一旦冷静に……なろう!よし!もう寝よ。…私は掛け布団を被って目を瞑った。
翌朝、私とアリシアさんは宿屋の食堂で朝食を食べた後、パルメ支部の建物へと向かった。建物はこれまた立派な宮殿スタイルで、例に漏れず昔の宮殿を活用しているんだろうなと。ミロルで初めて支部を訪れた時とは違った緊張感が走る。チラッとアリシアさんに目を向けると、さすが普段通り落ち着いていた。
「なんだか緊張しますね」
「えっ…?緊張してるんですか?いつも通り落ち着いてるなぁって思ったんですけど」
心読まれてるのかと思うくらいタイムリーな発言で思わず驚いてしまった。アリシアさんでも緊張することあるのか。…と意外そうに見る目を向けてしまう。
「見た目だけです。心は緊張してるんです」
「私なんてすぐそわそわしちゃうのに」
「そこがシエルさんの素敵なところなんです!」
「ここでスイッチオン!?」
緊張していたはずのアリシアさんが一転して目を輝かせて迫ってきたので、私はとりあえず落ち着かせるのだった。




