第36話 終わりは必ず 後編
魔法陣のおかげで書類チェックは素早く終わり、机の上がすっかりきれいに片付いていた。私はリヒトの隣に座って、いまだにローブをスリスリしている。
「…気に入ってるな」
「うん。…リヒトも羽織ってみる?」
私はローブを脱いで、リヒトに渡す。リヒトは戸惑いつつも素直に羽織ってみる。
「やっぱり恥ずかしい」
羽織ったもののすぐに返してきた。恥ずかしがり屋め。…人のこと言えないけど。
私は再度ローブを着て、机に頬杖をつく。仕事も片付いてまったりとした時間。今度こそ平和な時の流れだ。
「またどっかで会えるかな…」
私はほとんど無意識にポロリと言葉を漏らした。…今思えば、ミロルで再会したのは奇跡だったのかも。国中散り散りばらばらに働いている中で、そうそう会えるもんじゃない。リヒトだって、三ヶ月後にはまったく別の地方に行ってしまうかもしれない。
「会えるだろ。会う気でいればいつか必ず」
「かっこいいこと言うじゃん。カッコつけー」
私は頬杖をついたまま、ニヤニヤしてリヒトに目を向ける。隙あらばリヒトをからかいたくなる自分がいる。…それがしばらくできなくなると思うと……寂しい。
「良いだろ。男なんだからカッコつけでも」
リヒトは私の視線から逃げるようにそっぽを向く。…耳が赤くなってる。
「シエルこそ…たまには……いや、なんでもない」
「なになに?気になるじゃん」
私は肘でリヒトの背中をつつく。それでもリヒトはそっぽ向いたまま。むむ…しぶといな。こうなりゃ振り向かせてやろうじゃないか。
私はさっきから気になってるリヒトの赤い耳たぶにそーっと触れてみた。
「わっ!?お、おまえ…!」
リヒトが飛び跳ねるようにビクッとして、勢いよくこちらを向いた。ふふふ、作戦成功。
「耳赤いよ?」
私はニヤニヤしながら指摘するーーと、リヒトが指で私の頬をつついてきた。
「おまえこそ頬が赤いぞ…!」
仕返しとばかりに虚勢を張るリヒトだけど、頬をつつかれるなんて思ってもなかった私は心臓が高鳴りしてしまう。
「わ、悪い…。嫌だった?」
リヒトが一転して勢いを無くして謝ってきた。それが妙に微笑ましくて笑みを浮かべてしまった。
「全然。ほっぺつつかれるの結構好きかも…」
私は顔をリヒトに寄せてつつかれ待ちの体勢に入る。なんかすっごく恥ずかしくて、目を合わせることなんてできないんだけど、自然と身を寄せてしまう。
グゥーー…
次の瞬間聞こえたのはお腹の鳴る声。ほんとに突然だったので、私は鳴ってしまった張本人のリヒトの顔を見てしまった。リヒトは見たことないくらい顔を真っ赤にして立ち上がった。
「朝飯食ってなかったんだ…!」
「えっ…!?そうだったの!?ごめん…!」
「いや…いい…。ちょっとパン買ってくる…」
リヒトはいそいそと執務室を出て行った。ーーーが、次の瞬間、リヒトの驚愕の声が響き、とんでもないことが起きた。
「あ、アリシアさん!?そんなところで何してるんですか!?」
「み、見つかっちゃいました…!」
「い、いつから居たんですか!?」
「ついさっきです…!さっき…!」
あわわわわわわ……!と、とんでもないことになってしまったわわわわ…!




