第35話 終わりは必ず 中編
私はリヒトの横に立って、書類チェック魔法陣の描き方を教えている。なんだか魔法塾を思い出してこそばゆい。リヒトも私の言うことを真面目に聞いて杖を動かしていく。時間はかかるけど、それが却って心地よく感じる。他に誰もいないっていうのもあると思うけど。
「うん、これで完成だね!」
私は試しにチェック済みの不備がある書類を魔法陣の上に置いてみる。…と、きちんと弾いてくれた。
「よし、問題無し!」
「おー、スゲー」
リヒトは素直に感嘆の声をあげる。教えられながらも自分で描き上げたっていうのは大きい。
「ありがとな」
「ふふふ、授業料ちょうだい」
私は冗談のつもりで手を差し出した。ほんの遊び心なのである。リヒトだって文句言ったり渋る顔をしたりすると思った。……そしたら、リヒトが立ち上がって私にこう言ったのだ。
「現物でも良いか?」
「…え?いや良いよ!冗談だよ冗談!」
私は慌てて弁明するけど、リヒトはそのまま執務室の奥へと行ってしまった。一人になった私は、なんかドキドキしてしまう…。うぅ…、朝早く起きたせいなのかな…。
少ししてリヒトは紙袋を持って戻ってきた。そしてそれを差し出す。
「…これで」
「…これは?」
「…とりあえず開けて」
私は言われるがままに紙袋から白い包みを取り出す。…服?持った瞬間そんな感じがするけど、結構ごつめな感じだし……なんだろ?
包みを剥がしてみるとーーー紫がかった黒のローブが視界に映った。
「えっ…!?ローブ!?」
私は驚きつつも畳まれたローブを広げてみる。ほんとにローブだ。厚手で凄く上質な生地だとわかる。こんな上質なやつ、かなり値が張るんじゃ…。
「これ…私に…?いいの…?」
「帽子じゃないから良いかと思って」
リヒトは恥ずかしそうにそう言う。私は思わずクスッとしてしまった。確かに、ローブなら魔女じゃないと身につけられないというルールは無い。…でも、やっぱり魔女っぽい見た目になるから、今まで着ようなんてまったく思わなかった。…じゃあ、これもいらないと返すのか?…ううん。そんなことしない。
私は試しに袖を通して着てみる。厚手でしっかりした生地だけど、ふわふわしてて凄く着心地が良い。
「似合うかな…?」
私は恥ずかしいけどリヒトに視線を向ける。……やっぱり恥ずかし過ぎて目を合わせらんない。
「似合う」
リヒトの小声が聞こえてきた。小さ過ぎて、耳を澄ましてないと聞き取れないくらい。…でも、素直に嬉しい。
「ほら、ふわふわだよ」
私は腕をリヒトの前に差し出す。自分でも顔が真っ赤だとわかる。でも、恥ずかしさより嬉しさの方が勝ってて…。
リヒトは割れ物でも扱うかのように、そーっとローブの袖を触ってきた。
「ふわふわしてる」
「ね!なんだか鳥の羽根の中にいるみたい。こんな上質な生地、生まれて初めてかも」
私は生地を頬にスリスリする。ほんとに柔らかくて、くるまって寝ちゃいそう。
「幸せ〜。ずっとこうしてたい」
なんだかとっても心地良い。…このままずっと……こんな感じでふわふわできたら良いのに…なんて。




