表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女になりたくない魔法使い  作者: 甘塩
エクサロ編
PR
33/51

第33話 返事も忘れて

 ロファの一件を解決して、エクサロに戻ってきたのは日曜の昼過ぎ。なんだかんだで一泊してしまった…。楽しかったけどね。


「ちょっと職場寄ってきます。巡回ありがとうございました」

「ゆっくり休んでね。また明日」

「じゃねー」


 駐在所に向かおうとするリヒトに私は軽く手を振る。リヒトは軽く手を上げて、一瞬だけ目を合わせると、慌ただしく去っていった。まったく…無愛想なやつめ。

 私とアリシアさんは宿へと向かう。アリシアさん曰く、そろそろミロルに手紙が届いて、早ければ明日の夕方くらいに代わりの人たちが来るかもしれないようだ。…そしたら、私たちはここを離れてメリーベルへ向かわないといけない。

 いつまでもここに居るわけにはいかないのはもちろんわかっているけど……、代わりの人たちは……さすがに大丈夫だよね?頭がリアーネさんだし、心配いらないんだけどね。


「それにしても、二人ともすっかり仲良しじゃないですか」


 突然、アリシアさんがそんなことを言ってきたもんだから、もうアタフタである。


「えっ…?仲良し!?誰と誰がです!?」

「シエルさんとリヒトくんですよ」

「えっ…!?仲良し!?どこがですか!?全然まったく嫌いなままですよ!」


 私の反応を見て、アリシアさんはクスクスと笑っている。私は必死に否定していると言うのに!


「嫌いであっても、お互い気にかけてますよね」

「そんなことまったくないですって!って言うか、あいつ急に褒めてくるようになって変なんですよ!今まで散々馬鹿にしてきたくせに!」


 これだけは声を大にして言いたい。魔法学校にいた時だって一ミリも褒めてきたことないし、ミロルで再会した当初だって憎たらしさ全開だったのに、最近熱でも出したのかってくらいおかしい!そう!あいつがおかしい!私はおかしくない!


「前にミロルでリヒトくんの怪我を治してあげたじゃないですか。翌日、リヒトくんがお礼のクッキーを私に預けた時、リヒトくん、悪口なんて一言も言ってなかったですよ」

「え……?」


 私は口を開けたまま立ち止まってしまった。あの時だよね…?絶対間違いなく悪口言いまくってたと思ったのに。


「嫌いな奴の怪我治すのはあいつくらいだから、絶対魔女にさせてくださいって。あんなに魔女に向いてるやつはいませんって」


 アリシアさんも立ち止まって振り返り、私に微笑みを向ける。アリシアさんの口から出た言葉が予想外過ぎて、私は驚くことも忘れてただ呆然と突っ立っている。


「急にごめんなさいシエルさん。ただ…、しばらくリヒトくんと会えなくなるかもしれないから…」

「あの…先に宿に行っててください」


 私はそれだけ告げて、アリシアさんが申し訳なさそうに去っていった後も、しばらくその場に佇んでいた。


 翌日、珍しく早く目が覚めた私は、朝ごはんも食べずに宿を出て、なんとなく駐在所に足を向けてみた。

 朝だとさすがにちょっと肌寒い。メリーベルへ向かうには結構な山を越えなきゃいけないから、寒さをどう凌ぐかだけど……、まぁその時考えよう。

 歩いて数分で駐在所に着いた。私がブチギレて壊してしまった建物も、すっかり元通りになって、見た目壊れたとは思えないくらいだ。ただ、修復魔法は完全元通りになるわけじゃないから、もしかすると突然ヒビが入ってしまうかも…。その時はその時で…。

 開いているかもわからないけど、とりあえず扉をノックしてみる。……少しすると、扉が開いてリヒトが顔を覗かせた。


「おいおい、こんな早くにどうしたんだよ?」

「おはよう。あんたこそもう来てるとか早いじゃん」


 私は笑みを浮かべる。リヒトは目を逸らして扉を開き切ると、そそくさと中へと戻っていった。


「お邪魔しまーす…なんちゃって」

「建物ぶっ壊したやつが言うセリフかよ」


 早速悪口……いや、その通りか。うむむ…、悪口カウントならず…。

 リヒトは自席に戻って机の上に置いてある山積みの書類に手を付ける。あの時処理していなかった分だ。元々相当な量があったからまだまだ結構残ってる。

 …あ!そっか!魔法陣消えちゃってるんだ!


「ごめんリヒト!魔法陣すぐ描き直すね!」

「それよりシエル、朝ごはん食ったのか?」


 杖を発現させて、床に魔法陣を描こうとする私に、リヒトは朝ごはんのことを尋ねてきた。もちろん食べてない。


「まだだけど?」


 私が当たり前のようにそう答えると、リヒトは隣の机に置いてあったパンを差し出してきた。


「先に食べろ。お腹空くだろ」


 私は返事も忘れて、ぼーっと眺めてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ