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38、U―――――――MA!

植物図鑑をついに完成させた。

と言っても途中から雇った画家さんたちが絵を描き込んでくれていた。最初に私がお手本に描いていたので皆さん要領よくただの植物のスケッチではなく特徴などを誇張されているものも小さな枠に描いてくれているので分かり易い。


集まってからせっせと編纂してやっとやっと分厚い植物図鑑を完成させたのだ。

そして当然完コピして自分用は確保し、出来上がったものをお父様に持っていった。


「お父様、今宜しいでしょうか?」

「ああ、アシェリか お入り」


「お父様、何かあったのですか? お顔の色が優れないようですが?」

「ああ、あまり良くない報告書が上がって来てね。ふぅー、すまない。それで何の用だい?」

「あ、その…、お忙しいお父様にお時間を頂くのは心苦しいのですが、例の植物図鑑が完成致しましたの、それでお持ち致しましたの」

「おお、そうか 見せておくれ」

父は受け取ると丁寧に1枚1枚捲り、完成品もだが中身に夢中になったようだ。カラーになりメリハリがつき内容が頭に入りやすい。無言のまま魅入っている。

それをアシェリは微笑ましく見ている。ふと我に返った父が

「すまない夢中になってしまった。素晴らしい出来だ! これは国宝ものだな! これが量産出来れば…」

「どういう事ですか?」

「これは素晴らしい技術だ、これがあれば助かる人間が大勢いるだろう。これがせめてもう1冊有れば…。いや、この手間隙をもう1冊とは気軽には言えない、もう1冊作るより別の物を手がけた方が有用だろうからな」

「そうなのですね、実はもう1冊ございます。それはわたくし用にと作った物ですが、お父様にお役立て頂けるなら嬉しゅうございます」

「何!? そうか、そうしてくれると助かる、すまないな」

「とんでもございません、後ほどお持ちいたしますね」

アシェリはお疲れのパパンにこっそり回復魔法をかけてあげた。



部屋に戻ると父の顔色を悪くした報告について考えていた。

恐らくムージマハル国とセンダーラーハン国にあった不穏な空気が本格化したのだろう。

いよいよ始まるのかもしれない。

ダリウス・トラガルトとカラバスク・パーマシーがドースン商会とセレニテに接触して来ているのもそれだろう…だがまだ接触するわけにはいかない。

お父様も私ではなくパトリシア様が婚約者になった事で、やはり所詮私の漫画の人生は夢物語と思っていた部分もあった、聖女マリアに関することも偶然の一致だと言い聞かせた。だけど今回また一つ、物語上小さな記述が現実になりつつある。

娘の予言めいた冊子を信用せざるを得なくなった。それが恐ろしいのだろう。その未来を知ってしまっただけに、今後の行方も娘の価値も…それに付随して危険になる娘の未来も。


「グレン これをお父様に持っていって頂戴」

「はい、承知致しました」



さて、今悩ましいのは…、新作を描く(他人の作品)にも1人でこなしている為時間が足りない。ある程度時間がかかるから一晩徹夜しても描き上がらない、小説も書き上がらない。疲労は自己回復させて何とかしても描く時間だけはどうにもならない。

あー手がもっといっぱいあれば!!

せめて見本があれば増やせるのになぁー。

あーーーー、完コピ機能あるんだから脳内のイメージを実体化出来ればめちゃくちゃ便利なんだけどなー。あ゛あ゛――、欲しい!欲しい!欲しい! あれも! これも! 出てこーーーーい! 来れ聖典! ワチャー! (厨二降臨 テヘペロ)


ポコん


オヤ? オヤオヤオヤ? も、も、もしや!? 

出来たーーーーー!! 万歳―! バンザーイ! ばんざーーーい!!!

気分は当確の議員のようにハッピ着てハチマキしてマイクで演説したい気分。

そして鶏が卵を産むように ヌーーーーン ポコん! ヒャッホーーーい!


良く見ると永山楓で見ていたそのもので出来上がってしまったため表紙に帯もついているし、最後の部分には製造販売関係、版とか日付けとかこの世界では訳わからんもんがいっぱいついてる。しかも他作品の紹介とかもあったりしてその一覧が懐かしい。

まあ、そこら辺はカットしてお渡ししなくちゃね。


スンゲー! イヤー願ってみるもんだなこりゃ。チート機能バンザーイ!

自分に何が出来るか分からない、だからこんなのが欲しい!って願ったわけだが、人間諦めるもんじゃないね、これでだいぶ布教活動の為の漫画や小説がババーーン!と出来る。

そうだ、桃次郎さんとか家具やヒメとか昔の絵本とかも作ったら版画の絵師とかも作りやすいよね? そうしたら領民の識字率が上がるかもしれない。そうしたらまた領の仕事が増えていくかも知れない、子供たちの夢が広がるかも知れない。短いし、こっちは平民の子たちにも役に立つからね、やってやろーじゃないの!

せっせこせっせこ夜なべして漫画や小説や絵本を魔法で生み出し、版画の原画を絵本を元に作り出していた。


凄いな、チート! 神様、仏様!! 女神様!お陰でこの世界でもオタクれます!

やっぱりこれって転生あるあるだよねー、チートって本人が強く望んだ能力が身につくのかな〜? 人に聞けないから分からないなー? 他の人ってどうなんだろう?ま、いっか。




アシェリが作った乗馬服、この世界では新しいが前世ではお馴染みの乗馬スタイルに身を包んで馬に対面した。どこで売るか悩んだ、結果 ドースン商会とヴィーナスの両店で取り扱うことにした。まあ 普通でいけばヴィーナスが相応しいのだが、ドースン商会も元はドレスを取り扱っていた、ここでヴィーナスだけで取り扱うと女性だけにしか浸透しない、今回は男性の乗馬服もお揃いで作っているので両方で取り扱いそれぞれ男女共に取り揃えることにした。


そして今日はその乗馬服をセルティスとお揃いで着てテンション爆上がり。

だってずっと引き篭もりは好きでやっていたけど、乗馬してみたかったんだよ!

小学生から中学生の頃は動物のデッサンをするために良く動物園に通っていた。様々な動物を様々な角度から見て描いて筋肉や影のつき方奥行きやバランスを研究していた。

その時に偶々その動物園でサラブレッドのお馬さんを見たのだ。物凄く美しかった! 毛並みがツヤツヤで大きくて筋肉がガッツリついていて、可哀想だけど他の馬とは存在感が違っていた。お手入れって大事だね。誇り高く気高い、馬本人も自分が別格だと分かっているみたいだった。普段はお目にかかれない馬だけどその美しさに圧倒されてついお金もないのに乗馬券を購入して乗ったよね。勿論 サラブレッドちゃんじゃないけど、馬の背中は案外高くて最初は腰が座らなくておっかなびっくり、気分的には漫画の中の人たちみたいに颯爽と乗りたかったが、手綱を短く持ってロボットダンスのような自分が滑稽だった。景色を見る余裕もない、それにう◯こ臭く獣臭くもあったし、その時は乗馬券に使ってしまったお金の事で、暫く見に来れなくなっちゃうって凹んで心に余裕がなかった。

だからいつかお金を貯めてちゃんと乗馬レッスンしたいなって思ってたんだ。

あーーー、どんな子に会えるか楽しみだ!!


「ふふ そんなにはしゃぐアーシェは初めて見たな。アーシェの乗馬服は凛々しくて男装の麗人と言ったところか、髪を一つに結って帽子を被るのも良いね。アーシェとお揃いって言うのもいい。今日は楽しもうね」

「うふふ、セルティもすっごく格好良いわ!私の旦那様って何でも出来て完璧人間ね、私もセルティに似合うように頑張らなくちゃ! ふぐ、今日はね、本当に楽しみにしていたのよ? でも初めてだから優しく教えてね?」

「勿論だよ、愛しい奥様のご要望にお応えしますとも」


それからセルティスとアシェリは時間をたっぷりかけて練習した。

最初は前世とは違い馬に乗るのにいきなり男の人が四つん這いになって踏み台になるからビックリした。でもそれが当たり前って言うの、だから後日 踏み台を作ってもらった。その時は、セルティスに持ち上げて貰って鎧に足を引っ掛けてお尻を持ち上げて貰って何とかしがみついて登った。そして馬を引いて貰って乗り馬に慣れる練習をした。2人で並走で馬に乗った時は感動した。バーバラちゃんは知識だけはあったらしくアドバイスをしてくれた。徐々に馬を走らせてパカラパカラってくらいは乗れるようになった。草の匂いや花の匂い空気の匂いを感じて本当に贅沢な時間を持てた。十分堪能したら、アシェリちゃん、バーバラちゃんとも交代して楽しんだ。


「セルティ本当に有難う! 凄く楽しかったわ!」

「どう致しまして、私も久々にゆっくり出来て凄く楽しかったよ」


少し遠出して丘の上から街並みを見ていた。

ここはガーランド公爵家の一つの街並みがよく見える。


「ガーランド公爵領はとても良い領地だね」

「そう? セルティから見てそう思うなら嬉しいな」

「うん、街が整備され治安も統制も教育もバランスがいい。アーシェが考案した消毒液で手洗いを導入してから死亡率も激減した。暗い夜道を照らす魔道具も街の安全を守ってる、領民たちの仕事も沢山ある。そのお溢れに預かりスタッド伯爵領も産業も治安も警備も識字率も一気に最先端だよ。全部アーシェのお陰だ。貰ってばかりで返せるものがなくて心苦しいよ」

「セルティったら、セルティのお陰で私は自由でいられる、こんな社交性もない(オタク)私を可愛がってくれて有難う、大好きよ」

「馬の上じゃなきゃ抱きしめるのに…、チェッ」

「ふふ セルティったら」


ゴロゴロゴロゴロ

空が鳴り出し影を落とし始めた。


「雨になりそうだ、急いで戻って近くの屋敷に帰ろう!」

「そうね」


西にあるガーランド公爵家の屋敷に来ている。屋敷に着いて少しすると雨が降り始め雷が轟音を轟かせ始めた。間一髪ってところで間に合った。アシェリは風呂に入っていたのだが、雷が地響きを鳴らし始めたのですぐに出てきたらしい。

「キャーーーーーーーー! セルにーに! セルにーに!!」

「ここだよ、相変わらず雷が苦手なのだね。ほらおいで、まずは風邪をひくといけないから髪を乾かそう」

セルティスは水魔法で軽く搾りタオルを当てようとすると、アシェリは風魔法ですぐに乾かして、セルティスの胸に飛び込んだ。

胸の中でブルブル震えるアシェリ、それを優しく撫でる。

「大丈夫だよ、大丈夫。温かいものでも飲んで寝て仕舞えば目覚めた時はきっと気持ちのいい朝になっているよ ちゅ だから大丈夫 ちゅ」

「1人で眠るのは嫌よ、セルにーに傍にいて?」

「あーー、うん なら少しの間そうしててあげるから、ね? 早く寝るんだよ」

「イヤイヤ 夜中に目覚めて1人ぼっちだと余計に恐ろしくなるの! お願い、今日は朝まで一緒にいて! ね? いいでしょう?お願い!!」


「…う…ん、分かった」

ゴロゴロピカーーーーー! ズガガガガガーーーン!

「キャーーーーーーーー!! ふぇーーん、にーに にーにぃぃぃ」

「よしよし、おいで。ほら、ベッドに入ろう」


ベッドの中のアシェリはセルティスの胸にしがみついている。セルティスはアシェリが怖がらないように優しく抱きしめているが、雷が鳴るたびに体勢が変わる。アシェリはピッタリくっついたり上に乗ったり、そうすると自然とセルティスの腰は引けてくる。そうすると逃がさないと言うかのようにアシェリは足を使ってへばりついてくる。もう雷どころじゃない。

「キャーーーーーーーー!」

「うぐっ」

「にーにも本当は怖い? 凄くドキドキしてる」

「あー、これは雷にじゃなくてアシェリにね。こんなに薄着でピッタリくっつかれると…その ドキドキして…マズイ」

「どう言う事? 何がマズイの? あっ! 苦しかった? ごめんね…」

しょぼんとするアシェリに

「違うよ、私は健全な男な訳で…大好きな人とベッドの上で抱き合っていると、その…アシェリを抱きたくなる訳で…、怖がっているアシェリに実は別のことを考えて必死で煩悩を振り払っているんだけど、体は正直で…!! やっぱりごめん、別の部屋で寝るよ」

ベッドを出て行こうとするセルティスにまた足を使って全身で抱きついた。


「行っちゃやだ」

「…なら 少し私が冷静になれるまで1人にさせて? ね?」

「どうして? 何で冷静になる必要があるの?」

「あ゛―あ゛―、だから私とアシェリは夫婦な訳で、欲望を抑えるストッパーがなくなっちゃうと、キスしたりもっとそれ以上のことしちゃって泣かせちゃうかもしれないから、今はごめん…離れて」

「何でそれで離れなくちゃいけないの?」

「えっ? いや、だから…」

アシェリに覆いかぶさってくちびるを合わせた。

ゆっくりゆっくり深いキスを重ねた。


「マズイな…これ以上は 一線を超えちゃうよ?」

「だって夫婦だし」

「イヤイヤイヤ だって…意味分かってる?」

「うん、お母様が わたくし…アーシェがいいと思えば好きにしていいって仰ったわ。子供はまだ難しいけど、普通の夫婦生活はしてもいいって、したいと思ってるわ! セルティが逃げ出さないように捕まえておかなくちゃ!」

「ぷはっ! こっちのセリフだよ! 本当にいいの? 私は健全な男だよ? 優しく抱きしめてるだけなんて出来ないよ?」

首を伸ばしてセルティスの唇を奪った。

「あら、アーシェはセルティに恋する乙女よ!」

「あはは ヤバイ グッと来た。ちゅう もう止められないけどいいの?」

そっとセルティスの首に手を回す。

「だってもう離したくないんだもん!」

「だから  私のセリフなんだって… ぷっ、有難うアーシェ」

想いを込めた熱い口づけを交わす。

アシェリの何もかもが愛しい、額にも耳にも首筋にも瞼にも鼻にも鎖骨にも腕にも指にもキスを贈る 愛しさが溢れる。胸元にあるセルティスの頭、それをそっと腕で抱え頭にアシェリもキスを贈る。


「…くっ、アーシェごめん、これでも必死に我慢してるから…許して?」

「ごめんね、でもギュッとして? 素肌を感じたいの」

「ぐっ、ふーーふーー、静まれぇ〜、落ち着け〜俺!」

「ちゅう 大好き、大好き アーシェと出会ってくれて有難う ちゅう」

「愛してるよアーシェ、私こそアーシェがいたから生きて来られた、私を愛してくれて有難う。凄く好き、大好き アーシェがいればどこででも生きていける、いなければ生きていけない、側にいさせてね ちゅう 愛してるよ、世界中の誰よりも大切で愛しくて私に必要な人だ。ずっと愛すると誓うよ」


セルティスとアシェリは互いを必要と求め合い初めて体を合わせた。

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